【七、ノッポ】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
「この『ノッポ』って食材は実においしい! これは売れますよ、絶対に!」
焼いたノッポを両手でワシつかみにして食べているキーンを見て、私とルキァは声を出して笑った。
「残念だけど、持ち出し禁止だからここでしか食べられないわ。この惑星はまだ『開発不許可』になっているから」
「そうか、そうでしたねぇ。それは残念だなぁ」
フレッシュマンのやる気がほとばしる発言に、アクティが鋭く、しかし、やんわりと突っ込む。
「こうして食べていること自体もあまりよろしくないことだと思うけどねぇ」
それを聞いて、キーンはハッとして下を向いてしまった。
「大丈夫よ。ただでさえ辺境宇宙の、さらに辺境だから、食料の現地調達を『調査』と称して当局には黙認してもらっているの」
ルキァはコンガリと焼けたノッポを頬張りながら笑顔で答えた。
「ボクは『珍味担当』なので、社長に供する美味で変わった食材をお試しする係なんです。だから、経験を積む意味で同行を願ったというわけで。未開の惑星だからこそ、いろいろと味わってみたいんです」
目を輝かせて語るキーンに、私を含めた三人は微笑ましい顔をした。
「その目、思い出すなぁ。夢をこんこんと語ってアテクシをスカウトした時の親会社のCEOの目と同じだ。アテクシも奮起しなきゃいけませんねぇ」
アクティが懐かしそうに話す。私もキーンの目に懐かしさ以上のモノを感じて心が動いていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。