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三男坊、異世界人に出会う

森の中を四時間ほど歩いただろうか、既に日は落ち、辺りはすっかり暗くなっている。

体力的には問題無いが、如何せん周りが見えない。

土地勘のないこの森で、暗闇から獣に襲われでもしたら、流石に困る。

いくら叩いて良し、突いて良し、斬って良しの万能武器バットを持っているからと言って無敵という訳ではないのだ。

丁度良くもたれかかっても背中が痛く無さそうな大樹をみつける、今日はここで休憩にしよう。

近くに獣の匂いはしないし、近づいてくれば音でわかるだろう。

俺は辺りを警戒しながら眠りに付いた。



 

夜明けと共に目が覚める、この世界は春か夏なのだろうか、夜冷えはせず森の涼しさが心地よい。

さて、今日も真っ直ぐ歩こうか。


小腹がすいたので道中の木々に生っている実を毒見がてら少しずつ食べて歩く。

野生の実特有の渋みが口の中に広がりそのあとから甘酸っぱさがやってくる。

正直美味しくはないが舌の痺れも腹痛もない、この辺りの実には毒はないようだ、しばらくの間の主食になるかも知れない、しっかりと覚えておこう。



とりあえず腹は膨れたがやはり食べ盛りの男子高校生としてはガッツリと肉なんかを食べたい、魚も捨てがたいがやはり肉だ、塊のステーキなんか素敵ではないか、歯ごたえのある肉にガブリと噛みつき食い千切る、最高だ、だいたい魚は若い俺にはまだ早いのだ、世の中年も年をとると肉より魚が食べたくなる、などと言っているではないか、つまり肉=若者の食べ物、魚=年寄りの食べ物なのだ。

と文字通り肉欲まみれの思考で歩く俺の耳に微かだがせせらぎの音が聞こえる。

心地よい空気の中せせらぎの心地よい音を聞くと心が洗われるようだ、心がきれいになると肉より魚が食べたくなる、DNAだとかナンダとか、頭に良い成分がたくさん詰まっているのだ、肉食系や草食系だなんだと言われているが魚食系とは言われない、世の中とは常に新しい価値観を求めており俺は魚食系男子の先駆けとなるのだ、つまり何が言いたいかというとは魚食べたい、魚サイコー。


当初の真っ直ぐ歩く、という指針を忘れ森中を突き進む、徐々に水の流れる音がする、この音だと中々大きな川のようだ少なくとも魚の一匹や

二匹はいるだろう、アユなら塩焼き、マスならムニエルだ、刺身も食べたい気がするが川魚は体内に寄生虫が多数生息しているので生で食べる

ことが出来ないのだ。

肉欲改め魚欲に支配された俺が森を抜けた先には

川底まで見えるほど透き通った川と多数の魚群、そして水浴びをする全裸の異世界人であった。



美というものを体現したかのような無駄の無い引き締まった体、水に濡れ輝く金糸の様な髪

何処までも吸い込まれていきそうな深い青色の瞳、唯一つ惜しむべきは……

それが男であるということだ。


「えっと、山賊か何かなのかな、金目の物は持ってないんだけれど」

どうやら言葉は通じるようだ、無防備に水浴びをしているということは近くに集落があるということだろう。

計らずもすべきことその一とその二を達成してしまったようだ、ユーモアは知らん。

「あのー、聞こえてますか?」

これはいけない、話しかけられたのを無視しては紳士の名折れ、円滑なコミュニケーションを図らねば。

「いや、これは失礼、道に迷って森を抜けた所であなたに出会いまして、少し驚いていたんですよ、ところでこの川の魚は食べられますかな、

森の中の果実しか食べておらず、恥ずかしながら空腹で」

礼儀正しく挨拶をしながらさりげなく自分の欲しい情報を聞き出す、これぞ紳士の話術、実に華麗だ。

「冒険者の方でしたか、御一人での森超えは大変でしたでしょう、これから朝食の分の魚を取るところです、冒険者さんの分も取りますので

我が家でご一緒しませんか」

とても有りがたい申し出ではあるが、すでに魚を食べる口になっていた俺には少しの間も惜しい。

そこでバットを大上段に振りかぶり、水面に叩きつける

五メートル程水しぶきが上がり、雨となって降り注ぐ、二、四、六、八、十 運よく十一匹の魚が水面に浮いてきた。

「お誘い有難う御座います、魚はこれで足りますかね」

これからの事は、とりあえず朝食を頂いてから考えよう。

バットとはすばらしいものなのです、

かの有名な最後の幻想7の雲のユニーク武器はバットでした

私を暗黒魔道に引き込んだ軽い小説のヒロインも呪文を唱えれば殴ったものが元通りになる不思議なバットを持っていました

世界のイチローの活躍を支えているのも何を隠そうバットなのです

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