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10.神様リグレット!!

誤字脱字は多いと思われます。

 卒業間近、卒論はとっくに完成しており、残すは教員採用試験の日を待つのみとなった、早春の一日。僕たちは期待に胸を膨らませ、最後の大学生活を送っている。


「なぁなぁ、就職決まったか?」

雅樹が慌て顔で聞いてきた。


「まだだよ、お前は?」

「俺に聞いちゃう?この天才ヴァイオリニストに?」

「いや、聞かなかった事にする」

「いや、聞いてくれよ」

「どっちなんだ?」

「就職は全滅、演奏家の道も無理そう・・どうしよう」

「お嬢様に頼んでみれば?」

「梨紗ちゃんか!その手があった!それじゃ、俺、急ぐから!」

「そう言えば、彼女、海外じゃなかった?」

「もしかして、俺をおちょくって楽しんでないか!!あばよ!!」

「ああ、じゃあな」



採用試験直前ともなるとやはり緊張する。勉強は遣り尽くしたし、面接も小論文も、実技だって完璧のはず。落ちる要素が無い!・・・気がする。


「さて、終わったし、帰ろうか?」

「そうだね、帰ろう」


僕たちは歩いて帰る事にした。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




(キキキ〜〜〜〜〜〜ガシャン!!)


「キャー!!」


どうやら、僕は信号無視の車に敷かれたようだ。幽体離脱とでも言うのだろうか、泣き叫ぶ由美の姿と横になった痛々しい自分の身体を見下ろしている。


(大変だ、交通事故だ。私が、警察と救急車を呼ぶ。誰か、あの車のナンバーを控えてくれ!!)

テキパキとサラリーマン風の男性が現場を仕切ってくれている。


彼女は動揺してしまい、行動できないようだ。



(救急車です、ご家族の方ですか?)


彼女は一緒に乗り込むと、病院までの搬送に付き添った。


(警察です、通報された方は?事故の状況は?)


通報したサラリーマン風の男性が応対している。


「信号無視をした車は、赤信号にもかかわらずスピードを上げて直進、20歳前後の男性を敷いて逃走。ナンバーはこちらです。車は紺のセダン、運転手は40代の男性、被害者は先ほど救急車で搬送されました。分かっている情報は以上です」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 病院に到着後、ただちに集中治療室に搬送された。どのくらいの時間が経過したであろうか、状況は全く分からない。


(治療が終わったようだ)


「先生、容態はどうでしょうか?」

由美が必死に確認している。


「危険な状態です。ご家族の方を呼んで下さい」


(由美は目に涙を浮かべていた。どうしていつも私じゃなくて彼ばかりが辛い目にあってしまうのか・・・)


由美は事故と経過報告のため、電話をかけた。


「もしもし、おば様ですか?」

「ゆみちゃん、どうしたの?」

「あの、交通事故で、今、病院に、来ているのですが・・・(泣)」

「どこの病院?」

「坂下総合病院です」

(そこは、父親が息を引き取った病院でもある)


「わかった、しっかりしてね。すぐに行くから」

(母は急いで病院に向かった)




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ゆみちゃん、容態はどう?」

「おば様、今先生を呼んできます」

「いいのよ、ここに座っていてちょうだい。私が聞いてくるからね」

「・・・・はい(泣)」

由美は泣き崩れてしまった。


「先生、容態はどうでしょう?」

「失礼ですが、患者さんとのご関係は?」

「母親です」

「そうですか、残念ですが、非常に厳しい状況です。怪我自体は大した事がないのですがね、心肺機能低下と脳を激しく打ち付けたため、脳挫傷を起こしてます。今晩が峠といったところです」

「そう・・ですか・・・」

母は父を失った悲しみを思い出してしまった。


「ゆみちゃん、今夜は私が付き添うから、あなたは家に帰って休みなさい」

「私もここに居ます。もし、もし、会えなくなってしまったら・・そう考えると離れたくありません。今まで、ずっと心が離れてました。今度は身体まで私から離れるなんて嫌です!」

「わかったわ、一緒に祈りましょう」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




二人は心配で、ずっと見守っていた。どのくらいの時間が過ぎたのだろうか?辺りが漆黒の闇に包まれた時、目の前に人影が現れた。


「母さんに由美、こんなときにゴメン。父さんがいたんだ。僕は父さんに会って今後の事を話したよ。とても喜んでくれた!由美のことも話したら、父さんはちゃんと覚えていてくれたんだ。僕はそれがすごく嬉しくて。最後に母さん、いろいろありがとう。お世話になりました。由美、約束守れなくて、一緒にいられなくてゴメン。もう、行かなきゃ。お別れだね・・・」



「嫌、行かないで!!もう、一人にしないで!」

泣き崩れる由美と母。その姿が、僕には一番辛かった。もう、最後の別れは二度と懲り懲りだ・・・。


二人は病院のソファで寝てしまったようだ。


「お母様、奥様、容態は持ち直しました。患者さん、不思議な事に涙を拭った痕があるのです。動けないはずなのに不思議な事もあるものですね」


「先生、息子は、息子は助かるのでしょうか?」

「ご安心下さい。ここまで回復すれば、もう心配はないでしょう」

「ありがとうございました」


医師の報告に安堵したのか、二人とも笑いながら涙を浮かべていた。


「お医者様ったら、ゆみちゃんのこと、奥様だってよ(笑)」

「からかわないで下さい」

「でも、いずれはねぇ、そうなるでしょ?今まで、ずっとあなたのこと、待ってたのだもの。これからもずっと、待つわ(笑)」

「はい・・嬉しいです。ありがとうございます」


(神様、ありがとうございました。涙を拭いて下さったのですね?)


由美は心のなかで、神様に感謝の言葉を捧げた。


(君たちには、これ以上の後悔をさせたくなかった。神は人に手助けすることはならんのだ。でも、夢と希望を与えることはできる、覚えておくが良い)


神様の御心を知り、もう一度、感謝の祈りを捧げた。


それから、数日後。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



教員採用試験はと言うと・・・当然ながら僕たちは無事に合格した。


 採用試験の二日前に退院した僕は、大慌て。でも、なんの心配もなかったのである。結果がそれを証明してるしね。母は、それは喜んでおり、由美の母親もそれはとっても喜んでいた。僕は初めて由美の母親に『直接』あったのだけど、これからは家族ぐるみの長い付き合いになりそうだ。


お嬢様はと言うと、あの傲慢な態度で就職試験に合格できるはずもなく、また、卒業旅行と称して豪華な海外旅行に出掛けたわけだが、またしても、あの性格が災いしてトラブル頻発、帰国がいつになるか分からなくなったそうだ。その噂はあっという間に大学中を駆け巡り、いくら権力者のお嬢様といえども、ここまで噂が広まってしまうと、さすがに隠蔽はできなかったのだ。


頼みの理事長でさえ、どうにも出来なかった訳で、卒業が危うくなると知るや、海外に留学でもしたことにして、ほとぼりが覚めるまで豪遊するんじゃないかな?




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 今日は大学の卒業式。社会人への第一歩を踏み出す門出の日。雅樹はと言うと相変わらず女性の尻ばかり追いかけていて、就職浪人疾走中。


 そして、僕たちは、いよいよ、この春、教師になります!!


二人で、いつまでも、どこまでも、順風満帆な人生を歩み続けたいと、神様に祈ります。


卒業おめでとうございます!!



取りあえず、完結させました。本当はまだまだあるのですが、今日のところは、これでおしまい!ありがとうございました。


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