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03.生き延びた代償

川の水が流れる音が静かに響く中、ゆっくりと目を開けた。

目線の先には三日月が輝いている。

起き上がろうとするが、体中に痛みが走り力が入らない。

ゆっくりと目線だけを左に動かすと、自分の腕がチラリと見える。

月明かりに薄っすらと照らされている中、指先を動かすことを意識してみるが、やはり動かない。


「痛いな・・・」


そう痛みを声に出すも、消えるように小さい。

何があったんだとグルグルと頭を回転させるが、全身の痛みに思考が途切れてしまう。


グッと堪えて次は目線を右に移してみた時、なぜか月が見えた。

ぼやけて歪んだ月を不思議に感じて見つめると、自分でギュッと握りしめた剣に反射した月だったことに気が付く。

しかし、どうして自分は剣を持っているんだと不思議に思う。

痛みに思考を奪われながらも、目を閉じて考える。

そして、改めて剣にに浮かぶ月を見てハッとし、思い出した。




「悪魔・・・」




声にもなっていないような掠れた小さな声で口にした時、一気に悪魔との戦いの記憶が蘇った。


次に思い浮かんだことは、仲間は無事なのだろうか。

自分たちは勝つことができたのか、それとも負けてしまったのか。

部隊は撤退したのか、それとも未だに戦っているのか・・・

と、仲間や戦いの勝敗についてだった。


劣勢に追い込まれてしまったのなら、少なからず自分にも非があるだろう。

燃え盛る炎の中、戦うことに意識が奪われてしまい爆破に巻き込まれてしまったのだから。

ありえない失態だ。

任務を遂行することもできず、動けなくなるほどの重傷を負っただなんて・・・

もしや見捨てられてしまったのではないかと思ってしまう。


あの時、放火した協会の中に自ら飛び込んでしまった。

中で混乱している悪魔の方が殺しやすいと思ったからだ。

もう、自分の服が燃えて火傷ををしていても何も感じない程、目の前の悪魔を殺すことしか頭になかった。


教会の出口へ逃げる悪魔を追い詰め、切りかかろうと踏み込んだ瞬間に【キーーッ】と響く音が聞こえた。

そこでハッとして周囲の状況を確認しようとしたが、正気に戻るのが遅すぎた。

一気に瓦礫と一緒に吹き飛ばされた所で記憶が途切れている。


駆け巡る記憶を思い返し、フッと笑う。

その衝撃で、また体に痛みが突き抜けた。

グッと顔を歪ませ、ゆっくりと息を吐く。

その時、気を失っても剣を握り続けていた左手からも力が抜けていく。


このまま死ぬのだろうかと、本物の三日月を見つめて問う。

当たり前に答えが返ってくることはない。

勝手に突っ走った結果であることに後悔をしても、時間は戻らない。


どうか、死ぬのは自分だけであって仲間は無事でありますようにと、心の中で三日月に願う。

痛みや後悔の感情が混じった涙をスッと流し、自然と落ちていく瞼に身を任せ、そのまま目を閉じた。

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