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「はい。新しいのもらってきた」

 目の前に差し出されたスプーンに、目頭が熱くなる。

「あ……」

 見上げれば、スプーンを差し出したリュートさんの姿。

 冴えないおっさんなんて自分のこと言っていたけれど……。優しくて気遣いができる素敵な男性だ。

「ありがとう」

 スプーンを受け取り、涙がこぼれないように下を向いてぎゅっと目をつむり心を落ち着かせる。

 戻ってきてくれてありがとう。

 一人にしないでくれてありがとう。

「うー」

 ぺちんと、スプーンを持っていない方の赤ちゃんのてが私の頬っぺたにぶつかる。

 ああ、そうだった。ごめんごめん。一人じゃなかったね。

 あなたがいたね。

「おじちゃんがスプーンを持ってきてくれたから、たべまちょうね」

「おじちゃ……ん……いや、まぁ、そうだけど……」

 リュートさんがちょっとショックを受けている。

「君からしても、俺はおじさんなんだろうな……」

 はーとため息が漏れている。

 いやいや、私もおばちゃんなんで。

 スプーンにミルクがゆを救う。温度は大丈夫ね。

「はい、どうぞ」

 口元に持っていくと素直に口を開けた。

 ああ、すでに離乳食を食べた経験がありそう。

 口からこぼしながらも、嫌がることなく次々と口に運ぶミルクがゆを食べている。

 お椀の半分くらいの量のミルクがゆをぺろりと食べてしまった。

「抱っこ、変わろう」

 食べさせ終わると、リュートさんが赤ちゃんに手を差し出す。

 テーブルの上の食事、リュートさんはすでに空になってて、私の方は半分ほどまだ残っている。

「ありがとう」

 赤ちゃんをリュートさんに渡したとたん……。泣いた。

 ああ、泣いちゃった。

「ほら、高い高いだぞ、高い高い、えーっと、ちょっと外に出てた方がよさそうだな……」

 ポケットに手を突っ込み、店の人に手渡す。

「ごちそうさま、旨かった。先に出てるよ」

 と言っている。

 ほっ。待っていてくれるんだ。

「優しい旦那さんね」

 と、店員さんが声をかけてくれた。

「違うんです」

「え?」

「あ、優しいのは確かなんですが、私たちその……」

 夫婦じゃないし、そもそもさっき出会ったばかりだし、それから……。

「夫婦じゃなくて、あの赤ちゃんも私たちの子供ではなくて、えっと……」

 そう、このタイミングで孤児院の場所を聞けばいい。

 ちょうどいい。

「あら、そうなの?じゃぁ、これから夫婦になるのかしら?兄妹って雰囲気ではなかったみたいだけど……」

 珍しい髪の色が二人そろっていて、夫婦じゃないのに兄妹にも見えない?

 どんな雰囲気だったのか……。

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