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 あ、そうだ。

 洗うのは無理でも、乾かすだけならこの天気、少し干せば乾くかも。

 背中のアレ。

 ワンピースを脱いで、それから中に来ていたブラウスも。

「すっ、すまん」

 ばたんと激しくドアが閉まる音。

 ん?

 んん?

 今の声、リュートさん?

 今の私の姿、ブラウスを半分脱いで……。

 背中、ドアに向けてる生身の背中ちょこっと出てた……。

 うっわー!

 全然平気だけど。背中見られるくらい、まったくもって全然平気で、前じゃなくてよかった。

 っていうか、ブラとか見られてなくてよかった。たぶんこの世界では異質だよね。まぁ、リュートさんが女性の下着に詳しいとは思わないけど。

 足を見せるのもはしたないというか恥ずかしいというか、色っぽく見えるって世界なら、背中もまずいんだよね。

 ブラウスをもう一度しっかりと着てからドアを開く。

「リュートさん?」

 ドアの前でしゃがみ込んで頭を抱えているリュートさんがいた。

「すまん、悪気はなかったんだ」

 でしょうね。

「許してほしい、その、まだ、一緒に行動したいというのは、わがままだろうか」

 顔をこちらに向けて、懇願するような表情を見せるリュートさん。

 え?何、そんなに背中見たくらいで、大げさな……。

「大丈夫ですよ。気にしてませんから」

 待って、口にしてみてから、はっとする。この世界では重大事件だったとして、それを気にしてないっていうのは、肌を見せるのが平気な職業とか倫理観とか、ちょっとまずかったのかもしれない。

「その、ヨリト……いえ、赤ちゃんを背負っていたら背中でおもらしして、ちょっとそれで濡れちゃったので干そうと思っていたんで、えっと、着替えも持ってなかったので……ごめんなさい。誰もいないと思って好き放題してた私が悪いんで、だから、えっと、気にしてないです」

 慌てて言い訳を口にする。リュートさんが首を傾げた。

「ヨリ……ト?」

「あ、いえ」

 しまった!つい、うっかり、心の中でも赤ちゃんのことヨリトとか呼び始めていたから、するりと口から出ちゃった。

「赤ちゃんの名前を尋ねられて、毎回毎回捨て子捨て子というのも、赤ちゃんにもよくないし、その、適当にえっと……ごめんなさい。勝手にそう呼んで……」

 言い訳ばかりだ。

 リュートさんが嬉しそうに笑って立ち上がった。

「頼子のヨリと、隆人のトで、ヨリト?」

 う、そうです。その通りです。

 重ね重ねすいません。

「ありがとう、頼子。着替えがないって言ってたよね。買ってくるよ」

 テンション高めに、手をふっとリュートさんが出て行った。

「まって!」

 服を買ってくるって、着替えがないのも本当だけど、でもこの世界の服って、きっと高額だよね。ほいほい何着も買えないよね。

 いくらお金は多少は持っているといっても、高価な買い物をほいほいするだけの余裕はない。


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