2話 まさかの再開/完成した秘密兵器
すいませんでした!
結構遅れました。
色々コロナとかで生活バランスが崩壊しまくりでした!
それではどうぞ!
彼、涅黎 真来の朝は早い。
ベットからむくりと起き上がると、まずはスマホの着信履歴を漁り情報収集。
それを一通り目を通した後はリビングに直行することとなる。だが、その足取りは若干重めだ。
その途中でまだまだ眠たげな積流とも一緒にやって来る。前回説明していなかった積流の事だが…
髪は親譲りで兄と違う点と言ったら兄より短くサッパリとしている所。そして弟君は赤一色だという所。身長は12歳にして若干小さめ、そして目付きは兄同様だ。
ぶっちゃけ言えば愛らしい弟なのである。
「今、侮辱された気がしました」
「気のせいだろ…」
「何処の誰だか存じませんが、処しますよ?」
おぉ!怖い怖いっ!
おっと…オホン!
そして既に先客はいた。
その先客を確認したと同時に2人の目付きは急に冷めたものとなってしまった。それはそれは、もう心底軽蔑しきった目で――
「ホラァ!ホラホラホラッ!このマゾメガネェェェ!今日も汚ねぇ~喘ぎ声上げて私を楽しませろっ!オラ!」
「グゥ!!ウゥゥゥ~~~~ッン!?何をしているッ!?もっと…もっと僕を悦ばせておくれマイハニーーー!」
「そ・こ・はぁ~?女王様じゃボケェ!?」
「―オファ!?じょ…女王サマァ!」
朝っぱらから展開される親達のSMプレイを大音量で見てしまったのだから…
朝にも関わらず鞭を携え夫を飽きずに頬を緩ませ切っている折角の良い顔が台無しになっている、ロングで紫髪の妙齢のドエス過ぎる美女は彼ら真来達の母である。
そして表では有名処のベンチャー企業の課長でありもっぱらエリートで黙っていればメガネが煌めくイケメンエリート課長。だが、一度家に帰れば妻にご褒美と言う名のお仕置きを熱望するクソマゾのエリートは真来達の父である。
「アラ?真来、積流起きたのね。おはよう、今日は“メチャデビル”の肉を“地獄煉獄”辺りの熱量で焼いたこんがりステーキよ!」
聞きなれないワードを連発しながら自慢気に机の上に置いたのは、一見すれば只の“炭”だった。
(今日もか…)
(お母さん。何で料理の腕だけは上がらないんだろう?食材のチョイスから調理方法まで、ワンパターン過ぎる)
そう、この母…料理が壊滅的に下手くそ!
結婚当初…果ては今現在も進歩する処か退化の一途を辿っている程だ。その下手さ、正に悪魔級!
焼くことすら儘ならない。
なので彼らはいつもいつも外食か、自分達で作っているか…冷凍食品で済ませている事が殆どだ。
だから今回も―――
「「父さん、今日も処理よろしこっ!」」
「―――クッ!?息子達から劇物を…クゥゥゥ~~~!?やっぱぁギモ”チ“ィィイ!!!」
いつもの様に狂喜しながら気持ち悪い顔をして喜んで食べてくれた。こんか魔界料理の処理も喜んで引き受けてくれる優しいお父さんで良かったよ。そうしてる内に真来達は買い貯めていた冷凍食品をサッと冷凍庫から取り出しすぐさま調理に掛かった。
「今日はハンバーグにするか積流?」
「んぅ~~~?昨日も朝はハンバーグだから、目玉焼きをトッピングしてくれない。あのもうすぐ賞味期限切れそうなやつ」
「オッケー。そっちは簡単にサラダでも作っちゃって♪勿論、俺のはプチトマト増し増しで…」
「オーケー、ご飯はっと…うん、余ってる。今日も二人分は辛うじて残ってるよ」
これが彼らの朝の風景だ。父親はパンイチで体中傷だらけな上に亀甲縛り掛けられたまま激マズ料理をキモイ奇声をあげながらカー〇ーの如く平らげているし。母親はと言うと…際どい格好のままリビングに置いてあるソファーに酒瓶と共に腰掛けて昨日あった特番を見て呑んだくれている。
それを端目に2人の兄弟は幼少から自然身に付けた料理の技術を駆使して馴れた手付きで朝食を作っている。
「さっ…今日はちょっと遅めに起きちゃったからな。チャチャっと食って洗って学校行くぞ」
「うん。じゃあせーのっ!」
「「頂きまーすれ」」
*
彼、涅黎 真来の今の心境は憂鬱だ。
高校への道をため息を吐きながら重い足取りで歩いている。その姿は正しく苦労人だ。
(もうウチの親の奇行には馴れた。父さんは亀甲縛り掛けられたまま上からスーツを何の恥じらいも無く着るんだよなぁ~聞きたくなかったけど、父さん曰く『メチャ興奮するぞぉ♪大事な商談だったり会議や、身を引き締めなければならない有事には何時もより縛りを“きつめ”にして貰っているんだぁ!これが絶頂するの何の―――』以下略。母さんも母さんで毎回思うが、なんで人間と結婚たんだろ?相性云々は別として…謎だ?)
