法的、医学的な考証は慎重にすべきである
法律的、医学的な話題を扱う場合は、「白い巨塔」ほどの本格性でなくても、十分すぎるほど慎重であるべきです。
これは表現の自由の問題ではなく、出版社側のリスク管理の問題だからです。
とくに医学に関しては、描写が不正確だった場合、読者の健康被害につながる可能性があります。
誤った治療法、根拠のない症状の説明、実在する病名の安易な使用――これらは「小説だから」で済まされないことがあります。
出版社が最も嫌うのは、批評や炎上ではありません。
実害が出ることです。
健康被害や誤解を招く表現は、訴訟や回収に直結する可能性があり、文学的評価とは無関係に、作品そのものが拒否されます。
法律分野も同様です。
制度や手続きの描写が雑だと、専門知識のある選者や編集者にはすぐ分かります。
「調べていない」「雰囲気で書いている」と判断された時点で、作品全体の信頼性が落ちます。
文学賞では、「専門的であるかどうか」よりも、自分の書いていることの危険性を自覚しているかが見られます。
踏み込むなら徹底的に調べる。
調べきれないなら、扱わない、もしくは描写を限定する。
この判断ができない作品は、評価以前にリスクとして避けられます。
「白い巨塔」ほどの取材量は求められません。
しかし、「小説だから適当でいい」という姿勢は、今の出版環境では通用しません。
法律や医学を扱うということは、物語だけでなく、読者の現実に触れる可能性を引き受けることです。
それを理解していない作品は、文学賞狙いとしても、商業出版としても、極めて不利になります。




