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7.ミスコンテスト in 音大


 僕が懸念した通り、彼女が普通の女の子みたいにお洒落をしたら・・・。



(なぁ、文化祭どうする?)


そう、この季節は文化祭シーズンなのである。そうじゃなくても賑やかな時期なのに、今年はあのお嬢様が『ミスコンテスト』を主催すると公言していた。従来は、演奏会やコンクールなど、音大ならではの催しであったが、盛り上がりに欠けると言うお嬢様の一存でこのようになってしまった。この盛り上がりの背景にはこんな理由もある。優勝者には一つだけ大学内での権利が貰えると言うことで異常なまでの雰囲気だ。


「なぁ、間違ってもミスコンなんか出るなよな」

「私なんか、出られないよ」


文化祭を一週間後に控えたある日、僕たちは一緒にキャンパスを歩いていた。


「ちょっと、そこのあなたたち!お待ちなさい」

「え〜と、お嬢様。何か用でも?」

「そそそそ、そちらの女性はどなたですの?」

「こここここちらの女性は僕の将来を約束した人です」

「なななななななんですって!?」

「そんなに驚く事かよ!?」

「用がないなら失礼するよ」


「そこのあなた、ミスコンに出なさい。そして、わたくしと勝負ですのよ!良いこと?断る事はできませんのよ。この意味、お分かりかしら?」


「あの、お断りします。さっき、ミスコンには出るなと言われたもので」


「だ、誰がそんな事を言ったのですか?」

由美は僕を指で指した。


「また、あなたですのね、邪魔立てするのは。ミスコンで勝負ですのよ!」


「由美、こうなったら、ミスコンに出て、あの女を負かして来い!」

僕は耳元で囁いた。

「はい、頑張るね」


「ほっほっほ〜!では、失礼!」


困った事になったのである。買っても負けてもただ事では済まない気がした。僕たちはミスコンに詳しい人に状況を聞いてみる事にした。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ちょっと、良いか?」

「何?」


「ミスコンに投票するならどんな子にする?」

「そうだな、一見控えめだけど、メリハリのある・・・」


「イヤらしい事を想像するな!身体の事じゃない!」

「それ以外、ミスコンに何を期待すんだよ!水着だろ、下着だろ?えへへ・・・」

「ダメだ、こいつ。ゴメン、聞いた僕が悪かった」


こんな事をしても無意味である。何も勝つ必要は無いんだ。逆に勝ってしまったら、あのお嬢様の不興を買ってしまうではないか。このまま当日まで待つ事にしよう。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




僕たちは家でのんびりすることにした。

「そう言えば、荷物はいつ持ってくるんだ?」

「へっ、えっ?」

突然の質問に驚いたようで、挙動不審である。


「あ~その事ね。もう持ってるわ。この鞄」

「たったそれだけか?女の子の荷物にしては少ないな」

「これだけあれば、私は十分なの」


(ゆみちゃん、ちょっと降りてきて)

母が呼んでいるようだ。


「これ、ちょっと着てみてちょうだい」

どこで用意したのか、たくさんの洋服がある。何やら騒がしいので様子を覗きに来てみた。


「母さん、これはいったい?」

「ゆみちゃんに来てもらう服よ!知り合いにサイズも取り寄せてもらったの」


「こんなに着れません」

「良いのよ、毎日着てくれればね(笑)」

「着せ替え人形じゃあるまいし」


母さんも彼女も、言葉とは裏腹に楽しそうだった。僕はそんな二人を見て嬉しくなってしまった。


「由美、ミスコンは前のメガネ姿で出ようぜ。やっぱりあのお嬢様を怒らせたら面倒だ」


「あら、ミスコンって何?ゆみちゃんが出るの?まぁ大変!さらにお洋服を追加しなきゃね。水着も要るかしら。大変大変!(笑)」


「もう辞退は無理だろうからな」


「さっきから何を言ってるの?お嬢様ってもしかすると梨紗さんのこと?」

「母さん、あの女を知ってるの?」


「知ってますとも、彼女のご両親のことも、あなたたちの大学の理事長のことも知ってますよ」


「へぇ~、何でも知ってるんだ。あの女が由美に嫉妬してミスコンで勝負だ!なんて騒ぐものだから大変なことになったんだよ!」


「母さんも見に行こうかしらね、ゆみちゃんの晴れ姿(笑)」


「これ以上、騒ぎにしないでくれよな」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




いよいよ、文化祭の当日である。彼女はバッチリお洒落をしてきてしまった。


「おい、おおおお前、そこの超絶美人さんはだあれ!!」

雅樹があたふたしながら近寄ってきた。


「言ってなかったか?俺のお嫁さん!」

「何ですと!!だから女に興味なかったのか!こんな美人がいりゃ、他の女はメスに見えるよな!ズルい、イケメンはズルいぞ!」


「一人で興奮するなよ!ミットもない」


「由美、僕以外とは話すなよ、良いな!」

「うん、そうするわ」


僕たちはミスコン開始まで会場を見て楽しんだ。



(お待たせしました!いよいよ、メインイベントのミスコン in 音大を開催します!みんな、盛り上がってるかい!?)


異様な盛り上がりである。僕はただの応援者なのに緊張している。彼女はもっと緊張しているはずなのに、全くだらしないものである。


(エントリーナンバー一番 爽やかな緑が似合う、フレッシュな一年生 鮎川千尋だ!)

(エントリーナンバー二番 シックな紫の似合う大人の女性、さすがは三年生 三井裕子だ!)

(エントリーナンバー三番 ダイナマイトボディ健在 我らが女王 リサリサだ!)

(エントリーナンバー四番 彗星のごとく現れたスーパービューティー 真弓由美だ!!)


会場は大喝采に包まれた。


(それでは最初の質問です。彼氏はいるかな?順番にお答えください!)

(会場が大いに沸き立った)

「え~、いませ~ん」

「募集中です」

「わたくしに相応しい男性はいるのかしら?」

「えーと、いません」


(ミスコンに出場するきっかけは?順番にお答えください)

「なんとなく~、出てみました!」

「友達に言われて」

「わたくし無しでは盛り上がりませんわ!ほ~ホッホッ!」

「リサリサさんに出て勝負なさいと言われたからです」

(おい、由美のバカ!なんてことを言うんだよ!)


進行は滞りなく運び、質疑応答も終わった。

あとは、結果を残すのみとなった。


(審査結果は!!エントリーナンバー四番!真弓由美さんに決まりました!おめでとうございます!今の気分を一言、お願いします!)


「はい、嬉しいです。ありがとうございます」


(それでは優勝商品の進呈です!なんと、大学で何でもひとつだけ好きな権利を行使できるチケットで~す!安心の理事長サイン要り、これで単位なんて怖くな~い!)


(以上、ミスコンを閉会します!!ありがとうございました!!)


めちゃくちゃ盛り上がったようだ。


「ゆみちゃん、見てたわよ。本当に綺麗だったわ!母さん、嬉しい!(泣)」

「いつから由美の母さんになったんだ?」

「あら、昔、ゆみちゃんが言ったのよ、私のことを、お母さんってね」

「子供に何を言わせてるんだか、まったく!(笑)」

「よし、帰ろうか!」

「うん、楽しかった!」


僕たちは記念撮影をしてから帰宅することにした。


あれから、お嬢様の姿を見なかったのが心配だったが、今は気にせずに疲れを癒そうと思ったわけである。

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