初歩的な誤法は一次で落ちることがある
文学賞狙いの小説では、初歩的な誤法が原因で一次選考を通らないことがある。
たとえば「叔母に当たる母の妹」といった表現は、その典型である。
「叔母」はすでに続柄を確定させる言葉であり、「母の妹」と重ねる必要はない。
このような表現は、日本語として誤り、あるいは不自然と判断されやすい。
問題は意味が通じるかどうかではない。
選考の場で見られているのは、「書き手が日本語の基本的な運用を理解しているかどうか」である。
一次選考では、作品は大量に読まれる。
その中で、こうした誤法や冗長な言い回しが目に入ると、「文章に不安がある作家」として処理されやすい。
内容を評価する以前に、足切りの対象になることがある。
文学賞では、独創性や表現力以前に、最低限の言語的信頼が求められる。
親族関係、敬語、助詞、係り受けといった基礎でつまずいている作品は、厳しく見られる。
「細かいことだ」と思うかもしれない。
しかし一次選考においては、その細かい点こそが判断材料になる。
文学賞狙いの小説では、内容以前に、日本語として引っかからないことが前提条件になる。
「叔母に当たる母の妹」のような誤法は、その前提を崩しかねない。
「叔母に当たらない母の妹」はいない。
「母の妹に当たる叔母」が正しい。
「父の妹に当たる叔母」もいるからである。




