【十六、ニードルホース】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
ブタドックリにキリキリ舞いさせられたネペンドンは、捕獣袋と触手葉を除いたツルのほとんどが絡まったり焼かれたりして短くなっていた。
「ブタドックリの『エセ・ヒッグスマシン』を停止させます。節にニードルホースを打ち込むと、ネペンドンの攻撃を回避するための移動範囲が制限されますので。その代わりに皆様方がネペンドンの攻撃対象になる可能性が高くなりますので、ご注意を」
アクティのアナウンス後、ブタドックリに対する、ネペンドンの攻撃が明らかに減り、それを待っていたかのように四体のブタドックリは一斉に『節』に向かってニードルホースを発射した。四本のニードルはいずれも大きめの節に命中し、ホースが不用意に揺れて、ホースの中を液体が流れていることが見て分かった。その間、ブタドックリは左右前後にちょこまかと動いてネペンドンの攻撃を避けていた。
数分後、節はかなり小さくなり、干したり漬けたりした後の『梅の実』のようになってしまった。ホースの中の流量が減ったこと検知したブタドックリはすばやく後退して『節』からニードルを抜いた。同時に徳利口からもホースが外れた。
「次のニードルホースを用意します。四秒の時間をください」
「え? ホースは捨てちゃうの?」
アクティのアナウンスの後、私の素朴な疑問にキーンが説明してくれた。
「ニードルホースは打ち込む前は短く収められていて、撃ち出すと伸びる仕組みになっているのですが、伸びたホースはそれを短くして収納する機構を持っていないのです。そういった機構を付けることもできますが、装置が複雑になり、重量も増します。そうなると、機動性が削がれる上にホースの収納時間が必要になり、ネペンドンに攻撃される可能性が高くなります。ですから、ホースを外して次のホースを装填するまでの時間は四秒。これがわれわれの戦略なのです」
キーンの説明を聞いている間に、四体のブタドックリは二つ目の節にニードルホースを打ち込み、染料の採集を終えようとしていた。
「そろそろ、あたしたちも採集を始めますか」
ルキァはニードルホースショットガンを構えて走り出していた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。




