2話 混血達の邂逅 Ⅱ ~魅了せし蠱惑的な少年~
まぁ週一ペースで投稿致します。
では、第2話をどうぞ!
(なんなのだぁぁぁぁぁ!この私の心を揺さぶりまくって離さないこの“感情”はぁぁぁぁぁ!)
小刻みに肩とその自己主張が激しい胸を震えさせながら彼女、ルナは悶えていた。もう、それは滑稽な程に…
流石の隣で心配して声を掛け続けた根気強い彼も、もうどう対応したらいいか分からないって顔をしている。だって、何度も何度も声を掛けても答えないしあまつさえ反応すらしないのだ。新手の悪戯か?流石に彼にかかるストレスは…正に悪質クレーマーの対応をさせられる新人ちゃんに与えられるストレスと同等だろう。多分…
「あのぉー石化の真似とかもういいですから。あまり初対面の人にそんなイタズラやんないで下さいね」
「―――っあ!?あぁ、すまない。あの………少し、考え事をだな。していて…私ってば、ついつい一つの事にのめり込んでしまう癖があってな!その、直せてないんだ。すまなかった…」
「そ、そうでしたか。なんか目を見てみると心ここに在らずって感じでしたよ」
「アハハッ…本当にすまなかった…」
ルナは無理矢理頬の端を吊り上げてなんとか苦笑したかの様な表情を作って答える事が出来た。だが、内心では焦りまくり…
(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイッ!!どうすればいいっ!?アイツ確か自分で悪魔の血が混じってるって暴露したな。それを【スキャングラス】で詳細を解析してからその後いろいろと話を聞かなければっ!そう、それでいこうっ!)
そう『紳士的に即決!即断!!即実行っ!!!』これもお父様のお言葉でした。ならば、もう心の中でコイツを調べると思ったならば…もう行動は既に終えているんだぁぁぁ!(【スキャングラス】は仕事が早くて優秀なんだ。いいんじゃない?一家に一個どうっすか?)
そんな事を思った直後に彼のスキャンは密かに終わっていた。私は彼にバレないように話を聞く素振りをして結果を見た。
《対象のスキャン完了。対象に悪魔の血を検知、体内に確認出来た〈魔力〉量およそ5400》
(えっ?普通の《小悪魔》達よりは魔力量が多いっ!それに…魔力量も2000越えなら“彼”も今私が行かなければならない廃品置き場にいる悪魔と同等なのでは…)
《対象の〈総力〉スキャン完了。
〈戦闘力〉100
〈精神力〉500
〈魔力〉5400
統合しおよそ〈総力〉6000と断定。脅威判定“C”に設定。対象の戦闘能力皆無。敵対心皆無。対象のルナ=イクフィリアへの評価…“変質者”―――》
(イ、マ、の、はっ!要らないでしょうがっ!)
【スキャングラス】のいらない説明に私は悪態を付いたが、多分…彼が私の事を“変”と思っているのは事実なんだろう。(認めたくはないけど)
(そうだっ!まだ私は名をっ!?)
「あっ、自己紹介が遅れていたな。私の名はルナ=イクフィリアだ。人と天使の混血で、今は天使兵団見習いをやっている。曲がりなりにも天使兵団だが、だからと言って君の様な人に対して無害な悪魔を無闇やたらと襲いはしないから安心して欲しい」
「そうですか…?ありがとうございますっ!ルナさん。あっ、僕の名前は式沢 悠太って言います。悠太で構いません」
(そ、そうか…悠太と言うのか…悠太、悠太………悠太。フフッ♪顔と名前は覚えたぞ!)
