第一話
「はい?」
「父上何を・・・」
「さっさと荷物をまとめこの家から出て行けといったのだ」
「これ以上この家の評判を汚すようなことをするお前をうちに置いておくことはできん」
「僕が強く無いからですか?」
「弱いことはそれほどの罪なのですか?」
「これは既に決まったことだ受け入れろ」
「ダグラス家は代々武力によって繁栄してきた。故に弱きものを認めないのだ」
「ベン」
「私はお前をいなかったものだと思うようにした」
「お前も私をいなかったものだと思いなさい」
15歳になった夜ダグラス家の三男であるベン・ダグラスは当主であるトーマス・ダグラスから家から出ていくようにと今まで育ってきた場所からの追放を伝えられた。
ベンは、今の自身の状況を受け入れることができないまま自分の家へとへと戻っていく。
ベンの母親は平民であり、トーマスが一夜の遊びの際にできたのがベンであった。
そのためにダグラス家で暮らすことはなく街中にある借家に住んでいた。部屋の中には、簡素な机にベット、ダンスなどといった生活に必要な最低限のものがおいてある。
机の上には学園の教材や自分の写真、それから睡眠薬が置いてあった。
”自殺、死ぬということがこれほどにも怖いことだったとは・・・”
実の父親から告げられた現実について行けなくなってしまったベンは睡眠薬を手のひらいっぱいに掴み込んだ。いまだに死ぬということを受け入れられず、その手は震えて睡眠薬がいくつかこぼれ落ちている。
”死のう・・・”
ベンは掴んだ睡眠薬をすべて口に放り込み飲み込んだ。
意識が薄れていく中でベンは今までのことを思い出していった。
兄弟たちやダグラス家に関わっていたもの全てがベンに対し、穀潰しやダグラス家の恥といい学園のものたちはまだいるのか、学園のレベルが下がるなどと馬鹿にしていた。
”ふざけるな!!!”
「お前たちに僕の何がわかるんだ」
最後の力を振り絞りそう一言呟くのだった。
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首を切り落とされたグリードは気がつくと何も無い不思議な空間に立っていた。
目の前には黒いモヤが二つなにかを話している。
「ーーーーーーーー」
「ーーーーーーーーーー」
ただただその二つのモヤの会話を聞くことしかできない。
「なんだここは」
「俺はさっき死んだはず、ここは死者の世界か?」
終わると思っていた自分の人生に続きがあるとは思ってもいなく茫然としてしまう。
「契約通り、あの者たちは全員殺したぞ」
「どいつも悔しそうだったな、救ったものに殺される気分はどうだったのか」
「それはいいとして契約通りに代償をもらうが準備はできてるか?」
「ああ」
「いつでもいい」
突然、今まで聞こえていた声を聞くことができた。
その内容は何者かがグリードたち7人の英雄を殺したというものだった。いや、そうなるように人々を動かしたのか。
それを聞くとグリードは怒りのあまり叫び始めた。
「誰だ!!!」
「お前たちか俺たちを死ぬように皆を操ったのは!」
「なんでこんなことをした、俺たちが何をしたのかわかっているだろう」
いくら叫ぼうがその声はモヤには届かない。
「・・・わかったぜ」
「俺はこんなことをしたお前たちを、そして真実を知るまで絶対に死なない」
「お前たちを殺すとができるのあればこんなところいくらでもいてやるよ!!」
”死のう・・・”
”死ねば楽になれるんだ”
「誰だ!!」
「俺の中に入ってきたのは!?」
”すべて弱い僕が悪いんだ・・・”
”強き者が弱き者を淘汰するのは自然の摂理なんだ・・・”
「お前はいったい」
そう呟くとグリードの前に横たわった青年が現れた。
「お前なのか?」
”誰?”
”もう一度生まれ変わることができるのあれば、今よりも強く誰にも負けない力を!!”
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「・・・・・・」
目が覚めると知らない場所にいた。
だが不思議と理解できる。ここはさっきの青年の部屋だということを。
鏡で姿を確認するとやはり先ほど見た青年のからだが写っていた。
「ベン・ダグラス・・・」
”この世界でもっとも弱きもの”
”俺の名前はグリード・ラ・アマイモン”
”この世界を救った7人の英雄であり・・・だったか”
ふっと笑いながらグリードは窓の場所まで移動する。
”お前からはこの身体をもらった”
”俺からはお前の望んだ誰にも負けない力を与えよう”
「誰だか分からなかったが、絶対に見つけ出してやる」
「待っていろそう遠く無いうちに、お前たちを殺しにいってやる」
「その日を楽しみにしていろ!!」