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手をのばせば  作者: 長岡青
8/11

週末の金曜日

 週末の金曜日。

 土日休みの私にとっては、金曜日の午後にもなれば、閉店間際のシャッターの閉まりかけた店舗状態なわけで。仕事が第一の仕事人間でもない私にとっては、もう気もそぞろでサーフィンのことしか考えていない。こんなことを言うと怒られてしまうかもしれないけれど、サーフィンのできるぐらいと食べていくのに困らない程度の稼ぎがあれば私にとっては十分。

 

 良くも悪くも、私は大学院を卒業しているから、例えばメーカーで働いている以上、最低限の賃金はある程度確保されていると言っても過言ではない。

 ずるい、と言われるかもしれないけれど、そうなれるように勉強させてくれた両親にはありがたいと思っている。それに、大学院を修了するまでそこそこの努力をして勉強した自分を少なからず誇りに思っている。

 特に大学三年生の時、本当に必死で勉強した。毎日続くテストを落とさない様に、しいては留年しないように。後にも先にもその時ほど勉強をしたことはないと思う。一人で耐えられなくて、でも友達の家に行ったり、大学の図書館に行ったり。そうしたら必ず誰かいて、一緒に勉強していた。誰かの家に行けば、夜も十時を回ればお腹が空いてくるわけで、そうしたら誰かがモヤシ炒めを作ってくれたり、コンビニへ買い出しにフラッと行ったり。辛くも楽しかった。

 そうやって乗り越えてきた経験があるからこそ、今でもたいていのことは乗り越えて行けるし、あれほど大変だったことはない。

 ただし、それくらいのヤツ。特に強みもないけど、めげない精神力がちょっと強いだけ。

 

 家の近くの駅について、スーパーへ寄った。週末。一週間のご褒美。ご褒美ゴハンが食べたいわけで。私の好きなカレーを食べてやりたい気分だ。つい先日までは近所のカレー屋さんに行っていたけれど、気づいてしまった。近所のスーパーに、スーパーと言っても、駅に併設しているショッピングモールのスーパーなわけで。そこに入っているお惣菜屋さんのテイクアウトのカレーがとても美味しいということは、なんて素敵なんだ。。

 サフランライスのパックと、八種類の中から選べるカレー。今日の気分はキーマカレー。ココナッツミルクも入っていて、日本のカレー、というよりは、アジアで食べる本場のカレーに近い感じ。これがうまいんだなー!

 テイクアウトしたカレーを手に、ついでにシュークリームも買って、いざ帰らんと家までの道を歩き出す。

 外は雨。

 でも手にはカレー。

 思わず帰る足もいつもより心なしか速くなる。



 なんだかカバンが揺れた気がして、携帯を取り出してみると、尚さんからLINEが入っていた。

「メシ食った?」

わお。これはゴハンのお誘いか。遅かった―。なおさん。私カレー買っちゃったよ。カバンを持ち直し、大事なカレーが濡れない様に、電話するべく尚さんの番号をタップした。

「もしもし。こんばんは。今電話大丈夫?」

「おう。今帰り?メシ食った?」

「買っちゃったんだよねー。カレー。」

「カレー?コンビニ?」

「ううん。あのXXの一階にあるお惣菜屋さんのカレー。」

「そんなとこあったっけ?」

「知らないでしょー。尚さん行かなそうだもんね。」

 私の家まであと少し。あの角を曲がったら家が見えてくる。」

「メシはまた今度だなー。」

「すみませんね。」

 そして私は家に到着。傘を肩に挟んで鍵を取り出し、鍵を開ける。

「家着いた。」

「おかえり。」

「ふふ。ただいま。」

 尚さんの声はほっとする。

 玄関に荷物をおいて、傘をたたむ。ついでに電話をスピーカーに切り替える。コートを脱いでいそいそと手を洗う。

「明日、波あるよね?」

「微妙じゃん?」

「えー。やっぱそうなのかな。」

 波情報サイトの予報では波は期待できないと言うけれど、波高さ予報だとそこそこありそうに見える。

「もう風がオフだったし、今も結構強めに入ってきてるから落ちそう。」

「尚さん今日入ったわけね?」

「うん。よかったよ。」

 サーファーってこれだから困るんだよね。自分が行けない時に行った人の波の話を聞いてなんか悔しくなっちゃうんだから。

「波なかったら明日遊ぼうよ。」

「おう。」

「じゃね。」

「ほーい。」

 私は電話を切って、カレーに取り掛かるべく、スプーンを持ってダイニングテーブルについた。


 いざ。


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