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この世界の医療事情

「そ、そのものを捕まえて牢屋へ」

 と、陛下が命じた。

 騎士たちは一瞬戸惑ったものの、私との距離をじりじりと詰めてくる。

「ああ、そうそう。この力、相手を指定できるみたい」

 赤ちゃんを落とさないように片腕にしっかりと抱き、もう片方の手を、腕から血を流している男に向けた。

「傷の半分は、命じた者に転移」

 瞬間、陛下の叫び声が上がった。

「うがーっ、くそ、何を、一体何を」

「陛下っ!大丈夫ですか!」

 ざわざわとざわめきが起こり、狐と豚が陛下に近寄った。

「医者を!早く!その反逆者を即刻とらえて牢へぶち込め!」

 と、まだわからない馬鹿な人がわめいている。

「言っておくけど、舌を噛めば死ぬわよね?普通の人は。じゃぁ、私が舌を噛んだらどうなると思う?もう、顔覚えたわ。あなたに舌をかんだ傷を転移と念じながら舌を噛めば……ねぇ、言っている意味分かる?」

 狐顔が青ざめる。

「誰も私を傷つけることはできない。殺すこともできない。だけど、どこにいようとも私は簡単に人を暗殺できる。さぁ、どうする?手始めに、牢屋にぶち込めと命じた人間をターゲットにしましょうか。ああ、人殺しになるのは私の本意ではないから、ずっと腕に針でもさしましょうか。私は痛くないけれど、永遠と痛みが続く生活をすることになったらどうなるのかしら?それとも、毒を飲み続けてみましょうか……」

 豚顔も青ざめた。

 そして、陛下は血がしたたり落ちる腕を押えて震えている。

「す、すまなかった、いや、十分な待遇を用意させる、牢屋じゃない、わ、わしの寝室を明け渡そう」

 うわ。いやだ。

「おっさんの部屋に押し込められるくらいなら牢屋の方がマシ」

 気持ち悪い。

「で、では離宮を与えよう」

「さっさと日本に帰して。私からの要求はずっとそれだけだわ。この世界に私がいる限り、あなたたち全員暗殺におびえないといけないんだから、素直に日本に帰した方が楽でしょう?」

 危険な人間をとどまらせる意味なんてない。

 謝るよりもこちらに召喚した時と同じように無言で召還しちゃえばいいんだよ。白装束の人間呼んでさ。

 ……でも、それをしないってことは……。

「陛下、どうなさいましたか、この傷はいったい」

 医者という人たちがバタバタと現れて、陛下の腕の出血を止めようと何やら始めた。

 ふぅーん。

 王にさえそういう治療なんだ。ここにいる人たちは国の最先端の治療ができる人間なわけだよね?

 聖女だとか言う世界だから、回復魔法とか、ポーションのような便利な薬とかがあるかと思ったら、そうじゃないんだ。

 陛下が包帯を巻かれながら椅子から立ち上がり、土下座した。

「す、すまないっ。召喚する術はあるが、戻すための法術は見つかっていない……」

 ああ、やっぱり。

 そうかなぁと思ったけれど……。

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