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色とりどりの野菜や果物、それから干した肉に魚。
見たことのない食べ物が所狭しと並んでいて。
大、興、奮!カフェ店長ですから。新しい食材、新しいメニュー、新しいムーブメント。食材へのアンテナは常に張っていた。
こんなに、知らない食べ物がたくさんっ!
「ああ、本当だな。さすがに王都だ。店の数も品の種類も多いな」
リュートさんの言葉にはっとする。
あんまり物を知らな過ぎても怪しまれるか。落ち着こう。少し落ち着いて。
よく見て、触ってにおいをかげばある程度想像できる品もある。
細長いけど、糸かぼちゃとかそれっぽい感じのものを手にとって店の人に聞く。
「どうやって食べると美味しいですか?」
コミュニケーションという名の情報収集。
生で食べられるか火を通すかさえわからないので。
「ゆでるより蒸し焼きにした方が上手いぞ。甘味が逃げないからな。ちょっと塩を振るとまた甘味が増す」
なるほど。かぼちゃっぽいと思ったのは正解かな?ゆでると水っぽくなる系のやつかな。うむうむ。
と、いろいろ手に取ってお店の人に教えてもらっていたら、リュートさんが不思議そうな顔をして私を見ていた。
「料理するつもりか?」
「え?」
「すぐ食べられる物を買っていった方がいいんじゃないか?」
し、しまった!
そうでした。マチルダさんに食べてもらうものを買いに来たんだ。今から料理とか食べられるまでにどれだけかかるのかと。
そもそも料理しようにも、する場所がないよね。さすがにマチルダさんの台所借りるというのも……重ね重ね面倒をかけ過ぎというか……。
「あ、そうでした。つい。王都は、見たことがない食材がいっぱいで、えっと、好奇心が……」
減らりと笑ってごまかす。
「あとでまたゆっくり見に来ようか」
リュートさんの提案に素直に頷く。
「そうですね」
ん?
それは一緒にってこと?行動を共にする約束なんてしてないけど……つき合わせちゃっていいんでしょうか?
適当に買い物をして戻ると、マチルダさんは赤ちゃん……うちの子を抱っこして背中をポンポンしているところだった。
げぷっ。と、大きなげっぷを吐き出す。
「ありがとうございます!飲ませてくださったんですね!」
赤ちゃん……うちの子じゃないんだけど、うちの赤ちゃんを受け取ると、マチルダさんはニコニコっと笑った。
「こちらこそ。マーサよりもしっかり吸ってくれたから、ちょっと楽になったみたい」
張りにはってがちがちになった胸が柔らかくなったように見える。
マーサちゃんはいっぱい泣いた後いっぱい飲んで満足したのか、すやすやと眠っていた。
「何が好みか分からなかったので、適当に買ってきました。食べてください」
と、買い物してきたものをテーブルに置いて、すぐに食べられる野菜と鶏肉を串に刺して焼いた物と、果物を差し出した。




