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城の1階の、どこかわからない廊下の壁にもたれかかる。
廊下はずいぶん先から先まで続いていて……。大きな立派なお城だというのが分かる。
石づくりだったのは、どうも召喚の間のある地下だけのようで、1階は、壁は白塗り。木の柱も見えるし、いわゆる「要塞」としての側面のある「石造りの頑健なだけが取り柄の城」とは違って、そこそこ豪奢な見栄えだ。
ってことは、ある程度のこの世界は平和なのか。それとも、この国が栄えている、他国の侵入を防ぐことができているのか。
ろくでもない王様だったからなぁ。もしかすると、単に浪費家、国民を犠牲にしてる可能性も……。
あ、むかむかしてきた。
……そういえば、聖女を召喚した理由、結局聞かなかったけど何だったのかな。
他国より上に立ちたいみたいな理由だったら「はっ笑止」で終わるけど。
魔王を倒してほしいみたいな理由だったら、まず自国の戦力どれくらい投入したのか教えてほしい。自分たちで倒そうと努力もせずに、勇者だとか聖女だとか召喚して「頼んだ」だとしたら「けっ冗談じゃない」だし。
まぁ、でもさ。
……回復魔法が使えるわけじゃないし、私に何ができるのか……とは思うけど。
「お、お待たせいたしました!聖女様っ!あの、これ、これを……!」
白ちゃんが走ってきた。
えーっと、転ぶよ?あ、つんのめった。耐えた。
「鞄は、女性が使う一般的なものよりも、丈夫なものを持ってきました。旅人や冒険者が使うようなものです」
冒険者。やっぱり、冒険者はいるのか!
革でできた斜めかけの鞄を手渡される。
うん、両手も使えるし、ハンドバッグより便利そう。
革なら布よりも丈夫ってことかな。帆布のような丈夫そうな布とかなさそうだし。
「服は、えっと、これでいいですか?本当は聖女様には春色の服が似合うと思ったのですが、あいにく秋色のワンピースしか置いてなくて……」
と、差し出されたのは、モスグリーンのワンピースだ。
……春色って、若草色みたいな緑のことだろうか……。それとも、まさか、桜色だとかタンポポ色じゃないよね?
30歳女子が身に着ける色じゃないですからっ!
よかった。なくて。
「着替えたいんだけど、更衣室とか……あー、移動がまた大変かぁ。その辺の部屋使わせてもらえないかな……」
と、手近のドアをノックしてみる。特に返事がないので、ドアを開こうと思ってノブに手をかけたら、内側に自動で開いた。
「ひ、魔法?」
と一瞬驚いたら、内側で侍女が頭を下げてドアを開いていた。
「白魔導士様、申し訳ございません。こちらの部屋はまだ清掃が終わっていません……」
と、侍女が私の後ろに立っていた白ちゃんに話しかけた。




