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「リュートさんが拾ったんですよね?私の気持ちは関係ないでしょう?」

 少し冷たい声になる。

「俺は……」

 ぐっとリュートさんがこぶしを握り締めた。

「すまない。俺は、逃げたかっただけなんだと思う……。頼子と一緒にヨリトを育てるということは気持ちの良い逃避だ……」

 逃避?

「あ、まずいっ!」

 ヨリトのお尻が温かくなった。

 慌てておんぶ紐を外すと、後ろに回ったリュートさんがヨリトを抱き上げてくれた。

「セーフ、今度は背中は無事っ!」

「アウトでも、服はもう乾いていたから着替えれば大丈夫だよ」

 リュートさんが、マチルダさんのとこから回収してきた荷物をベッドの上に置いた。

「あ、そうだ、おむつ。リュートさん、ヨリトのおむつ替えお願いしてもいい?何枚かアンナさんに渡してくる。洗濯しても、すぐには乾かないから、きっと困ってるはず」

「え?俺が、おむつを替えるの?」

 リュートさんがびっくりした顔をする。うんちじゃないんだし、そんなに大したことじゃないよね?一度教えてもらってるし。

 アンナさんの部屋におむつを届けに行って外を見ると、すでに夕日が差している。

 ……孤児院の場所の確認さえまだしていない。

 今日はヨリト込みで宿を探したんだから、今から連れて行く必要はないんだよね。

「いらっしゃい!」

 食堂にはぽつぽつと客が入っていた。

「取りあえず酒、それからつまみになるもん」

 と、おじさん4人組が注文している。食堂というよりは居酒屋に近い感じの営業なのかもしれない。

「こっちには、肉料理2つと酒だ」

 別の客がご主人に声をかける。

「へいっ!まずは、酒、そっちも、酒」

 ご主人がジョッキにビールっぽい酒を入れ、調理場から姿を現した。

 本来はホール係の奥さんが、カウンターで品を受け取りテーブルまで運んでいるのだろう。

 一人で調理場とホールを行き来するのは大変だ。

 カウンターに内側からおかれたジョッキを、外側にでて運ぼうとしているご主人の元につかつかと歩み寄る。

「ああ、ヨリコさん、手伝わなくても……」

 首を横に振る。

 手伝いたいんだけど、そうすると今度は料理までタダにするとか言い出しかねない。逆に気を使わせてしまうだろう。

「飲み物ご注文のお客さーん、取りにきてください!しばらくの間、この店はワンオペ……一人で切り盛りしてますから、食事や飲み物はセルフサービスで、こちらに獲りに来てください。食べ物を注文するときもここから声をかけてください!」

 大声で叫ぶと、客がこちらに注目した。

「こちらの店に双子ちゃんが生まれました!少し大きくなるまでご協力をお願いしますっ!」

 ぺこりと頭を下げると、お客さんたちはニコッとわらって「おお、おめでとう。時々泣き声が聞こえてたけど、双子か」とか何やらご主人に声をかけながら素直にお酒を取りに来てくれた。


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