まぁそんな事を考えても仕方ない。そう自分に言い聞かせて別の問題について頭を巡らせていた。
彼の友人もといマブダチの心境の変化についてだ。だが、別にそのマブダチ自身に大城な変化はない。大きく変わった所と言えば、彼の友好関係が劇的に変わった。………ぶっちゃけ女だ。
(あの時はアレしか方法ないと思って無理矢理やってはみたが…まさか、委員長があれから前に出てくるようになるなんてな)
しかもそれだけでは無かった。これは真来でも予想は出来なかったことだ。
“転校生”
夢と妄想が膨らむワードだ。この学校生活で度々起こるレアイベントと言っても過言ではない。ラブコメ等では主人公のヒロイン枠とかが大体やって来るのが紀元前からのお約束だ。
そう。ここまで言えば分かる筈だ。先に、真来はこの事を予想は出来なかったと言ったが、心の底では嫌な予感だけは胸の内で悶々と膨らませていたのだ。だが、それは信憑性のないただの予感。本人もまさかぁ~と切り捨てていた低い低い可能性だったのだが―――
(甘かった。甘すぎた…てか、こんなの神の仕業だろっ!それしかあり得んだろ!)
正解~~~♪
そう。あの事件から数日もしない内に彼女はやって来てしまったのだ。
何処か上空で誰か笑顔で彼にピースを送っているようだが、彼は気付かない。少しイライラして毒づきながら歩みを進めていると見つけてしまった。そして、会ってしまっのだ。
「あ、あのぉ~二人共…」
「ん。な、なんだ悠太?」
「何ですかぁ?式沢君、いや…悠太……君?」
「ちょっと、近…すぎませんか?コレ、どう考えても男女の距離感ではないと…思いますが?」
「ふっ…天界ではコレ位のスキンシップは当たり前だ!」
「ここは人間界ですけど…」
「関係ないっ!これでいいのだ!口応えは認めないわ!」
「不服ですけど、私もコレは譲れません!」
「あ、あぁ…当たってますからぁ////」
ナニがとは言わん。
目の前には両手に花状態の悠太がいた。
彼は過剰な接触で顔を赤くさせてドギマギしているが真来目線から見ると満更でもなさそうに見えてイラっと来ている。
悠太と連羅の距離が近付くような事をした要因は真来にある。それは理解している。ルナも必要以上に悠太の事を意識してしまったのは真来がちょっかいをかけたせいもある。
だが、ああもイチャ付かれると目に毒ってもんさ。同じ通学路通ってる同級生からジロジロ見られている事に気が付いているのか?
男子から憎しみの籠った視線と舌打ちのオンパレード。
女子から黄色い奇声のオーケストラ。
彼にとっては雑音だ。
そして、その渦中の中に居る悠太達には聞こえてすらもいない程だ。
「涅黎ぃ~助けてぇ~~!?」
「ホラ、早くしないと遅刻するわよ」
「じゃあ、行こっか♪」
補足しよう。
天津 連羅はあの後、悠太に家まて送って貰った挙げ句に彼女の保護者達の計らいで悠太が連羅の看病をする事になってしまったのだ。そこから悠太は顔を真っ赤にしながらぎこちない動きで看病してはいたんだが、未だに意識が朦朧としていた連羅は目の前に悠太が居るとは気付かずに色々と恥ずかしい自分語りをしてしまった。
そして正気と意識を取り戻した翌日に、連羅は恥ずかしさで死にそうになった。それを悠太が必死に止めようとしたが、昨日ことでお互いがお互いを意識してしまった。そのお陰で彼女は死ぬことはしなかったが、何故か勝手に吹っ切れて距離を日に日に縮め始めている。
ルナの方はと言うと――
『やっぱ、そっちはお仕事か?』
『………貴方に隠しても無駄ね。えぇそうよ。と言っても彼の“監視”だけよ。危害を加えるつもりはないわ』
『お前はだけどな?』
『―――っ!?』
真来の冷たい眼光と言葉に一瞬だけ気圧されてしまったルナだが立て直してまた真来を見た。
これは、彼女が転校して初日の放課後の時のことだ。真来が話しがあると言ってルナを校舎裏に誘ってから始まったのだ。
『えぇ、えぇそうよっ!上の指示なのだから、従うわよ。だけどね、彼は傷付けさせないわ。一応、あの危機的状況から私達を助けてくれた命の恩人ですもの』
(作戦考えたの…俺だって事、忘れてね?)
