【六、男二人】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
エアロックまで来ると既に隔壁扉が開いていて、二人の男性がこちらに歩き出していた。
「アクティ、遅かったわね。ちょっと心配したわ」
「ご心配をおかけしてすみません、ルキァさん。ちょっとばかり、出発直前にいろいろとありましたのでね」
少し額の広い丸顔で背の低い小太りな男が親しそうにルキァに話しかけた。それから私に優しい笑顔を向けた。
「こちらが、かの有名な『オーリヒ・メ』さんですね。初めまして。お会いできて光栄です。評判はかねかねうかがっておりますよ。宇宙で唯一の『XYZ&T・ウィーヴィングマシン(四次元織り機)』を操って素晴らしいテキスタイル作品をお創りになっているアーティストだと。今回は草木染めの大家、ルキァさんに入門されたとか。ますます素晴らしい作品でわれわれを楽しませてくれるわけですね。アテクシ、微力ですけれどもオーリヒさんの作品制作をお手伝いいたしますので、よろしくお願いします」
「いえ、そんな……こちらこそよろしくです」
私は照れながら、アクティの握手に応じた。
「アクティ、こちらの方は?」
ルキァがアゴをしゃくると、長身で若い男は直立不動であいさつを始めた。
「ボ、ボクはスペースカウ・フード社の仕入れ部門の新人バイヤーで『キーン』と言います。こ、今回は食材調査ということで随行いたしました。ど、どうぞよろしくお願いします」
今の若者には珍しい、大きな声でハキハキと答える姿に私とルキァはクスクスと笑った。
「こちらこそよろしくね、キーン。それじゃあ早速、調査を開始してもらおうかしら? おいしい『ノッポ料理』をお召し上がりになる?」
「ノ、ノッポ?」
たじろぐキーンをよそに、ルキァとアクティはラウンジへと歩み始めた。私はボーッとしているキーンをしばらく眺めてから声をかけた。
「キーン、私たちも行きましょう」
「あ、は、はい」
慌てて歩きだしたキーンの後ろを歩きながら、私はつぶやいた。
「この『キーン』って人の印象に既視感があるわ……」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。