イジメ
はい、相変わらずの少なさです
次の日、登校するとそこには驚きの光景が……いや、ある意味必然とも言える光景が広がっていた。
「おい、しんじつさんよ!昨日はどうだったんだ?お前の真実を見せちゃったのか?」
「おいマジでか、告白されて当日にとかどんだけだよwww」
「ねぇ聞いた?昨日あの2人ホテルに入って行ったのを見たって……」
「うわ、サイテー生徒会の癖にねー」
「ホントサイテー、消えればいいのに……」
いや、それにしてもコレは酷い……たったひと晩でここまでイジメが悪化するなんて、何か原因があるはずだ……あれか。
「お?しんじつさん泣いてるの?真実バラされちゃって泣いてるの?」
「違う!私達は昨日ホテルになんか行ってない!」
「証拠はあんのかよ!テメーが嘘ついてねぇなんて証拠がよー!」
松平隆、いつも人を見下し常に上から目線で圧力をかけてくる奴だ。
どうやら俺がクラスの上位カーストから抜けた隙にあいつが上のカーストに上がったようだ。
女性の涙は武器だなんて言うけども、カーストの差は涙だけでは埋まらない。
ただ……俺が見ててイラついてくるな。
そんな事で、泣くんじゃねえよ。
お前は真実だけを信じてきたのに、そんなちっぽけな嘘に泣かされてるんじゃねぇ。
真実が嘘に負けるなんてよくある話たけど、嘘に知り合いが泣かされてるのはやっぱりあんまりいい気分じゃない。
気が付いたらクラスの真ん中、如月の席まで来ていた。
「お?彼氏様のお出ましか?」
「ほらほら彼女さん泣いちゃったよ?慰めないの?」「ほら、庇いに来たわよ、気持ち悪ーい」「代わりに謝ったら?」「なんて?」
「気持ち悪くてごめんなさいとか?」「それウケる!」
醜いカエルの大合唱。
根も葉も花もない話に群がる愉快なアブラムシども。
本当にイライラする。
「うるせえ!!1回黙りやがれ!」
「あ?なんだよホントのこと言っただけだろ?」
「ホントのことなわけねえだろ!」
そう、ホントのことの筈がない。もし俺が俺の立場でなくてもそれは明白だ。
「証拠あんのかよ!」
「証拠はこの状況だ!こいつがこんな目にあってるのは、空気を読まず本当の事しか……「真実」しか言わなかったからだろ!」
「う……」
そう、いじめられるまで、どれだけ嫌がられても本当のことしか言わなかったような奴が今更になって嘘なんてつくはずない。
こんな少し考えればわかることを、考えずに蔑み嘲り、馬鹿にした。
正直者はバカを見るけど、馬鹿にされるような事じゃない。自分の意思を強く持ち続けてなければ出来ないことだから、皆誰しも嘘の悪さと同時に嘘の便利さを知ってしまって、どうしても使ってしまうものだから。
それを使わずに生きていけるまみが妬ましかったのだろう。それでもそれは、泣いてもやめてもらえないほどの、誰からも同情してもらえないほどの罪じゃないはずだ。
「お前らがイジメてる理由が、そのイジメが成り立たない理由なんだよ!」
「…………」
「わかったらこの件で虐めるのはもう止してくれ……、昨日はただ単に話をしてただけなんだ。 ほら、そろそろ授業も始まるしさ?」
「チッ、いきがりやがって……」
皆一斉に自分の席に戻っていく。
一安心して、俺も自分の席に戻ろうとすると、シャツの袖に軽い抵抗が。
「ありがと……」
涙ぐみながらの声だったけど、不思議と嫌悪感は感じなかった。
多分これでもイジメは無くならないだろう。
むしろ「なんだあいつ?調子のってない?」
となるだけである。
さて、当面の問題は……
「この机の落書きを消す事かな……」
おい!あと数分で先生来ちゃうよ!
油性マジックって消えたっけ!?
イジメは無くなりませんからねー
ネットいじめに学級イジメ、会社イジメまで、イジメの神でも作ったらお守り売れそうwww