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TとUの理不尽クイズ

今日の昼食は?/剣道の試合のポジション<問題編>

作者: フィーカス

 今年の夏はとても暑くなりそうだ。七月からすでに四十度に近い気温になるところもあると、ニュースでは熱中症対策を呼び掛けている。

 時刻は十一時半。スーツ姿のTは、少し早いが会社の休憩時間に近くの喫茶店でお茶をしていた。涼しい店内に冷たいアイスコーヒー。のどを通すと、一気に火照った体を冷やしてくれる。この快感を味わえるなら、猛暑も悪くないか、とも思えた。

 チリンと入り口のベルが鳴ると、一人の男性客が入ってきた。

「よう、仕事のさぼりか?」

「なんだ、Uか。お前と一緒にするな」

「さぼってねえよ。私服が制服なのだ」

 UはそういうとおもむろにTの席の前に座り、アイスコーヒーを注文した。

 店内にはほとんど客がおらず、注文した品はすぐにテーブルに来た。

「あ、そうだ。今日俺昼飯がまだだったんだ。一緒に食って行こうかな」

 そういうと、Uはメニューを開いて眺めた。オムライスやピラフ、カレーと言った、喫茶店の定番メニューが並んでいる。

「昼食といえば、こんな話がある」

「またか。お前の話は、ろくなことが無いからな」

 Tはアイスコーヒーを一口飲むと、ゆっくりと口を開いた。

「テストで午前中だけ授業だった中学生が帰ってくると、テーブルの上に母親からのメッセージを書いた紙が置いてあったのだ。内容は、『昼は帰れなくて料理する暇がなかったから、これを食べてね』というものだったのだ」

「最近は共働きの人も多いからな。昼間に帰ってこれないところもあるのだろう。で、『これ』っていうのは」

「そう、それこそが問題なのだが」

 一度言葉を切り、Tはアイスコーヒーを口にした。

「そのメモには、『カレーレ』と書かれていたのだ」

「カレーレ? カレーの一種か?」

「それを聞いては意味がないぞ。これこそが問題なのだ。そのメモに書かれていた『カレーレ』とは一体何のことだろうか、というな」

「む、なるほど。そうなのか」

 そう言いながら店員を呼ぶと、Uはビーフカレーを注文した。よほど腹が減っていたらしい。

「しかし、『カレー』という言葉が見えているということはやはりカレーなのだろう」

「ならばどういうカレーだというのだ? それが分からねば答えにならないのだよ」

 Tは頬杖をついてUをじっとUのアイスコーヒーのコップを見ていた。

「カレー以外だったら何だろう。昼食だろ? ラーメン、チャーハン……。あるいは外食?」

「いや、それを聞かれてもだな」

「うむ……もう少しヒントは無いものか……」

 そう言ってUがアイスコーヒーを飲んでいると、注文していたビーフカレーがやってきた。カレーのスパイシーな香りが、Tの元にもやってくる。

「大体中学生で昼食って、料理好きでもなければ自分で作ろうとは……なるほど、そういうことか」

「何でカレーが来た瞬間にわかるんだよ」

「単にタイミングがそうだっただけだ。つまり、こういうことだろう」

 そういうと、Uは「カレーレ」の正体を話した。

「ふむ、正解だ。Uにしてはあっさり解いたな」

「普段解けないような言い方するなよ、まったく」

 Uは答えが分かったうれしさをそがれながら、ビーフカレーを口にした。

「なんか、お前がカレー食ってるのが腹立つから、もう一問行くぞ」

 Tがカレーを食べているUに言うと、Uは合間に飲んでいたお冷を吹き出しそうになった。

「ちょ、何で連続で問題出すんだよ」

「ん、なんか、そういう気分だから」

「まったく、勝手なことを」

 Uは「勝手にしろ」と言いながら、カレーをむしゃむしゃと食べ続けた。


「さっきの中学生は実は剣道部の部員だったのだが、昼から部活動に行くことになっていたのだ。昼からの部活動というのが、次の大会のメンバー発表だという」

「なんだ、さっきの話の続きかよ」

「練習を終えた後、キャプテンと顧問からメンバー発表があった。先鋒、次鋒、中堅、副将、大将とあるわけだがひとまず、出場メンバー五人と、補欠メンバー二人が呼ばれた。補欠メンバーは、出場メンバーが欠場となった場合に繰り上げで出場するメンバーなのだが、残った五人の出場メンバーには、どのポジションで出場するかは、何故か暗号で伝えられたのだ」

