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 顔色はあまりよくない。髪の毛もずいぶん整えてないのだろう。ただ、痩せていない。幸いにしてご主人様が料理人だから食べるものだけはしっかり食べて過ごせているようだ。疲労した上にろくに食べていないのでは母乳の出も悪くなって双子ちゃんが常に空腹で余計によく泣いて、もうてんやわんやに拍車がかかっていたところだ。ただし、疲労も十分母乳の出に影響する。疲労は病気じゃないけど、転移できるかな?

 えーっと、白装束Aにつかれよ飛んでいけ!自慢のコーヒーを馬鹿にした恨みは忘れてないですぅ!ぷんすかっ!

「ん?あれ?急になんだか少し楽に」

「回復魔法じゃないんですけど、一時的に少しだけ楽になれる魔法が使えるんです。ほんのちょっとした力なんですけど。えーっと、アンナさん初めまして」

 右手にヨリト、左手にアンナさんの赤ちゃんの一人を抱っこ。ゆさゆさゆさ。

 前にも言ったけど、双子育児経験者。両手抱っこなんてお手の物!

「いいこね。ほーら、ママが元気になったよぉ。嬉しいねぇ」

 泣き止んだ子をアンナさんに私、もう一人の子と交代。

「あ……」

 ポロリとアンナさんが泣いた。

「ありがとう……ございま……す」

「ありがとう……ございま……す」

 産後鬱なんて言葉もあるけれど……。ただでさえホルモンバランスが崩れて精神が不安定になりがちなのに、過酷な育児。そりゃね。

 いくら赤ちゃんがかわいくても、かわいいと思えないときもあるよ。で、またかわいいと思えない自分に自己嫌悪して苦しくなったり。

 ……妹も相当やられてる時期があった。

 私は産後のホルモンバランスの崩れもなかったし、赤ちゃんの面倒を見る以外のこともしていたから、息抜きも出来ていたんだと思う。

 身内だけど、外側。子供を育てなくちゃっていう半端ないプレッシャーも今考えれば妹ほどなかったんだと思う。だから、妹が爆発するまで私も気が付かなかった。母親の苦しみに。

「そんなにかわいいっていうなら、お姉ちゃんにあげる!私は、かわいいって思えない……母親失格なんだ!」

 なんてことも言ったことがあったなぁ。ごめんね。私、きっと妹を追い詰める言葉を知らない間に口にしてたんだよね。「母親でしょう」みたいな言葉。もしかすると「母性本能」って単語も禁句だったのかもしれない。

 あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ、しなくちゃって自分を追い詰め、できないと自分を責め、精神的に追い詰められているのに睡眠すら思うように取れない……。

 もしかすると、アンナさんは赤ちゃんを背負ってお店の手伝いをする自分を思い浮かべていたのかもしれない。店を手伝えない自分も責めているのかもしれない。ご主人に営業時間を短縮冴えてしまったと……申し訳なく思っているのかもしれない。

 洗濯の山。

 正直、この部屋に入った瞬間、匂いがすごかった。

 こんな部屋では、余計に精神を病みそうだ。


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