【二十三、エンドロール】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
私とルキァが惑星ケケモモからルキァの染色所に引き揚げてから一カ月半後、ルキァの染色所を訪ねてきた一人の若者がいた。
「こんにちは。ボクの姉さんはいますか?」
若者を見たルキァは、その若者にあいさつを返すことも忘れて一目散に私がいる機織り機のところに走ってきた。
「オ、オ、オ、オーリヒ! ビ、ビックリしちゃ、ダ、ダ、ダメよ!」
舌が回らないルキァをたしなめようと、私は機織り機から後ろを振り返った。
「何を騒いでいるの、ルキァ? どうしたとい……」
私も言葉を失ってしまった。
「姉さん、元気だった?」
若者は、ルキァのあとを追って私の機織り機までついて来ていたのだ。
「ケーン兄さんに蘇生してもらったんだけどさ、『オーリヒとイチャイチャするな! おまえは今日からボクの弟だ!』って言われちゃって。だから、オーリヒ、あなたのことはボクの姉さんとなりましたから。『オーリヒの手伝いは何でもするんだぞ』とケーン兄さんに言われているので、ボクは何でもしますよ。……あ、ルキァさん、今日からここでお世話になりたいのですが、よろしいですか? あ、そうですか。それではよろしくお願いしまーす!」
頭を下げるキーンに、ルキァはプルプルと首をタテに振り続けていた。
「キーン! キーンなの?」
私は、キーンに思わず抱きついてしまった。
「大丈夫だったの?」
私の問いに、キーンは優しく答えてくれた。
「捕獣袋に入れられる寸前にAIユニットを物理的に遮断して、ボディ・コントロールを『自閉モード』に切り替えたんだ。だから、それからどうなったか、その後の経過は記録データにないので、ボクには全く分からない。蘇生された瞬間からの記録データしかないんだ。体内にある、かなりの数の機器に不具合が生じていたから、ほとんどの部品を交換したのだけれど、ただ、ケーン兄さんがボクに仕掛けていた『エマージェンシー・モード』が反応したことは、ボディ・コントロールにデータとして残っていたけどね」
「よかったぁ。生きてたのね。ホントによかった!」
強く抱きしめる私に、キーンは困り果てていた。
「いや、そうじゃなくて……姉さんはちっとも変わっていないんだね。ボクの話を全く聞いていないんだから」
ため口になったキーンが愛おしくてならない私だった。
六カ月後、ケーン・ギュは『全宇宙ベストドレッサー賞』を受賞した。
受賞した理由である、その服は『カラフルグラヴィトン・マジカルレインボー』で複雑な七色に染め上げた糸を『XYZ&T・ウィーヴィングマシン』で時間経過さえも織り上げた立体布地にして、それを3Dスーツに仕立てたものだった。鮮やかな色合いの中にすがすがしい愛の物語が織り込まれていて、それを目にした多くの人々の心に感動を与えたのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。




