【十八、レスキュー】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
飛ばされた勢いで地面に叩きつけられ、私は意識がもうろうとしていたけれども、何が起こったのかはおおよそ把握できていた。キーンは力ずくで私をその場から押し出した。その反動でその場に立ち止まってしまったために、キーンは身代わりとなって捕獣袋に収納されてしまったのだ。キーンが入っているだろう、大きくふくらんだ捕獣袋を見るとミッチリとすき間なく触手葉がフタをしていて、簡単にこじ開けらそうにないところがとても憎い。
「まずい状況よ! 奴らの捕獣袋の中は『王水』並みの消化液がタップリと入っているわ。ヒト一人くらいはあっという間に溶かされちゃうわよ!」
そう叫んだルキァは、キーンがのみ込まれた捕獣袋を追っかけていた。それに続いてアクティの声がヘッドセットから響いた。
「ブタドックリ1号を手動に切り替えてレスキューを開始します!」
赤色のブタドックリも、ふくらんだ捕獣袋を追いかけながら背中からロボットアームを出した。捕獣袋に追従しながら、アーム先端にあるロボットハンドが捕獣袋のツル部分をつかむ。ロボットハンドの横に付いているカッターでツルを切断しようとするが、角度が悪くてツルをうまく切断できない。捕獣袋をつかんだままのロボットアームと共に赤色のブタドックリが、捕獣袋を振り回すネペンドンに引きずられている。
そこに追いついたルキァが、脚のシースからブッシュナイフを取り出し、ロボットハンドがつかんでいるツルの部分に投げた。
「スパーン!」
ブッシュナイフはみごとにツルを切断した。ツルが切断されたことで急に荷重がかかったロボットアームは、その角度をいったん沈み込ませたがフィードバック制御のおかげで元の位置に戻る。ふくらんだ捕獣袋を持ったまま、ブタドックリは速度を落として反転、こちらへと向きを変えてゆっくりと進み始めた。
捕獣袋の確保を見届けたアクティは、すぐに次の対策をヘッドセットから通知してきた。
「危険物の排除と安全な場所を確保するため、ケブラーワイヤーを解除して二体のネペンドンを解き放ちます。それに先行して、ブタドックリ二号、三号、五号の『エセ・ヒッグスマシン』を起動して誘導プログラムをAIモードで実行、ネペンドンを罠場の外へと連れ出します。安全圏外へネペンドンを誘導した後の帰投命令を書き加えました」
ロケットアンカーのワイヤー固定フックが解除され、ケブラーワイヤーから解き放たれた二体のネペンドンはひと回り大きくなった感じがした。そして、青色と黄色と緑色のブタドックリを追いかけて、あっという間に罠場から去っていった。
「オーリヒ、大丈夫?」
駆け寄ってきたルキァにそう声をかけられるまで、私は一部始終を呆然と見ていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。




