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「あー、ごめん、ごめん。お尻気持ち悪かったよねぇ。おむつ買ったからね」
とはいえ、ちょっと待って。おむつがあっても知識がない。
やっぱりここは、食堂の3件隣の家に頼るべきだよね。
「急ぎましょう、リュートさん」
と、リュートさんと一緒にしょくどうの3件先の家に向かう。
「ほんぎゃー、ほんぎゃー」
ああ、早速赤ちゃんの泣き声だ。
泣き声からすると、生まれたてというわけではなさそう。うちの子よりは力が弱いし、声がかわいいから、生後3,4か月の女の子かな?
泣き止むまで待った方がいいかな……。
と、しばらく家の前で待機。
だけど、一向に赤ちゃんが泣き止む気配がない。
えーっと……。何か取り込み中?
「リュートさんはここで待っていてくれますか?」
もし、授乳しようとしていたとしたら、男性はいない方がいいだろう。
「すいませーん、あちらの食堂で紹介をされたのですが、えーっと、すいませーん」
声を何度かかけるけれど、返事はないし、赤ちゃんの泣き声も止まない。
あれ?これ、大丈夫なの?
「失礼しますっ!」
中でママが倒れてたりする想像をして、勝手に人の家に入るのははばかられるものの慌ててドアを開けて中に入る。
赤ちゃんの泣き声は、入り口から入って右側の方から聞こえてくる。
「すいません、こんにちは、えーっと、失礼します」
声をかけながら部屋のドアを開く。
部屋には大人用ベッド。そしてその隣にベビーベッドが置かれている。
「す……いませ……うるさかったですか……今、……」
か細い声で、ベッドに横たわっていた女性が起き上がろうとする。
「だ、大丈夫ですか?」
ふらっと起こした上半身が倒れそうになった女性を片手で支える。片手には赤ちゃんを抱っこしているから。
「熱っ」
女性の体はちょっと触れただけでも熱があると分かるほど熱い。
「落ち着いてください、あの、赤ちゃんがうるさいとかそういう話じゃないので、えっと、抱っこしてもいいですか?」
女性に断り、赤ちゃんを抱き上げる。幸い首はもう座っているようで、右手にうちの子。左手にここの子を抱っこする。
……あ、双子赤ちゃん面倒見てたんだから、両手に抱っこなんてお手の物ですよ。まだ生後半年と4か月の子なんて軽い軽い。
「よしよし、大丈夫だよ、ママもすぐによくなるからね、安心してね」
ゆさゆさと揺らしながら、ベッドの女性に話かける。
「どこが悪いんですか?えっと、いつから?お医者さんには?熱のほかに何か症状がありますか?」
女性が、ふらふらとしながらも、私が抱き上げた赤ちゃんに手を伸ばした。
「ごめんね……おっぱいあげられなくて……」
あげられない?
女性の胸元、服の隙間から見える胸を見る限り、出ないわけではなさそうだ。それどころか、だいぶ張っているように……。
あ、もしかして……。
「乳腺炎……」




