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「おやおや、それは大変。うちに、もう使わないおむつあるから、いくつか持ってこようか?孫が生まれた時にと思って取ってあったんだけど、まだ先だから」
赤毛の女性が声をかけてくれた。
「いいんですか?あの、じゃぁ……できるだけたくさん、あの」
孫ように取ってあったってことは、ちゃんとたくさんあるってことだよね?だったら、赤ちゃん一人分ヨリトの分がすぐにそろうってことじゃない?
買わせてくださいでいいんだろうか?布の値段は高い。おむつの値段は?使い古しの中古のおむつの値段は?分からない。縫うという手間もかかっている。柔らかい方がおむつとしては上等。うーん。むつかしい。
あ、そうだ!
「これで!」
鞄の中から、買った布を取り出して差し出す。
「おむつを作ろうと思って買った布なんですけど、この布と交換してもらえませんか?」
お金を差し出すより角が立たないだろうと思ったら、赤毛の女性が目を丸くする。
「おや、新しい布じゃないか。まだハサミもいれてないんだろう?こんないい布と交換?」
「作る時間もなくて、出来上がったおむつと交換してもらえるなら本当に助かるんです。この布と交換できるだけのおむつをください」
ぺこりと頭を下げる。
「そうだねぇ、お誕生日に新しい服をというのとじゃ話が違うもんねぇ。ありがとうね、この布で子供の新しい服を作ってやれるよ。ちょっと待ってて。すぐに取ってくるから」
赤毛の女性が洗濯の終わった衣類と桶を持って去っていった。
「ふふふ、もしかして縫物が苦手なのかい?今度また困ったら声かけておくれよ。洗濯変わってくれたら縫物くらい手伝ってあげるよ。おむつなら洗濯してる間に3枚は縫えるからね」
「え?洗濯してる間に、3枚も?」
1枚縫うのにどれくらいかかるだろう。裁縫は得意な方じゃないけれど苦手でもない。ミシンじゃなくて手縫いと考えると……。
「そうさ。1枚10分もありゃ縫えるだろう。洗濯は時間ばっかりかかって好きじゃないんだ。一人じゃないから、こうしておしゃべりしながらやってるけどねぇ。一人で黙々とこんなことしててご覧?」
50代の女性がふぅっと小さくため息をついた。
うーん。一人で黙々とたらいの洗濯ものを踏み続ける……。うん、退屈しちゃいそうだ。
「分かる分かる。洗濯の時間じゃなくて、おしゃべりの時間だと思えばいいけどねぇ。じゃなきゃ、ここまで往復するのもめんどくさいし、洗濯してる時間があれば、散らかった部屋の掃除もできるし、買い物にも行けるし……内職だってできるのにと思うと……」
「かといって、あんまりため込んじゃうと後が大変だし、着るものなくなっちゃうからねぇ……子供なんて汚すなといってもどっかで汚してくるし」