「何で暗号なんだよ。そのままポジション連絡しろよ、重要な大会なんだから」

 やたら文句を言いながらカレーを食べ続けるUに、Tはため息をついてアイスコーヒーを一口飲んだ。

「そこを気にしたらなぞなぞにならないだろう。まあ、何か暗号で伝えなければいけない理由があったんだろう。そこらへんは気にしないで置いてもらおう」

「いや、気になるから」

「気にするな。特に意味はない。しいて言うなら暗号好きの顧問だったんだろう。と言うことで続けるぞ」

「なんか、無理やりは好きくないのだが」

 不満を口にしながら、Uは「それで?」と続けさせた。

「顧問はそのうちの二人、Aさんには『繰り返して言えばわかる』とだけ言い、Bさんには『明日の昼十二時になればわかるだろう』と言ったのだ。さて、AさんとBさんのポジションは、一体どこなのだろうか?」

 Tが問題を言い終わると、Uはカレーを食べる手を止め、「ふむ」と少しだけ考え込んだ。

「Aさんのほうはわかりやすいな。何しろ、問題文そのままだからな」

「おい、読者より先に答えが分かってどうする。これじゃあ、答えが分からない読者に申し訳が立たないだろ」

「誰だよ読者って」

 Uはそういうと、カレーをスプーン一杯口に運ぶ。Tはアイスコーヒーを一気に飲み上げると、店員を呼んでお代わりを注文した。

「しかし、Bさんの方はわからんな。えっと、選択肢は何だっけ」

「先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の五つだ」

「この中に、明日の昼十二時に関連する言葉なんてあるのか?」

 Uの言葉を聞き、Tはにやりとする。

「フフフ、言葉だけでは考えてはダメだよ名探偵君。想像力と実体験が、解答への鍵だよ」

「クイズは得意だが、名探偵ではないぞ。しかし、想像力や実体験と言ってもだなぁ……」

「そうだな、もうすぐ十二時だから、Uも十二時になったらわかるんじゃないか?」

 Tは時計を見ながらUに言った。時刻は十一時四十五分。Tもそろそろ昼食の時間か、とメニューを取り出した。

「十二時になったら、ねえ。十二時にこの喫茶店で何かあったっけ?」

「いや、ここでは何もないが……。まあ、十二時になってからのお楽しみだよ。それまでに答えが出ればいいけどね」

 ちょうど、店員がお代わりのアイスコーヒーを持ってくると、同じタイミングでTはオムライスを注文した。

 Uはしばらく考えていたが、一向に考えがまとまらない模様だ。

 そうこうしているうちに、時間だけが過ぎていく。Tはお代わりのアイスコーヒーを飲みながら、カレーの手を止めているUの様子をじっと見ていた。が、やはりまだわかる気配がない。

「くそっ、全然わからん。一体十二時に何があるというのだ。」

 Uは悔しがりながら、やけ食いのようにカレーをがつがつと食べ始めた。途中、ライスがのどに詰まったのか、げほげほとせき込んだ。

「おっと、降参かな。もっとも、時間が来ればお前もわかるかもしれないから、十二時までは考えてみてくれ」

 Tが言い終わったと同時に、注文していたオムライスがやってきた。TはUが悔しがる顔を見ながら、オムライスをスプーンですくって口にした。



「さて、今回は二問ほど問題を出させてもらったが、読者の皆さんはわかっただろうか。それではここで、今回の問題をまとめておこう」


<今日の昼食は?>

「昼食を採るために自宅に帰ってきた中学生が見つけたメモには、母から『昼ごはんはこれを食べてくれ』と書かれたメモと、その下には『カレーレ』の文字。

 今回の問題は、この『カレーレ』とは何を示すのかを、ずばり答えていただきたい。

 料理をよくする人だと、いろいろと考えてしまってすぐには出ないかもしれないが、今の中学生の立場に立ってもらえればわかりやすいだろう。あれこれ考えているうちに、ふと『ああ、そういうことか』と答えにたどり着くかもしれない」


<剣道の試合のポジション>

「剣道の部活で発表された、次の試合のポジション。顧問は、Aさんには「繰り返して言えばわかる」とだけ言い、Bさんには「明日の昼十二時になればわかるだろう」と言った。AさんとBさんは、一体どのポジションなのだろうか。

 剣道は先鋒、次鋒、中堅、副将、大将が決められ、それぞれ一対一で対戦をする。そのポジションがどこなのかを答えていただきたい。

 Aさんについては、Uの言う通り、文章通りの意味を考えてもらえば、すぐに答えにたどり着くだろう。その文章が意味する言葉を、いろいろ考えてもらいたい。

 Bさんについては、文章だけでなく、一体何が起こるのかをいろいろ想像してもらいたい。現在ではそのような習慣がないかもしれないので想像がつかないかもしれない。Bさんの学校ではそういう習慣があったのだが、一体どんな習慣だったのかを想像していただこう」

 ひさびさ変ななぞなぞができたので、ひさびさにTとUが出てくるなぞなぞ小説を書いてみました。

 答えが分かった方は感想かメッセージで残してもらえれば、と思います。

 解答編は、数日後に作りますので。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。 かなり前からワクワクしながら読まさせて頂いております、クイズ大好き人間こと、るりです。 カレーレ ……カレーをレンジで温めろ、みたいな感じでしょうか。 正直なところ、全くわ…
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