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【三、のろけ話】

 毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】

「オーリヒ、ちょっと休憩しましょう」

 ルキァは汗をタオルで拭いながら、私に声をかけた。私とルキァはノッポを刈り込んで広い場所を作っていた。歩き回って捕食をするネペンドンをそこで生け捕りにする罠を仕掛けるのだ。

「そうね。喉が渇いたわ」

 私とルキァは広くなった真ん中辺りに腰を下ろし、汗を拭いながらドリンクを口にした。

「もう一度尋ねるけど、木曜日の七夕は本当に『聖地・天の川』へ行かなくていいの?」

 ルキァの顔は真剣だった。

「……分かった、分かったわよ。説明するわね」

 私は仕方なく口を開いた。

「昨日、ケーンからメッセージが届いたの。『今まではどんなに遅くなっても君に会いに行っていたけど、今年はどうしても無理みたいなんだ』って。私はすぐにケーンに返信したわ。『私は大丈夫だから気にしなくていい』って。ルキァも知っている通り、ケーンは信じられないくらいに忙しい人だから、私と一年に一回会うってこと自体が難しいのよね」

 私の言葉にルキァはうなずく。

「確かに。スペースカウの肥育事業が当たって次々と食品全般の事業を拡大、今じゃ宇宙食品産業業界のナンバーワン、『ステーキ王』なんて揶揄されているヒトだからね。オーリヒの工房も銀河の辺境だけど、オーリヒが勉強しに来ているあたしの染色所はさらに奥地の宇宙辺境だもん、来るだけで相当な時間が掛かっちゃうわね」

「無理して会いに来てくれなくてもいいのよ。無理して来ないようにという思いと、かねがねやりたかった草木染めを習おうと決心して、ルキァに入門したの」

「なるほどね。……でも、オーリヒはそれでいいの? 本当は会いたいんでしょ?」

 ルキァの言葉に私はしばらく沈黙してしまった。

「……うん、ホントはケーンに会いたいの。ケーンの顔が見たいの。でも、私のためにケーンに迷惑を掛けたくないの。わがままを言いたくないの。それだけなのよ。……でも、決して良い子ぶっているわけじゃなくて、その、えーと、何て言うのかな……」

 戸惑う私にルキァがほほ笑みながら助けてくれた。

「それが『オーリヒの愛情表現』ってわけだ」

「やだ、もう、はっきり言っちゃダメよ!」

 赤くなって顔を隠す私にあきれたルキァがつぶやく。

「いいなぁ、うらやましいなぁ。あたしも恋人が欲しくなっちゃったよ」

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。


【七夕一人企画の宣伝】

 毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。

 今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。

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