【二、惑星ケケモモ】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
「今週は七夕よ?」
「うん、分かっているわ」
「ホントに大丈夫なの、オーリヒ?」
「うれしいわ、ルキァがそこまで心配してくれるなんて」
ルキァは疑いのまなざしで私をのぞき込む。けれども、私は表情を変えないままで、辺り一面に群生する「ノッポ」という生物の脚をナタでスパッと切る。動物のようであり植物のようである「ノッポ」は、脚を切られるとその場で動かなくなってバタンと倒れた。
私とルキァは、「ケケモモ」という惑星の叢林を歩いていた。林といっても植物相のそれではない。そこにいる植物や生物は、一見しただけでは分からないモノたちだった。惑星ケケモモは常春惑星と呼ばれていて、生き物の多様化が甚だしく、半分動物で半分植物のような生き物が多い。だが、その感覚はあくまでも地球の生物分類を当てはめるとそうなるだけで、銀河間惑星生物として動物植物混合形態はごく普通の生物感覚ではある。「ノッポ」はその代表的な存在だ。一見すると地球の「木」という植物に似ているが、表面は鈍色の金属光沢で根っこに似た脚を持ち、危険が迫ると走って逃げていく。ただし、自分よりも小さくて動くものに対しては採餌行動を起こし、襲いかかる習性がある。だが、一メートル以内に近づく前に刀などで脚を切ってしまうと、まるで観念したようにその場に倒れて、そのまま死んでしまう。実に奇妙奇天烈な生き物である。
そんな惑星ケケモモに私とルキァがやってきたのは『カラフルグラヴィトン・マジカルレインボー』という染料を採集するためだ。それは大型肉食植物「ネペンドン」の肝油を精製したモノで、ほんのりと黄色味を帯びた透明で粘性が高い液体の染料だ。この染料に染めたいものを浸してから干すだけ色が付く。しかもその染め上げは七色に着色する。たった一種類の染料で七色に着色するのだ。この染料は重力波を検知して、重力波の濃いところは赤に、重力波の薄いところでは紫に染まる。だから、地球上でTシャツをこの染料で染めてハンガーに干した場合、肩が紫色でそこから下に青色、緑色、黄色、オレンジ色、朱色となり、Tシャツの裾が赤色に染まるのだ。
この不思議な染料を求めて、私とルキァは行く手を阻むノッポを切り倒しつつ惑星ケケモモの叢林を分け入り、奥地へと進んでいった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。