06.夕映えの温度
森から川辺へ出直し、どこまで増水しているか確かめた。
少しずつではあるが増えており、万が一あのまま目が覚めていなかったら…と思う。
ボロボロではあるが、良かったと感じながら今日は川から離れて歩くことを決めた。
食べ物を得てエネルギーになったのか、足取りが軽いような気がする。
それにしても、もう夕方になる頃だというのに相変わらず日が眩しい。
ジリジリと肌と傷を灼かれる熱さに耐えきれず、川の水で顔を洗う。
拾っておいた鏡の破片で、改めて自分の顔を見てみた。
半分開かない左目、少し乾いた傷、ほんのり薄くなったような気がするだけの痣。
まあ、ほとんど変わっていないという事だ。
ザブンと川に頭を突っ込み、ガシガシと掻く。
先ほど鹿に吹き飛ばされてこめかみを負傷していたことを忘れ、思わず傷口に爪を立ててしまう。
小さく呻き声をあげ、手を見るとしっかりと赤い血が付着していた。
水に濡れてヒヤリとしていた中に、ドロリと生暖かい感触がする。
自身で掻いたせいで再度出血をしてしまったようだ。
やってしまったと思いながら腕で拭い、次は優しく流した後に髪の水気を絞る。
気を取り直して、再度歩みを進めていく。
思いのほか強く掻いてしまったのか、歩きながらもこめかみから血が流れる感触がしていた。
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しばらく歩いていると、木の影から靴のようなものが見えた。
なんだと思いながら、ゆっくりと近づき様子を伺う。
座って休憩でもしている悪魔か?
いや、こんな所にいるわけがないよなと、グルグル考え頭の中が忙しい。
会話をしているのか、何かを食べているのか、警戒を強めながら角度を変える。
距離はあるがどうにか様子を確認できる位置まで移動をし、観察を始めた。
しかし、ひと目見てすぐにそれは仲間だと気がついた。
あの服装は間違いなく、我々の制服であったからだ。
やっと仲間を見つける事ができたと思ったが、喜びの前に悲しみの感情が溢れた。
2人の人が木にもたれかかっているが、完全に頭が落ちて力なくだらんとしている。
眠っているものとは違う、あれは…
隠れていた茂みから飛び出し、2人の元へ駆け寄る。
思うように身体が動かず、中々距離が縮まらない。
大した距離を走っていないのにハアハアと息が切れ、身体が痛い。
ジワジワ脂汗が滲んできているが、足を止まらず前へ前へと踏み出す。
やっとの思いで辿り着き、汗と血を腕で拭う。
膝をついて顔を覗き込んだ顔は真っ青で、身体を見ると1人は胸に大きな傷があり、もう1人は複数箇所の深い切り傷が見られた。
どちらも簡単な手当てはされていたようだが、持ち運べる物に限りがある中では完全に補えてはいない。
なぜこんな所に2人だけでいるのか、他の仲間はどこにいるのだと疑問が浮かぶが、今はそれどころじゃない。
涙が滲み2人がぼやけて揺れるが、そんな涙を指で払って向き直す。
帽子を取り、しっかりと顔を見る。
また滲む涙を堪え、どうか生きていてくれとゆっくりと手を取った。