彼女は1人心の中でブツブツと悠太の名を言っている。もし彼女の心の声が聞こえたならば、この行為にちょっと引くだろう。いや、引かない奴の精神が可笑しいっ!まぁ彼女自身『何故こんな事をしているのだろう』とか。『こんな事しても私には何の得もないのに』とか。全くそんな事微塵も思わず行ってしまっているのです。若干頬を染めているのは内緒…
「そ、その…悠太は何故こんな―――」
その刹那。彼女は肌で感じた。頭上から来るとてつもない威圧感に。即座に上を見上げると…
上弦の半月の光をバックに蝙蝠のような翼を広げ、するりと伸びているしっぽ、右サイドに見えるねじれたツノを覗かせている。そして口先から歪んだ怖い笑顔を彼女達に見せる正しく悪魔のような男が今、闇より黒く染まっている大きな爪を携えた右腕を振り下ろさんとしていた。
「ラブコメ警察だぁぁぁぁぁぁ!(笑)」
などと意味の分からない供述を述べており…
「―――って!?えぇぇぇぇぇぇ?」
いきなりの奇襲に彼女も思わず気が動転したが、相手を視認したならば後は避けるだけ。天使の翼を展開し即座に前方に風を起こして後方へと素早くバックした。その直後に衝撃が地面に走った。突如奇襲を仕掛けてきた男の大きな拳の一撃が辺りに響き渡っている。煙がたっており攻撃してきた奴の顔が見えない。
「あぁ~~~奇襲は失敗かぁ~~~メンドーな野郎を潰せる筈だったのにぃ。まっ、いっか♪ヒーロー気取りの小娘なんて何時でも苦しめられる。あぁゾクゾクするぅ!早く…早早く早く早く早くく早く早くっ!その澄まし顔、苦痛に歪む姿と悲鳴を聞かせてくれないかなぁ?」
ようやく煙が晴れ姿を拝めるようになった。そして彼女らを襲った図太い精神の野郎の面は、髪は短髪で深い紫だが所々に赤が混じっており、右目は深紅で左目は紫のオッドアイ。身長はまぁまぁ高い方だった。てか、顔はもうもっぱらヤクザよヤクザ。そして紫と赤のチェック柄のジャケットを羽織っていた。怖い、笑顔がもう怖いっ!トラウマになるよ!
「…随分とふざけたヤツね。この私をどうするって?よく聞こえなかったんですケド?」
「イヤァ~~~♪ホント、コレたまたまだから!ホントに偶然アンタの“恋する乙女”の顔見ちゃったからさぁ~~~♪『これもう壊そ』って思っちまった訳なんだよぉ~」
「―――ハッ!?ハァァァァァァ!?」
「もうっ俺ちゃんったらぁ~こんな甘酸っぱウィー初恋み・た・い・な?ソレ的なぁ!シチュ見るとぉ~ドゥ~~~~シテェモォ…ぶち壊したくなるんだよねぇ!」
そんな軽口を叩く紫髪の男の表情はどこか愉快そうだった。そう、彼は悠太に視線を向けながらルナの方をじっくりと観察するかのように見て、その後何かを悟ったかのようにニタニタと顔を歪ませていた。
(き、気持ち悪いっ!おい【スキャングラス】っ!奴の〈総力〉は?あの男は廃品置き場に井田奴と同じ反応か?もしそうだったらブチのめす!)
「ま、手前のその俺に対する“不快感”でも十分に俺ちゃんの腹の足しになるんだがねぇ」
『人の不幸は蜜の味だなんて、コレ考えた奴とは気が合いそうだなぁ』紫髪の男はそんな独り言を呟きながら尚も拳を構えて臨戦態勢を取っている。相手の出方を見ているのか?それとも…
《対象の〈総力〉スキャン完了。
〈戦闘力〉5300
〈精神力〉10200
〈魔力〉4500
総合しおよそ〈総力〉20000と断定。廃品置き場に居た悪魔の魔力反応と99.65%合致。間違いありません》
(ありがと…やっぱ頼りになるわ。でも…〈総力〉20000か。かなり厄介だけど、彼の力の半分は〈精神力〉によるモノが大きい。心理戦、精神攻撃面に強く出られると言っても、私ならばこの戦力差をひっくり返せる!)
