【十七、アクシデント】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
「ハッ、ハッ、ハッ……よいしょ、っと」
ニードルホースショットガンを腰にぶら下げて、器用にツルを登っていくルキァ。ショットガンの射程は地上からでも十分なのだけれども、ルキァは自分のやり方で採集をするつもりのようだった。ツルに絡まれそうになると、脚に取り付けたシースからブッシュナイフを取り出してなぎ払った。その振る舞いは、樹上でダンスを踊っているかのように軽やかで無駄のない美しい動きだった。
ルキァは、あっという間にネペンドンの最上部である『節』の部分まで到達した。そして右手にナイフを持ってツルをなぎ払いつつ、腰だめに構えたショットガンを左手で操作、至近距離でニードルを打ち込んだ。ほとんどホースは伸びないままで染料を採集した。
「このニードルホースショットガンは便利だ。手が汚れなくて済むから。あたしの、このやり方ならホースは不必要だわねぇ」
鼻歌のルキァだったが、捕獣袋と触手葉の接近を察知、ショットガンのリリースボタンを押して採集を解除、ツルを駆け降りる。その途中で小さい方のネペンドンに飛び移り、そちら側の『節』に接近する。難なく『節』に接近して染料を採集した。
「タンクが腹いっぱいになったよぉ」
ルキァはそう叫びながら、ツルを上手に使ってスルスルと滑り降りてきた。
楽しそうなルキァを見ていてうらやましくなっちゃった。私も少しだけでいいから採集してみたい。無意識のうちに私は走り出していた。
「ちょっと待って! そっちに行っては駄目です、オーリヒさん!」
私の近くには常にキーンがいてガードしてくれていたのだけど、私はキーンの制止を振り切って走り出したのだ。上の『節』を見ながら、足場が良いところを見つけてニードルホースショットガンを構えて狙いをつけた。
「オーリヒさん、その場所は奴らの思うツボです! そこで止まっては駄目です!」
ヘッドセットからアクティの警告が聞こえた。それに続いて、キーンの声のようだけどキーンではない何者かの声が私の頭に響いた。
「オーリヒ、後ろに気をつけろ!」
私はその声を感じ取って後ろを振り返る。振り返ってハッとした。後ろから私を迫っていたモノは、捕獣袋と触手葉だった。
「きゃー!」
それを見た私は、足がすくんで悲鳴しか出なかった。次の瞬間、私は誰かに横から押されて右側に二メートルほど飛ばされていた。それと同時にヘッドセットに響いた言葉は、ルキァもアクティも同じだった。
「キーン!」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。




