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33.不意の余白埋めかねる③

初めての成功体験に興奮しながら仲間たちの元へ戻り、成果を分け与える。

人間の街とここでは距離があるから鮮度の面は多めに見てほしい所だ。


自分ももう少し成長すれば、人間を持ち帰ってその場でトドメを刺すこともできるようになるだろう。


力になろうと1人奮闘するも、仲間たちは中々に手厳しい。

子どもとは言えど、今のこの状況ではせっせと働かなければいけない。


「おい、ハロルド!暇なら教会に行ってこい!

資材になりそうな物なら何でも持って帰って来てくれ!」


「…は、はーい!

行って来ます!」


元気に返事はしたものの、僕だって完治してるわけじゃ無いんだよなぁ…

それなのに軽症だからってあっち行け!こっち行け!っていいように使うんだから…

僕だって意識失ってたの知ってるじゃんか…


ブツブツと小さく文句を言いながら森の中を歩いて、爆破された教会へ向かう。

なぜ悪魔はこんなにも気の強い者が多いのだろうか。

確かにあいつはリーダー格だが、もう少し気遣ってくれてもいいだろうに。

今更教会に行ったところで先に資材回収している仲間もいるし、人間だって何度か来てたみたいだし調べ尽くされているんじゃないか。

そんな不満を抱きながら、言われた通り進む。


「人使い…と言うか悪魔使い荒いと思いません?

せっかくこの前1人で人間狩って来たのに…」


「本当ですよ。

それに、教会なんてもう何もないんじゃないかと思いますしね。」


兵士に文句をぶつけるが、鏡に話しかけているのかと思うほど自分とよく似た喋り方をする。

そして、絶対に肯定の言葉しか出てこない。

全部都合の良いようになるのがこの能力の特徴だ。


「どうせならあの川辺に行きたいと思うんですが…

いいかな?」


「良いと思います。

行きましょうよ。」


「ですね!

じゃあお願いしますー」


「よし、行きましょう。」


ジャンプをして当たり前のように兵士に抱かれ、川辺へ向かって進む。

川辺へ行くのはあの日以来だ。

中々行けずにいたが、もしかしたら何かいいものでもあるかもしれない。


そして、この兵士以外にもう1人倒れていた存在がずっと頭の片隅にあった。

どうなっているのか確かめないと気が済まない思いがあった。


どうか人間であってくれ。

仲間なんて事だけは…絶対ロデリックさんじゃない…

そう信じて、今やるべきことをやって来た。


もう何もないかもしれないけれど、何も無いなら無いでいい。

ただ仲間の死体がポツンと残っているような事がなければいいんだ。


兵士に抱かれながら静かに考える。

少しだけ手に力が入り、不安になっていく気持ちを抑えながら空を見上げた。


今日も天気が良くて眩しいくらいの晴天。

眩しいじゃ済まない、痛いほどに刺さる光だ。

小柄な僕だとこの兵士の背中でほとんど遮ってくれるから頼もしい。

悪魔はすぐに陽の光で目が眩むから太陽は苦手だし、明るいと隠密もできないしいい事が無いなと思う。


不安を紛らわすように違うことを考えていたら川辺の近くまで来ていた。

ここを抜ければ、兵士を見つけたあの場所…


キラキラと光が反射して光川、何も無い川辺、変わったところは何も無いように思えた。

もう1人の影を見た時、僕は人間が迫ってきていて逃げようとしていた時だ。


まずは兵士が倒れていた場所を探さなきゃ。

特徴のないここで、正しい場所を探すことはとても難しい。


石が崩れて足を取られながらも、記憶を頼りに同じような視界になる場所がないか歩いていく。

何度も立ち止まっては辺りを見回し、記憶を呼び覚ます。


そして、川がが曲がる頂点の場所に立った時、ハッキリとあの時の光景が頭に浮かんだ。


「ここだ…」


「…ここに僕が?」


「はい、ここで見つけました。

そして、僕の…僕だけの兵士になってもらいました。」


「いいですね。

僕はいつまでもハロルドだけの兵士です。」


兵士が倒れていた場所を見つけることができた。

次はもう1人の誰かが倒れたいた場所は…


確かに人間の声がして、森の方向へ入った。

そして、どこかの茂みから足だけが飛び出ていて…


ガサガサと背の高い雑草を掻き分ける。

気づけば、記憶なんて関係なしに辺りの茂みに入っては人影を探す。


「ハア…ハア…どこにもいない…」


「いないですね。」


「血痕も、何か物一つもない…

人間で仲間が連れて行ったかもですね。」


「ですね。

もしくは、悪魔が自力で逃げたか。」


「とにかく、争った形跡や遺体が放置されたりしていなくてよかったです。

ずっと気になっていたから…」


「不安が1つ消えてなによりです。」


真相は分からないけれど、仲間の遺体が転がっているなんて事になっていなくて本当に良かった。

…そろそろちゃんと資材探しに行かないと怒られそうだ。


「気乗りはしませんが、言われた事やっちゃいましょうか…」


「そうですね。

何かしら持って帰らないと何を言われるか…」


怖い怖い。

仕方なしに森の中へ入って教会へ向かって行く。

…ただし遠回りで。


「涼しくていいですね。

木陰が気持ちいい。」


「気持ちいいのはいいですが、ちゃんと教会に行かないと後から何を言われるか分かりませんよ?」


「ん〜

分かってますよ〜

でも、もう少しだけのんびり散歩しましょうよ。」


全く同じ口調で雑談をしながら森の中をゆっくりと歩く。

今日はサボりたい気分だなと人ごとのように考えていた時、何か気配を感じた。


「…ねえ。」


「はい、分かってます。」


茂みの中に身を隠し、辺りの様子を伺う。

しかし、風が森の葉を揺らす音だけが聞こえ、しばらく経っても何も起こらない。


しばらく経つと、どこかで土や葉を踏みしめる足音が聞こえていた。

1人じゃない、複数の足跡…


仲間ならいいか、人間ならば危険だ。

ただでさえ未熟な僕とやっと使役できた1人の兵士じゃ勝算がなさすぎる。


どうするべきか考えていた時、少し強めの風が吹いて森の葉が大きく揺れる。

ザワザワとざわめき、光に反射したピアスがキラリと光った。


「くそっ」


小さく呟く声が聞こえたと思った瞬間、茂みから1人の男が飛び出してきた。

怖い…っ

思わず近くの茂みに飛び込み、目をギュッとつむる。


仲間じゃないならもうダメだ…死ぬ…

そう思っていると、聴いたことのないような衝突音が聞こえてパッと目を開く。


葉の隙間から覗いて見ると、音の正体は兵士が男の元へ飛び出して体当たりをした音だった。

驚きで開いた方が塞がらない。


「ヴァロン!!

おい!あんたアルマだろう!!何をしてるんだ!!」


「…」


「おい!聞こえているのか!」


木と草に隠れて姿は見えないが、誰かが男を心配して叫んでいる。

やはり1人じゃなかった。

逃げなくては危険だ。


しかし、兵士がこちらに戻ってこない。

どうしようと考えている内に、次はゴツンと大きな音がした。


このままじゃ兵士も僕もやられる…!

力を振り絞って身体を起こし、拳を握る。

飛び出そう、そう覚悟を決めて立ちあがろうとした瞬間、背後から威勢のいい声がして後ろを振り返った。

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