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 というか、聖女だけじゃないのかぁ。勇者……それから、賢者?そういう人たちも昔から召喚されてたんだ。

 ったく、それでこの世界の問題が解決されないのに、なんで繰り返し繰り返し召喚するのかな?

 ふざけんなと言いたい。

 しかもたぶん、昔召喚された人たちも「日本に帰して」って言ったと思うのに。全然、まったく、帰す気ないよね。方法を探そうともしてなかったんだよね。

 もうっ!

「あ、いや、俺は日本人街出身ではないんだ」

 男の人が否定する。

「そうか。でも、勇者の血は流れてるんじゃないのか?街を出た人間もいるだろうからなぁ。そこまで立派な黒目黒髪なんだ。何代か前の血が出たに違いないよ」

 と、おじさんが男の人の背中をバンバンとたたいた。

 日本人街出身じゃないのか。

 じゃぁ、どういうところなのか聞いてもわからないかな?それとも、誰でもある程度どういう場所か知ってるんだろうか?

「嫁さんは日本人街の人か?」

 おじさんが、私を見た。

 よ、嫁……。

 いや、だから違う。さっきも勘違いされたけど……。

 赤ちゃん抱いてるからかな?

 そりゃそうか。

 赤ちゃん抱いてるのに、旦那以外の男性と食事とか想像しないもんね……。

 どう答えたらいいんだろう。

 この世界では黒目黒髪はけっこう珍しい。でも、いないわけじゃないし、日本人街出身ですといえば「なるほど」で終わる。

 ……まさか、聖女として召喚された人間だなんて思われることもない。

 私は……聖女だということは隠して生きていきたい。っていうか、聖女だと知られるとどんな扱いを受けるのかわからないのに「私は聖女です」なんて言って回るなんてできるわけないよね。

 ああ、それに、そもそも……私は、本当に「聖女」じゃない。「反逆の聖女」だ。

 回復魔法的な物は使えない。

 誰かを犠牲にする病傷転移魔法しか使えないのだ……。

 聖女だと知られて「聖女様お助けください」って言われるのも嫌だけれど「聖女なのに、なぜ回復させてくれないんだ!」って言われるのはもっといや。

 ……お城ではうまく切り抜けられたけれど……。魔力が切れて死ぬ未来は全力で回避したい。

 とすると、やっぱり、日本人街出身ってことにしておけば一番問題が少なそうだけど……。どんなところか尋ねられたら答えられない。

 ってことは……。

 とれる手段は2つ。

 記憶喪失のふりをする。……あー、記憶喪失のふり……。ちょっと大変そうだよね。

 んじゃ、もう一つの手段にしよう。

「父が、日本人街出身だったそうで……もう、両親とも亡くなってしまったので、詳しい話は今となっては聞けませんが……」

 と、日本の両親の顔を思い浮かべて話をする。

 両親がすでに亡くなってしまっているのは本当のこと。

 ……だから、私の表情は演技ではなく、ごく自然に両親を懐かしみ、ちょっと寂しい気持ちになったときの顔になったと思う。


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