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「いいんですか?」

「お礼なので……あと、えーっと、また、お願いしてもいいですか?」

 ちらりと赤ちゃんを見る。

「ええ、それはもちろん。こちらも、また熱が出ることを考えるとありがたいです」

 ほっ。これで乳母ゲットです。

「じゃぁ、食べてて。これ、洗ってくるわね。えーっと、洗濯場はどこにあるのかな?」

「あ、そこまでしてもらうわけには!」

「ううん、いいの。助け合いっていうか、私たち、この街に来たばかりなので、洗濯しながら街のこといろいろ聞きたいから」

 と、申し訳なさなそうな顔をしているマチルダさんに主張する。

「ああ、それならハルヤさんがいたら、情報通なのでいろいろ教えてくれると思うわ」

 マチルダさんが納得してくれたようだ。やっぱり洗濯場は女性の情報交換の場になってるんで正解だったみたい。

「じゃぁ、言ってくるね。リュートさん、おんぶ紐を貸してくれる?」

 リュークがおんぶしていた紐を取り出して、広げる。紐というより帯か。

「俺が面倒見てるよ」

 にっと笑う。

「新参者が手っ取り早く輪に入るには、赤ちゃんがいたほうがいいのよ」

 リュートさんが頭をかいた。

「そういうもん……なのか。じゃぁ、せめて洗濯場まで桶は運ぶよ」

 リュートさんとマチルダさんの指導のもと、おんぶ帯で初めて背負う。なるほど、お尻の下とわきの間を通してクロスして前で結ぶのか。ふむふむ。

 落下防止ベルトとかないのは当然だけどちょっと不安だよね。脇の下に帯が通ってるからお尻が外れてもよほどのことがなければ大丈夫かな。

「じゃぁ、途中まで」

 と、バケツを2つぶら下げたリュートさんと並んで歩く。

 先ほどの井戸よりもさらに遠い場所に、洗濯場所があった。汚水が井戸に流れ込まないように、洗濯として使う井戸は、生活水用の井戸とは別の場所にあるようだ。

 ……遠いな。1キロ近く歩いた気がする。これは大変だ。

 普通の洗濯物であれば、1日2日ため込んだって問題はないだろう。天気が悪かったり、体調が悪かったり、やることが立て込んでいたりする日は洗濯をあきらめるだけだ。

 現代日本のように、毎日風呂に入ってシャンプーして着替えて洗濯してということもないだろうから……数日着たきりスズメで汚れてちょっと匂っていたからって誰も気にしないとは思う。

 けれど、おむつばかりはそういうわけにはいかない。

 雨だろうがなんだろうが、洗わないと。洗って外に干せない日は家の中にでも干して、時にはアイロンをかけて、とにかく乾かして使えるようにしなければいけないんだ。

 それこそ、おむつがどうしても足りない時には、手ぬぐいやタオル、着古した服を代用するしかないだろうけど、それだって無限ではない。……布をさっき買ったけれど……そのあと買った食べ物の値段と物価を考えると、決して布は安い金額ではなかった。


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