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Aqua tale  作者: 仁木 真尋
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プロローグ

物書き初心者ですが、少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。

 透き通るような美しい声があたりに響く。



『あるところに、年若き美しい女王様と彼女を支える一人の騎士がいました』と。



 そう。



 これは、イーリスに伝わる昔々の物語。





+++



「セレス様、セレス様。大精霊セレス様」



少女特有の、舌っ足らずの高い声が私に響く。



「今日はね、お父様とおじさまとカノンと一緒に北の丘まで遠乗りに行くの!」



喜々として話す少女の様子に、私の口元が思わずゆるむ。



雪の降りしきるこの季節だというのに、まるでここだけ春が来たかのようだ。



けれど次の瞬間、少女の表情に影がさす。



「最近ね、おじさまとお父様疲れているみたいなの。だから、本当は、今日の遠乗りやめようかと思ったの。遊んでもらえないのは寂しいけれど、お父様たちに無理して欲しくはないの。」



優しい子だ。自分のことよりも、他の人を大切にすることを知っている。



それゆえ、その瞳が曇るのは悲しい。



「だからね、だからね!今日、おじさまが行こうって言ってくれて、本当に嬉しかったの!」



ぱっと、唐突と言えるほどのタイミングで、少女の顔が輝く。



本当に嬉しいのであろう。



期待に輝く瞳が眩しく、この瞳がいずれ涙で曇るであろうことが、とても悲しいことのように感じられた。



と。



ふと、口をついて出そうになった言葉を飲み込む。



私は何を言う気だったのだろうか。



今、少女が事実を知ったところで何になる。



その瞳が曇るのが、早くなるだけではないか。



私は口をつぐんだ。



知らなくてもいいことだ。



知らない方がいいことだ。



私の葛藤の間に、少女は彼女の父に呼ばれ、嬉しそうに駆けていった。



――――願わくば、その瞳の輝きが一分でも、一秒でも長からん事を。






.


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