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妹が人類を滅ぼしかけていて、ヤバい。  作者: 束冴噺 -つかさしん-
第4章 やっぱり、人類は滅亡するしかないのですか?
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墜落

 ――ミサイルが、レイベンに直撃したんだ。


 機体がバランスを崩し、大きく傾く。

 リザが何かを叫んでいる。

 しかし日本語じゃない。英語だ。

 だから何を叫んでいるのかはわからない。

 一人の兵士がシートベルトを外した。

 そして嵐のようにGが荒れ狂う中、誰もいない操縦席へと向かう。

 AIの無人運転から、手動運転でこの場を乗り切ろうってところだろう。

 だが、そんな彼に対してリザは「ストップ!」と叫ぶ。


「ストップ! ストップ、ジャック!」


 リザは何度も叫ぶ。

 しかしジャックと呼ばれた兵士は言うことを聞かない。

 操縦席のフロントガラスからは、地上と共に《Q-TeK》の社屋が急速に接近している光景が覗ける。


 このままでは、レイベンは《Q-TeK》の社屋に突っ込んでしまう。


 それはいわば、墜落だ。

 ブラックホーク・ダウン。

 そうなれば、俺たちは死ぬのか?

 だとしたら、どうやって止める?

 止める術なんて、あるのか?

 あったとしても、考える時間も、実行する時間も、ない。

 俺は目を瞑る。

 覚悟を決める。

 そして――


 体を粉々にしてしまいそうなほどの激震。

 それに、

 金属が(ひしゃ)げる音、

 コンクリートが砕ける音、

 窓ガラスが突き破られる音、

 そして悲鳴、

 それら一切が一つの大きな塊となって、鼓膜だけでなく、全身にぶつかってくる。

 あまりにもおぞましい悪魔の雄叫びのように。

 それに俺の肉体と精神は耐えきれず、いつの間にか俺は気を失ってしまった。


 それから、どれくらい気を失っていただろうか?


 次に目を開けた時には、俺はめでたく地獄に招待された後だと感じた。

 でも五感から染み込んでくる現実感に、まだ俺は生きているのだとかろうじて理解する。

 目まいに加えて、鈍い痛みがランダムに全身のいたる所で駆ける。

 俺の前に座っていた2人の兵士と、隣に座っていた1人の兵士は、シートにぐったりと体を沈めている。

 でも、僅かながらに体が動いていることから、まだ生きているようだ。

 しかし、操縦席に向かったジャックと呼ばれていた兵士は、


「……ジ、ジーザス……」


 俺じゃない誰かがそう言った。

 それもそのはずだ。

 だってジャックは、フロントガラスを突き破った金属の太い杭によって、心臓を貫かれてしまっているからだ。

 きっと即死だろう。

 一方で、リザはどうだろうか?

 リザは俺の隣に座っている。

 でも体がピクリとも動かない。

 まさか、死んでるんじゃないだろうな?

 気絶しているだけだといいが。

 俺はシートベルトを外し、リザの前に立つ。

 そしてリザの首の後ろにあるスイッチを押す。

 ヘルメットは縦半分に割れ、そこからリザの顔が現れる。

 しかしそこにあったリザの顔は、目を閉じて、肌は青白かった。

 一瞬、まさかと思い俺の背筋に冷たいものが走る。

 だがかろうじて、彼女が息をしていることがわかった。


「おい! リザ! 目を覚ませ!」


 俺はリザの頬を叩きながら叫ぶ。


「パーティーはもう始まってるぞ! せっかくのパーティーを、寝て過ごす気が?」


 でも、リザに反応はない。

 いくら叫んでも、リザの瞼は固く閉じられたままだ。

 ったく、こんなんでよく軍人が勤まるもんだ。

 これだったら、猫でも入隊できるんじゃねーのか?

 まあいい。

 しばらくすれば、目を覚ますだろう。

 そして俺はもう一度、シートに体を預けようとした、そのときだった。


 突然鳴り響いた、爆発音。


 場所はレイベンの後方部にある、エンジンから。

 それだけだったら、まだいい。

 嫌なことは、続けて起こるものだ。

 エンジンが爆発したせいで、きっと燃料にも引火した。

 だから炎は一気に成長し、その炎は、俺たちのいる場所にまで侵入してくる。


「逃げろ!」


 俺は叫んだ。

 その他の兵士たちも、英語で同じ意味ことを叫んだ。「ラン!」と。

 俺はリザのシートベルトを外し、リザを持ち上げようとする。

 しかし強化外骨格を身に纏ったリザの重量は優に100キロを超えているだろう。

 貧弱な俺の筋肉だけでは、リザを持ち上げることができない。

 しかも最悪なことが起きる。

 さっきも言ったが、嫌なことは、続けて起こるものだ。


 一人の兵士が外に出るためのハッチを開こうとした。

 でもそのハッチは、壊れてしまったのか、全く開かないのだ。

 開閉レバーを操作しても、何の反応も示さない。

 つまり俺たちは、逃げることができない。

 炎が、すぐそこまで迫っているというのに。

 俺たちは、レイベンに閉じ込められてしまった。

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