チェック柄のジャケットに付いた埃を払いながらルナにガン飛ばしている紫髪の男。ふざけ半分なのか…それとも本気で殺り合うつもりなのか…それすらもいまいち分からない。
そして、彼が動いた。
「ねぇまたここで騒ぎ起こすのやめてよね?涅黎!」
「よぉう悠太っち!まぁた深夜にラーメンか?それもいいが学生なんだし夜道には変な奴らがウジャウジャ居るから気を付けろって言った筈なんだがなぁ~~~?」
悠太と“涅黎”と呼ばれた男はまるで親友の様な態度で、下校中の男子校生のテンションで話していた。そして涅黎はチラリと、そして露骨にルナの方に視線を移して…フッとほくそ笑んだ。
「今、私の事を見て笑いましたね?どういう意味ですか?ねぇ!アンタ?」
「失礼なヤツッ!!俺は“アンタ”って名前じゃねぇ、涅黎 真来だ。人の名前も覚えられないだなんてぇ~」
「さっさと答えなさい。涅黎?」
「えぇ?呼び捨てぇ~~~?初対面で呼び捨てとかシッツレェェイィィィ!ありゃ?いつの間にか脱線してらっしゃるねぇ。えーと?あぁ純粋ベイビーちゃんを笑ったワケか?イヤだって、俺は悠太に注意しただけだよ?『学生なんだし夜道には変な奴らがウジャウジャ居るから気を付けろ』ってさぁ。だからだよ。純粋乙女チックボインちゃん♪」
「あぁ!?やっぱり侮辱?侮辱だったのね。しかも…私を貴方の変人カテゴリーに入れたってワケ?ハハッ………ぶっ殺すっ!」
「ヒュゥ~♪もしや、俺ピンチ?地雷元踏み抜いた!相手ぇ~“俺絶対殺すウーマン”になっちゃう系?うっわ!こえぇぇぇ(笑)」
涙を流す程の爆笑をしながらルナをからかう真来。コレは彼の戦法以前に悪魔の常套句。悪魔は人の負の感情を糧に生きている種族。時に人間に命を代価に力を貸す者も居たり、契約し使役したりされたりの関係を築く者も居たりと千差万別。
こうやって私を不快な思いにさせているのはヤツの悪魔の本能がさせている事。それを赤の他人がどうこう言って治まるワケがない。
「時にお嬢ちゃん。忠告しとくが、あの男だけはダメだ。止めときな?」
「―――ッ!?」(しまった!いつの間にッ!?)
一瞬の隙を付かれて彼の接近を許してしまった。そして瞳を怪しく輝かせながら睨んでいる。元々の戦闘の素養ありきで為せる技なのか、そんな事はどうでもいい。問題は…
「な、何をた「企まねぇよ。俺の中にある“人間的良心”ってヤツに乗っ取りイイコトを教えてやるだけだ」………はぁ?」
(何が“人間的良心”…だと?悪魔風情が語るなっ!私をおちょくってるに違いない。ぶっ殺す…)
「いやいやいや。信じて貰えないかもだけど俺っちもお前らと同じで混血。半人半魔の半端モンだよ。まぁ悪魔の血の方が濃く出てきているからそれがどーしたってんだって思ってるよな?」
その通りだ。例え私達と同じく混血であろうとなかろうとコイツの根底は“悪魔”そのものだ。性根は腐り切っているに違いない。他の奴らと同じく人を貶め蔑み憐れんで愉悦に浸っている下衆。目的を達成する為ならどんな手を使っても成し遂げようする意地汚さ。それら悪魔の所業全ての理由により、我々天使は奴らを軽蔑する。
私もそうだ…そうなのに…悠太―――
「悠太の魔力に当てられてやがる癖に…」
(は?)
私は口をポッカリと空けて唖然とした。半人でも曲がりなりにも半天使の私が、あろうことか悪魔の魔力にやられていた?
それは天使のプライドが傷付く由々しき事態だ。だが、同時に悠太の顔を見てその怒りも次第に失せた。
「ごめんね。僕のせいで…僕が《誘惑》を上手く制御出来ないばかりに」
悠太は口元を歯で噛みしめ悔しんでいた。こぶしを強く握り自身の情けなさを嘆いているようであった。そして目元に一筋の涙をポツリと流して…
「おい、クソアマ半天。この際だから悠太の…オレのマブダチの事を教えやっから、二度とその面見せんな!」
そして涅黎は、私の事をクソダサいあだ名のオンパレードでふざけ半分呼びながら、目付きを鋭くさせ私に語り聞かせた。
式沢 悠太の苦悩を…
*