そんな言葉を呑み込む真来。
そして真来は彼女の瞳と《感情視》で今の彼女に蠢く感情を読み取っていく。彼はフッと苦笑いを浮かべながら話しを続けた。
『“恋”………“愛”………“純愛”………ククッ、マジでピンクばっかジャンw…邪念なし。ピンク一色とか、久しぶりに見たわっ!ハハッ!その言葉、今は信じてやるよ…精々足掻きな!』
彼は軽く笑いながら校舎裏を後にした。
(ウゲェェェェェェェェェェ!?オェェェェェェェェ!!?グェェェェェェェ!!??オボロシャァァァァァ!!??………クソッ!一面ピンクとか、めっさキモイ!キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ目に毒ぅぅぅぅ!)
彼に精神的ダメージが入った。
その後は監視をするには近くにいた方がいいだとか、コレ位は天界でも普通にやっているスキンシップだのなんだとか言って悠太との距離を急速に縮めている。
これから悠太は男子達の嫉妬にまみれた視線と女子達からの黄色い奇声と熱烈なアプローチの数々を受け、悠太の意志に反して目立つ事間違いなしだろう。
それに真来も巻き込まれないように努めるだけだった。
*
涅黎 真来は深夜。とある店に訪ねていた。
そこは見た目は割とボロボロで築50年以上はしてるんじゃないかと思われる程の骨董屋だった。
真来は怯えることなく当たり前のようにその店に出向き扉を開けた。そこは様々な品、見たことあったりまるで見たことなかったりと千差万別の品々が乱雑に置かれていた。まぁ不衛生。そしてカウンターに人影が見えた。
「おっ!骨董屋のダンナァ~こんちわぁ」
「やっと来たか。例のモンと注文の品は届いた。さっさと帰りな」
そう言って真来を邪険に扱う男が居た。左目に深く痛々しい切り傷を残し、深緑の髪をオールバックにセットしている。口元にはタバコをふかして真来を睨んでいた。見た目からして40から50代の初老の男性だ。
「イヤまぁそうするつもりだけど…説明も聞かずにコレ使う程、命知らずじゃないんでね♪」
カウンターに置かれた2つの物の内の、風呂敷に巻かれていたモノを指差す真来。
「『これからの呪具所持者との戦闘用に何かスゲーアイテムを作ってくれ!』…だったか?苦労したよ。まぁこれからの事を考えると一筋縄じゃ行かなくなるし、この件を唯一任せられるお前にもいずれ限界が来るしな。と言っても、呪具に対抗出来るアイテムなんて早々ないからさ…」
「「毒を以て毒を制す」」
二人は口を口を揃えて呟いた。
『悪を滅ぼす為ならば他の悪を利用して滅する』
そう言う意味合いのことわざだ。
だから彼は作ったのだ。
元は呪具だったモノから対呪具用の秘密兵器を―――
「まぁ精々上手く使え、それとお前が注文した裏ルートで流れてきた【スキャングラス】だが…それの登録もし終えたからもう使えるぞ」
「何から何までサンキュ~~~!」
「呪具の気配を察知次第、連絡する。それまではお前が渡してくれたこの呪具。名前は…そうだなぁ~【視極水晶:モノアイ】の“浄化”作業に入るとするか」
「―――ジャッ!こっちも用事があるんで帰りまぁ~~~す♪アデュー!」
目当ての物をやっと手に入れた秘密兵器を手に持ち気分を良くした真来は軽い足取りで骨董屋を後にした。
(さぁて、今夜決行の作戦で使っちゃいますかぁ~~~グヘヘヘヘヘヘッ!!)
「………さてはアイツ、悪用するなぁ?まぁ俺には関係ないか…例のシステムがアイツを適正者か否かを見定めるし。…アイツなら大丈夫だと思うけどなぁ~」
そう1人でポツポツと呟きながら彼はタバコをまたふかして虚空を見つめていた。
「呪具は…全て浄化してやる!」
次回は遂に作戦決行!
新キャラどんどん登場の巻!
そしてそして遂に変身か?