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 白ちゃんの話では、今日が院長先生復帰の日だ。

 1か月がたった。リュートさんもそろそろ戻ってくるはずだ。

 食事の事業計画や今後のことを相談しようと、院長室で院長先生が来るのを待つ。

 ドタバタと、あまり上品とは言えない足音が聞こえてきたと思うと、ノックもせずにドアが開いた。

「なんてことをしてくれたのっ!」

 鬼のような形相で、院長先生が部屋に入ってきた。

 何てこと?

「あれほど、食べさせてはダメだと……あの子たちのあの姿……いったいどれだけ食べさせたのっ!」

 子供たちの姿をすでに見たのか。

 院長先生は、部屋に入ると、床に座り込んでしまった。

 両手をついてうなだれている。

 そんなにショックだったのだろうか。

「安心してください。一時食べられるだけじゃないです。お金は寄付ではなく、あの子たちが働いて得たものです。これから先も継続してお金を手に入れられる仕組みを作りました」

 院長先生の前に座り、安心させるようにゆっくりと言葉をかける。

「後で詳しく説明します。子供たちだけで自分たちの食費を得ることができます。街では、孤児院出身者の人が協力してくださいますし、今後、まだ収入が増える可能性も」

 院長先生が顔をあげた。

「なんてことを……して……くれたの……」

 ギリギリと喉の奥から絞り出すような怒りのこもった声。

「私たちが、どれだけ苦しみながら……今のこの状況を作り出したと……」

 え?

 この状況を作り出した?

 子供たちが十分に食べられない状況を作り出した?

 ああ、違う。大人になって出て行ったときに困らない教育体制を作ったということだよね。

「大丈夫です。子供たちの勉強する時間を削るようなことはしていません。ちゃんと、勉強する時間を確保したうえで、仕事も」

 力が抜けてうなだれていた院長先生が、突然私の襟首をつかんだ。

 ギリギリと締め上げられていく。どこにそんな力がというほどだ。

「何もあなたはわかっていない……。勇者も聖女も賢者も……何もしてくれないから、あてにならないから、だから、だから私たちが……人々を守るために、必死に、必死に今を作り上げてきたというのに……」

 え?

 勇者や聖女や賢者が何もしてくれない?どういうこと?何を言っているの?

「こんな辛い思い、誰もしたくない。子供たちがかわいそうで、だけれど……この世界のためには……」

 ボロボロと院長先生の目から涙が零れ落ちる。

 ギリギリと閉めていた院長先生の手が離れた。

 ごほっ、げほっ。

 せき込みながら、院長先生に尋ねる。

「げほっ、どういうことですか?院長先生の話からすると、あの子たちは、わざと食べさせてないみたいに聞こえます……どうして」

 お金の問題じゃないの?

 もしお金があったとしても、子供たちに食べさせることはないっていうことなの?


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