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「この街に来る途中で泣いているのを見つけて……。面倒を見てやろうなんて思わずに孤児院に連れていくべきだったよな……」
「ご、ごめんなさい、あなたは、この子を助けたのね……それなのに、えっと、……」
ぺこりと頭を下げる。
「あーいや。助かったよ。あのまま泣き続けてたらどうしようと思ってたんだ。で、その、孤児院はどこにあるか知ってるか?」
少し目じりの下がった優しそうな顔をした男の人が申し訳なさそうな顔をする。
日本人基準だと、塩顔って言うんだっけ。あっさりして目元が涼やか。頬もしゅっとしていて……。ソースのようなくどさも、醤油のようなシャープさもないけど。安心するイケメンだ。
「ごめんなさい、私、この街に今着いたところで……」
「ああ、そうか。俺と一緒だな。俺も今、ついたところで……」
一緒じゃないですけどね。私は今、この世界に着いたばかりで、街どころかこの世界のことすらわからないんだから。
目の前の男の人の服装は、そこそこ使い込まれた革の胸当て。少し膝が擦り切れた厚手の茶色のズボン。黒い革のブーツ。シャツは元の色は生成り。もともと生成りだったのか、白いものが黄ばんだのかは不明……という感じだ。つまり、ずいぶん使い込んだ感じ。冒険者だろうか?
だとしたら、いろいろ話を聞けるといいな。
道行く人に、尋ねることにした。
「すいません、孤児院はどこにあるのかご存知ありませんか?」
恰幅のよい肝っ玉母さんという見た目の女性に声をかける。
「孤児院?」
不審げな目を向けられる。
私たち二人と赤ちゃんを見る。
「せっかく授かったのに、孤児院にこの子を捨てに行くつもりかい?」
え?
「黒髪の両親から、茶色の子供が生まれて、浮気でも疑われたのかい?」
女性が私に目を向けた。
「い、いえ、私は浮気とか……」
っていうより、両親?
もしかして、私たち、赤ちゃんの親だと思われた?
「浮気はしてないって言っているのに、信じてもらえないのかい?かわいそうに。いいかい、両親の髪色と違う子供が生まれるのはよくあることだよ。いくら二人とも珍しい黒髪だからって、子供まで黒髪が生まれるとは限らないんだからね?」
あれ?
女性が、男の人を睨み付けた。
「かわいい赤ん坊じゃないかい。髪の色一つで捨てるなんてそんな馬鹿なことをするもんじゃないよ。ほら、ママの腕の中でこんなに安心しきってすやすや眠ってる」
ママ?
いや、違います。
「男の子かい?眉毛の形はパパにそっくりじゃないかい?将来が楽しみだろ?」
「パ……パパ……」
男の人も唖然としている。




