ショート短編『BAD・DAY』
いつもとは違ったタイプで描きました。もし良ければ他作もよろしくお願いします。
超短編です。
ラジオからよく聞くニュースが流れる。
まぁ、あまりいいニュースとは言えない。
『無差別殺人事件がA市にて発生し犯人は今も────』
...本当によく聞くニュースだ。ハンドルから片手を離しラジオの電源を落とす。
暗い事件はあまり聞きたくない。
朝焼けが嫌に眩しい。この通勤ルートも慣れたものだ。
今日は早く帰ろう、何せ2人目の子の4歳の誕生日なのだから...。
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仕事が一段落つき、正午を告げる鐘がA市役所の方から微かに風に乗ってくる。
妻にメールをするのは日課だ。後輩につつかれても一笑できる。
「お前も早く彼女作れよ、」と。そして自分の妻子を自慢するのだ。嫌な奴だったかもしれないな、でもそれも幸せだ、構わない。
しかしこの日は違った。
メールの通知にはただ一言。
『たすけ』
それほどまでに慌てていたのだろう。朝のニュースの内容が頭に影を落とす。
俺は駆け出した。
後方から後輩の俺を呼び止める声が聞こえる。
構うもんか。俺はエンジンを始動した。
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運良く、信号はどれも青のままだった。
いや、一つや二つ、見逃していたかもしれないな。
少なくともこの14年間で最速の帰宅だったに違いない。
家のドアを慌てて開けようとする。
開かない。
心臓の音が頭にまで響く。
ドッドッドッとリズムが早まる。
────息が苦しい。
鍵を震える手で突っ込み回す。
ガチャン。
扉をあける。
リビングに駆け込む。
家族3人が、こちらを向く。相変わらずニュースは流れている。
少しやつれた長男以外、
皆怪我ひとつなかった。
「何だよ、ふぅ...こんなに早く帰ってきたってのに。最悪の日だよ...」
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家族は無事だった。誰一人として怪我を負っていなかった。
しかし、朝の嫌な予感は違った形で的中してしまったのだ。
あの日家に帰って、リビングに居たのは妻と次男だけだった。
俺は見てしまったのだ。
TVに映る長男の写真を。
あいつの、凶行を。
────気がつけなかった俺は父親失格だろうか?
液晶画面に映った長男を見て、妻は俺に助けを求めていたのだ。
これから俺たちはどうすればいいのだろう。
あぁ、
本当に
────最悪の日だ。