「ある少年の話をしよう。その少年はとても内気でどちらかと言うと一人でいる事を好み、目立つ事をなるべく避ける様な立ち回りをする性格だった。彼自身、一人の方が気楽だし目立つ事は性に合わないと豪語している程でしたねぇ。でもな、そんな男の一生を狂わせ苦しめてきたのは彼に流れる悪魔の血だった。ソイツの母親は悪魔達の総本山“魔界”でも名を馳せた超極悪非道な悪魔達の内の一人。人々並びに天使を含めた他種族そして…同族の悪魔達でさえ恐れられ畏敬の念を抱かせる恐るべき七人の悪魔。そんなのが、どー言う経緯か知らないが人と交わり子を成した」
それが、式沢 悠太だ。
そう言って真来は悠太を指さしてルナに言った。さっきまでの話を聞いていたルナだが、どういう表情をすればいいのか迷い困惑しうろたえるばかりだった。
それでも真来は気にすることなく話を続ける。
「それから母親はコイツを産んだら二、三年で行方不明だったか?詳しくは分からないがまぁコイツの残り人生はろくに母親の顔も知らずに男手一つで育ったってワケだ。悪魔の血はそんなに濃くないものの自分が他の人とはちょっとだけ違う事に少し恐怖心と疎外感は感じていた。自分が一体何者なのか…それでいて“自分が人と違うこと”がコイツにとってはショックだった」
「…だってさ。人間ならさ、こうツノとか生えてこないよね?シッポだったり羽だったり…自分の意思で生やしたり戻したり出来ないよね…最悪なのは僕の力さ」
「そうコイツの母親の力を一部受け継いだ《誘惑》は、人の興味を自分に向けさせる」
「人の…興味?」
「ホラ人をすれ違う時、美人だっり有名人だったりすると思わず二度見したくなるじゃん。自然と人目を惹き付けたり、そのすれ違った相手に何気ない興味が湧く事は稀にあると思うけどさぁ~悠太はそれを自分の意図しない内に起こす事が出来てしまう」
それが彼が魔力を制御出来ない為、無意識の内に自動的に広範囲にて影響を及ぼしてしまう。それは他人の意思に関わりなく魔力に当てられた者は否応なく無意識に悠太に視線がいってしまう。
「その他人の視線が………イヤなんだ。人に自分の行動が見られていると思うと、なんと言うか…気持ち悪いんだ。僕の事をなんの理由もなく見つめてくるあの目…僕、人一倍視線に敏感らしくてさそのせいで人と関わるのが…少し…怖くてね。もう人通りが多い商店街やショッピングモールや近くのスーパーでさえも意味なく僕を見つめる人が出てきちゃう。仕舞いにはっ!なんの関わりもないクセに僕に近づこうとする人さえ居たよ。そんな人と関わるのが怖いチキンだからさ、今はここのラーメン屋に入り浸る毎日なんだ。店主の親父さんが、優しくてね…」
「夜中じゃあのラーメン屋は悠太の馴染みの客しか来ねぇよ。アイツ…親と俺とラーメン屋の店主と常連さんと数人位しかマトモに相手しないからよぉ…まっ根本的にはお人好しだったりするから、お前みたいな奴にも心配掛けて声をついついかけちまうだよなぁ~」
「………」
(誰がっお前みたいな奴だってぇ!?偉そうにしやがってぇぇぇぇ!………なんて、とてもじゃないけど言える気分じゃないわね)
悠太の気持ちを聞いてしまったルナは、何も言えなくなっていた。言われてみれば、自分が何故彼を無性に気に掛けているのか分からなくなっていたからだ。そう…そうだ。
自分は…やられたんだ。
「ハハッ情けないな。天使なのに…」
思わず愚痴を溢してしまった。悪魔の魔力に当てられていた事に対してではなく彼を知らず知らずの内に不快な思いを抱かせてしまった事についての自嘲だと、自分でも知らないうちに溢していたのだ。そうであれば彼女は…自分が今、何を為すべきか心に決めた。
「ならば、私がなんとかしてみせよう!」
「………はぁ?」
「えっ?ルナさん。なんとかって…」
「無論だ。私の“力”ならば悠太、お前の《誘惑》の効果を打ち消せるかもしれない」
ルナには2つの能力を保有している。1つは自身の力〈聖力〉等を武器などに籠めてる事が可能になる《付与》。そして自らの意思で対象を吹き飛ばす程の猛風を巻き起こす事ができる《神風》。
そして《神風》には“邪”なるモノの力を払う力。つまり悪魔等の魔力や悪性を打ち払う事が可能となっている。コレにより、ルナは相手の大抵の魔法攻撃を《神風》を放つだけで相殺する事も、悪魔が使用する精神に影響を及ぼす能力等を直接打ち払った経験がある。
この《神風》は対悪魔戦においては無類の強さを誇り圧倒的に汎用性に優れている万能能力なのだ。
