+
「授乳中は、辛い物やにおいの強いものはあまり食べない方がいいんですよ。それから、おっぱいの出がよくなるには水分をよく取る。水分の多くて栄養のあるフルーツなんかもあるといいですよね。あと、穀物……は普段の何倍も食べます。脂ものは、大きな生物は避けたほうがいいんです。人間の体温じゃ脂身を溶かして液体にできないので、乳腺が詰まる原因に。植物性の油か、小さな生き物、魚や鳥がいいんです」
助産師さんによると、霜降り牛を食べた次の日に駆け込んでくる人もいるのだとか……妊婦さんが食べ物に気を付ける話は有名だけど、授乳中の女性も相当食べ物に制約を受けるなんて、知らなかったんだよね。
砂糖も取りすぎちゃ駄目、油もダメで、クッキーやチョコレートのお菓子も控えないとダメ出し、牛肉だけじゃなくて、チーズなんかの乳製品もつまりの元。お餅にいたっては、詰まる説と、よく出るようになる説に分かれるし。
酒やたばこや薬だけじゃないんだよ。
「すまん。あー、結局何を買えばいいんだ?」
リュートさんが白旗を上げた。いや、両手を上にあげただけだけど。
助産師さんのアドバイスは「お、さ、か、な、す、き、ね」だった。
おは、お水。水分をたくさんとる。あ、冷水はだめ。
さは、魚。肉より魚がお勧め。DHAも取れると頭のイイコになるかもね。
かは、海藻。なは、納豆。すは、酢。きは、キノコ。ねは、ネギ。
血液サラサラ成分だよね。酢とか納豆とかネギって。海藻、こぶなんか甲状腺の働きがよくなってカルシウムもたっぷりらしいし。キノコは最近になって糖鎖とかなんかいいんだよね。詳しくは知らないけど。納豆と昆布買ってきてなんて言えないよね……。
「よければ一緒に買い物行きましょうか。初めての街なんでよくわからなくて」
一人で買い物するよりは、この世界のことを知っている人と買い物したほうが戸惑わないと思う。一石二鳥。
「俺も、王都は初めて来たから、道案内は役立たないぞ?荷物運びは得意だけど」
私なんて、この世界が初めてですよ。
「荷物運びといえば、すごい力持ちですよね。あの水を満たした水瓶を軽々と運んできたし」
褒めたのにリュートさんは微妙な顔をした。
「まぁ、力だけは人一倍どころか、人10倍くらいはあるな……だが、肝心の剣が……」
「剣技?剣士とかなんですか?」
改めてリュートさんの姿を見ても、剣は持っていないように見える。
「あー、違うが、似たようなもんか、んー、何ていえばいいかな」
と、言葉に迷っている。この世界の「職業」的な話もよく分からないので、まぁ聞いても理解できるか分からないのと、自分のことを尋ねられても困るので深くは聞きませんよ。
「あの辺で食料品買えそうですね」
市場のように露店が並ぶ場所を見つけて指をさす。
「ああ、そうだな。どの街も基本は同じだな。王都とはいえ特別ってことはないか」
王都。そういえば、お城から出てきたんだから、ここは王都になるのか。
「うわぁ、すごい!」




