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「すいません」

 1階が食堂、2階が宿というつくりの店。

 1階の食堂は夜だけの営業みたいで、仕込み中の宿のご主人兼、食堂の料理人が出てきて頭を下げた。

「今、ちょっと宿の営業は停止してるんですよ」

 そ、そんな……。

 奥から、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。

 ん?

 ん、ん、この懐かしい泣き声の合唱は!

「双子ちゃんですか?」

 泣き声のしている奥に視線を向けてご主人が頷いた。

「そうなんです。二人生まれて、妻が店の手伝いどころではなくて……。私自身も、育児をしながら食堂だけでも切り盛りしきれずに夜の営業だけにしている状態で……」

 そうか。そうだよね。

 一人面倒見るだけでも夜中の授乳におむつの洗濯、もう倒れそうなくらいふらふらになるのに、二人だと……。

「一部屋は使える状態ですが、あとは掃除もシーツの取り換えも何もできていなくて……」

 一部屋は、空いてるんだ。いいことを聞いた!

「じゃぁ、その部屋に泊めてください!あと、掃除やシーツの取り換えはしてから出ていきますし、あっと、それから……奥さんと赤ちゃんに合わせてもらってもいいですか?」

 ご主人があっけにとられている。

「あー、2部屋希望していたのでは?」

「1部屋でも十分です!」

 と、力説する私の後ろでリュートさんが右往左往していたのには気が付かなかった。

「アンナ、お客さんだよ」

「え?私に?」

 奥の部屋にご主人が案内してくれる。

「リュートさん、マチルダさんのところに置きっぱなしになっている荷物をお願いしてもいいですか?おむつがそこに入ってるので。あと、マチルダさんにはここの場所を伝えて、また後で行きますと。あ、干した服は乾いていたら持ってきてください」

 リュートさんは奥さんに合わせない方がいいかなと思ったので外に出る口実を作る。

「こんにちは。初めまして」

 やはり、そうだ。

 夫婦の寝室……だった場所だろうか。

 部屋の中は非常に散乱している。ベッドの上には、取り替えたシーツがそのまま積みあがっていたり、使ったおむつを入れておく桶も、はみ出すくらいおむつが積みあがっている。

 部屋で食事をとっているのか、テーブルには食べ終わった食器がそのまま。離乳食も始まっているのかな。小さな器と小ぶりのスプーンも乗っていた。

 奥さんは寝間着姿のままだし、胸元はいつでも赤ちゃんに差し出せるように、かなりラフな状態だ。……うん。ご主人以外の男性が見るには目の毒。

 泣いている赤ちゃんはリュートと同じくらいか少し小さいかな。

「ほーら、ほーら、どうしたの?お腹すいたのかなぁ?どっか痛くてぶつけた?それともおむつ?」

 奥さん、確か名前はアンナさんといったか。

 アンナさんはベッドの上に座って、もう一人の赤ちゃんをあやしているところだった。


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