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「どうだった?」

「はい。今日中に荷物をまとめて明日の朝には保養地への迎えが行くことにしました。えーっと、それで早速保養地の手配をしなければならないのと、宰相に伝えるので城に戻りますが、僕に何か協力できることはありますか?」

 うーんと、白ちゃんに協力?十分いろいろしてもらってるけど、洗濯に関して協力ねぇ。オムツを縫えそうにも見えないし。

「また、うろうろしてくれる?何か必要があったときに、城へ行かなくてもいいのはありがたいです。あー、でも……」

 何度も捕まえて声をかけているので便利だけど。うろうろされて困ることもあるか。目立つんだよね。

「で、でも、何ですか?」

「目立つんだよねぇ……」

「いや、大丈夫ですよ、目立たないように制服は脱ぎますしっ」

 は?あれ?いや?

「制服って、その服のことだよね?」

 こくこくと頷く白ちゃん。

「それ、脱げば目立たないと思ってる?」

 こくこくこくと頷く白ちゃん。

「……今までも街をうろうろしてて上手に隠れてたとか、人目についてないとか思ってた?」

 こくこくこくこくと頷く白ちゃん。なんか、マスクの下でどや顔してそうでいやだわぁ。

 無自覚イケメンか。はー。

「あのね、白ちゃん目立ってたからね?人の視線感じなかった?」

「それは、ヨリコさんに向けられた視線ですよ。ヨリコさんが魅力的なのでっ」

 はぁ?

 何それ。黒目黒髪が珍しくてちょっと目立ってることは否定しないけど。

「誰もこんなおばさんに魅力なんて感じないって。ねー、ヨリト、ヨリトだけだよね。大好きって言ってくれるの」

 ヨリトが嬉しそうに笑う。

「だーだ」

「うん、私もヨリト大好きだよー!」

「僕だって、大好きですよっ」

 白ちゃんが叫んだ。

 だよね、ヨリトの魅力にもうメロメロだよね。知ってるって。

「ほら、ヨリト、白いお兄ちゃんもヨリトのこと大好きだって」

「いや、そうじゃなくって、あの……」

 白ちゃんがたじろぐ。あ、ごめんごめん。白装束のときの正体は内緒だったね。あのキラキラのお兄さん姿のときに言わないとダメか。

「一緒に戻るとまた注目されちゃうから、白ちゃん先にどうぞ」

「あ、いいですよ、僕はこのまま外周回って、あっちのドアから中に入るとします。お城への近道にもなりますから。っと、秘密の通路ってわけじゃないですよ、あの、普通に、普通の通路ですっ」

 はい。あっちの方に秘密の通路があるんですね。分かりました。忘れます。

「じゃぁ、また明日。院長がいなくなれば白ちゃんが院長室にいるんだよね?準備終わったら行くから。その、孤児院のこと何も知らないのでいつもの1日のスケジュールとか調べてまとめておいてもらえると嬉しい。あと、男女比、何歳の子が何人いるかとか」

「はい。任せてください」

 と、手を振って別れる。

「いろいろ頼んでごめんね、ありがとう」

 白ちゃんが首を横に振る。

「いいえ、お礼を言うのはこちらです。この国の子供たちのことを考えてくださってありがとうございます」

 頭を下げられた。

 ……ううん。頭を下げられるようなことはしてない。私の心のためにしてるだけだもの。

 複雑な気持ちでドアをくぐる。

 兵たちが私の顔を見たとたんに話しかけてきた。

「あれから、二人で話会ったんです……何をしようとしているのか分かりませんが、僕たちにも協力させてください」

 え?

「孤児院出身者は、今も繋がりのある人間もいます。いろいろなところで働いていますから、必要なことがあれば協力できるかもしれません」

「えっと、あの……」

「孤児院のことで、何かしてくださろうとしているのでしょう?白魔導士様の手を借りてまで」

 兵がうつむいた。

「妹が、まだ中にいるのです……」

「僕には妹はいませんが、お兄ちゃんと慕ってくれた子たちがまだ中にいる。僕が食事を与え面倒を見ていた子たちが……」

 ああ、そうだよね。100人も子供がいても、大人の姿はあまり見なかった。委員長と、3人の黒装束の大人を見ただけだ。

 小さな子には手がかかる。保育園でも乳児には子供3人に対して一人は必要だ。それが24時間面倒を見るとなればもっと必要になるだろう。孤児院では大人の代わりに小さな子の面倒を上の子たちが見ているんだろう。とすると、洗濯する手は意外と少ないかもしれない。

 ……踏み洗いをしていた。ある程度の体力も必要だ。

 ……今のあの子たちにそれほど体力があるようには思えない。体重をかけて踏み洗いをするのならば……どれくらいの子供たちが洗濯をすることができるのか。100人という人数でかなりの枚数の洗濯が可能だと思ってしまったけれど、実際は……20人も洗濯をすることができるかどうかわからないんだ。

 ぎりぎりと歯噛みをする。

「ありがとうございます。……あの、もうすでに結婚をして赤ちゃんのいる人たちもいますよね?子供が大きくなった人もいますよね?今オムツを集めているので……」

「はい、分かりました。声をかけてみます」

 考えないと。

 考えろ、考えろ。子供たちでも洗濯が効率よくできる方法。

 水汲みに関しては、リュートさんがコンパクトな水車を賢者さんに作ってもらう予定だ。

 水汲みという重労働が無くなったとしても、洗濯することも大変だ。洗い終わった洗濯を絞るのも握力がいる。力のない子供が絞った雑巾からぽたぽた水滴が落ちる光景なんてよくある話だ。

「脱水?」

 台所用品に、水洗いした野菜を入れてぐるぐる回して水気を飛ばすものがあった。

 脱水も同じ仕組みだったはずだ。洗濯機がぐるぐると勢いよく回って水気を飛ばす。

 ……水を吸った重たい洗濯ものを勢いよくぐるぐる回すことが子供にできるわけないか。

「待てよ……」

 昔の脱水は、確かロールの間に布を入れて回して絞るという……ああ、それなら力のない子供でも脱水ができるんじゃないかな。

 昔の、そうだ、昔の洗濯機……。

 ドラム式、水と洗濯ものを入れてぐるぐる回す……脱水のように勢いはいらないから、子供でも回せるんじゃない?いや、簡単に回るような角度や仕組みがあるはず。小さな力で大きなものを動かす……ああ、てことかどうかな。


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