「しばし…十分程度はこの《神風》をその身に受けて《誘惑》が放っているだろう他人の意識を自分に向けさせている不可視の瘴気の様なものを相殺し悠太から取り払う事が出来る筈だ」
「―――エッ!?デジマ?」
「理論上では可能だ。私自身、それで過去にとある小悪党が放った人を深い眠りに誘う煙を吹き飛ばせたからな。でも…能力の根底は消せや「ありがとうルナさんっ!」――へあ?」
彼女が行う方法は一時的な処方。結構な荒療治。雑にも程があるやり方。それは実質的な解決になっていない。だからお礼を言われる筋合いはない筈なのに…
「僕のこの力がなくなれば僕は…僕は自由だぁ!サイコーだぁ!これで誰も僕のことを気にしなくなる!そうすれば、学校のクラスでよく僕に構う女子達は僕の事を構わなくなるっ!たまに僕に答えを聞きに行く子…僕の周りに付きまとう女子グループ達も…たまに僕の為にとか言って弁当持ってきてくれる委員長からも…全部っ!全部ーーーー!解放されるんだぁぁぁぁ!!」
「え?は…はぁ?」
ルナは思わず真来を見た。説明はよ!と催促するかの様な視線で。それにいち早く気付きため息混じりに満面の笑みを浮かべている悠太を尻目に真来はルナの元へさっと寄って行き詳しく補足した。
「アイツな。頭は…さておき見た目も性格もかなりいいからさ、クラスの女子から学年関係無くモテるはモテるんだけどよぉ。それで結構女子に付きまとわれてはいたんだけどなぁ。うむぅーアイツの中では自分の能力のせいで女子達がまとわり付いてくるんだって解釈だからさ~俗に言う朴念仁とか、鈍感糞野郎とか~もうとにかく王道ラブコメ主人公並の自己評価の異常なまでの低さがあるんだわ」
(えっ?ウソ…)
よくもなぁそんな見ていて無性にイラつくラブコメ主人公の特性を持ってるだなんて、奇跡に等しい。まぁそれも彼の能力のせいで拗らせたのもあるみたいだけど…
「実際合切アイツ…それほど悪魔の血は濃くない。『限りなく人間に近い悪魔擬き』って解釈でいい。逆に俺は『限りなく(性格)悪魔に近い人間擬き?』って思って貰えりゃいい。アイツは能力のせいで人の視線に敏感になっちまった。そこにいるだけで理由無く目立ってしまう。ソレがアイツにとって…悠太にとっては苦痛なのにさ、そんな奴が人が多く集まる学校で穏やかに暮らせる筈がないだろ?見た感じ平静を保っていても内心は辛いはずさ。それなのに…今度は容姿のせいで口数のやたらと多い常に集団行動を取る女子達に付きまとわれるなんて…もうアイツにトドメ指してる様なモンだよなぁ」
「因みに、あなた…彼にこの事は?」
「ハァ?言うわけないジャン。こんな愉快な思い違い…見てて楽しいからさぁ」
ハイ性格クズ、悪魔ぁ~~~
モロ悪魔であるが…
「ま、ここいらでぇー悠太に恩を売るのは悪くないんじゃあないですかぁ?」
(くっ!?なんだ?なんなのだっ!さっきから涅黎の悪魔の誘惑的助言はぁ!)
何故か分からないが、涅黎はまるで私の事を見透かしている様な雰囲気を匂わせて私の耳元に小声で提案してくる。それが…不思議なことに、抗えないんだ。この誘いに乗りたい、そう思ってしまう。
理由が分からずモヤモヤとした気持ちを抱きながらルナは、決心したかのように悠太に近づいた。
「それで、やるのやらないの?どっちかハッキリさせてくれないかしら悠太」
(そう…これは悪魔で人助けよ。困っている人がいるなら迷わず救いの手を差しのべずして何が天使よ!そう…そうよ!これは天使としての義務よ!義務義務)
悪魔で、天使としての義務として…悩める子羊を救うと言う理由でやるただの責務。慈善事業と然して変わらないモノ。これは…私の正義に基づいた行動だと、自分に言い聞かせながら胸の内のモヤモヤと奮闘していた。
(…アレ?)
だが、この状況でただ独り。
涅黎 真来だけが、ある気配を他の誰よりも察知していた。それは今回の彼の目的でもあった。
その後、自分の直感が…不幸センサーがビンビンに反応しているのだ。
彼は思わず手を口元に置きにやけるのを我慢する。
(俺の直感…“他人の不幸大好きセンサー”が反応してるってことはもしかして?………ハハッ!もしこの予想が当たっているなら、今回の仕事はアタリだ。さぁ、来いっ!俺は…悠太はここにいるぞぉ!)
次回…予感的中っ!