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全員をまとめて王都までテレポート・・・何て出来る訳も無く、やむなく王都まで徒歩で向かう事にしました。
騎士達は気を使って馬を勧めてくれましたがワタクシは断固お断り致しました。
馬乗った事無いし・・・嫌っ、普通乗った事無いでしょ!
ワタクシの生まれは平民ですし魔法学校でも習わなかったし、就職して出世してからは馬車だし・・・つまりあんな大っきくてヒヒンとか言ってる生き物の背中乗るとかマジアリエナインデスケド。
あんな物に乗るくらいならクロちゃんの背中に乗った方がましです・・・それだ!
それってドラゴンライダーみたいな・・・オォ夢が広がります。
ワタクシは側で甘えているクロちゃんを伏せさせてクロちゃんの背中に乗っかって見ました。
クロちゃんクロちゃん、申し訳ありませんがワタクシを乗せて落とさない様に飛んで見て頂けますか。
クロちゃんは一声アンギャ〜と鳴き豪快に空へ羽ばたきました。
オォコレが空の景色ですか!
素晴らしいワタクシが感動の余りしがみつくのを忘れているとツルッと滑り真っ逆さまに落っこちてしまいました。
高度数十メートルからの落下、ワタクシ思わず、あっ死んだなと思ってしまいました。
勿論不死者ですから死にません。
でもスッゲー痛かったです
落下先でざわついてる騎士達の手前、痛がる訳にもいかず服の泥を落として何事もなかったかの様に歩き出しました。
クロちゃんは、ワタクシが落ちた事も気づかず楽しそうに何処かへ飛んでいってしまいました。
・・・さぁ気にせず行きましょう。
王都までは徒歩で10日程掛かりましたがこれと云って何事もなく穏やかな旅でした。
ワタクシは村長の背中におぶさりながら穏やかな旅を満喫しておりました。
何故におんぶして貰ってるか?
旅の初日に足に豆が出来たからですけどナニか・・・ずっとおんぶして貰いましたがナニか文句でもありますか・・・
雑念よ去れ!
久々の王都です!
さぁそこの丘を越えれば古里の美しい街並みが・・・"ウオォォォォ" "ギャ〜" "弓隊打て〜!"
・・・そこにあったのは敵からがっつり城攻めされちゃって陥落寸前の王都でした。
う〜ん、これは完全に負け戦ですね、取りあえず城壁は守れてるけど、何時まで持つやら・・・さて、帰るか、ワタクシがポツリと言うとそれまで固まっていたエッグ君以下騎士団の皆さんがワタクシにしがみついてきました。
"ベール様〜何を言ってるんですか!"
"今まさに王国が滅びようとしている時に!"
"先代の国王陛下との盟約があるって言ってたじゃないですか〜"
"街には私の家族が〜!"
"ベール様〜!"
"助けて〜!"
あ〜うるさい!
皆してしがみつきながら怒鳴らないで、大きい声って苦手なんです。
それに助けてって言われてもどうすりゃ良いのよ?
取りあえず困った時には相談を、という事で村長どう思う?
ワタクシが尋ねた所、ベール様のお望みのままに、敵を殺せと言われるならば皆殺しにして見せます。
おうっ!
さらりと言ってのける辺りが頼もしげではあるが村人が居なくなるのは困る。主にワタクシの生活の為に。
う〜ん、ワタクシが悩んでいると上空から"アンギャ〜"と言う叫び声とともにクロちゃんが舞い降りて来ました。
やっと落とした事に気付いて追いかけて来たのでしょう。
あぁヨシヨシそんなに顔を舐めてはいけません首がもげます。
ふとワタクシが城の方を見ると城攻めが止まってます。それまでは喚声を上げていた敵も味方もおとなしくなって。
これはチャンスです。
ワタクシは現役時代に大勢に話し掛ける際に使った拡声魔術を唱えました。
あ〜テスッテス、ただいまマイクのテスト中、ゴホン、
え〜ワタクシはベールと申します。
ただいま城攻めをされている皆さんにお知らせ致します。
ただちにこの様な蛮行は止めて停戦されるよう強く望みます。
もしこの提案が受け入れられ無い場合、当方も力を持って対処せねばなりません。
皆さんの冷静な決断を望みます。
ワタクシは震えそうになる声を堪えて伝えました。
結果は敵の騎馬隊数千がワタクシに向かって突っ込んで来ました。
ワタクシの言い方に何か失礼な事があったのでしょうか?
せめて話し合いを設けるとか出来ないんでしょうか?
まったくこれだから狂信者どもは・・・
とにかく今は、考えてる時間は無さそうです。
ワタクシは今自分が使える最大の魔術を唱えました。
死霊召喚!
ワタクシが魔術を唱えると地面を割って数千数万の触手が地面より這い出しました。
アレ?ゾンビかスケルトンが出る予定なのですが・・・
一本一本の触手は黒々とした腕のようでこちらに向かってきた騎馬隊に絡みつきました。
絡みつかれた騎馬隊の皆さんがみるみる内にミイラ化してしまいました。
そして触手の攻撃はそれだけでは終わらない模様です。
ミイラと化した騎馬隊が向きを代えて敵陣に襲い掛かってます。
うわ〜グロい、敵陣は阿鼻叫喚の地獄図です。
触手に襲われた者はミイラに、そして助けようとする者はミイラ化した仲間に喰われてる、正直見ていて気持ちが悪くなって来ました。
エッグ君がワタクシに何か言いたそうですが断固無視です。
どうせナニを召喚したかとか聞くんでしょ・・・ワタクシにだって分かりません、とにかくヤバイ者である事だけは確かです。
どれくらいたったでしょう、恐らく30分程たったでしょうか。見事に敵は全滅しました。
眼下に広がるのはワタクシに膝まづくミイラの群れと、ピースサインをする触手の群れ、取りあえずワタクシに危害を加える積りは無い様です。
え〜触手さんは大変ご苦労様でした。そうですね、取りあえず今日の所は用事もありませんので此でお帰り頂いて結構です。お疲れ様でした。
ワタクシがおっかなびっくり言うと触手さん達は親指を立てながら地面に消えて行きました。
後は大量のミイラ達ですが、
皆さんは神聖王国お帰り下さい。
もうこの国には来ないように、良いですね!
ワタクシが命令するとミイラの皆さんは大人しく西に去って行きました。
こうして王国の危機は回避されたのでした。