28.踏みしめる夜明けの地
「ここは…」
「ここは最後にキャンプ地にした場所だな。」
「覚えてる覚えてる。
ボロボロな状態で過ごした最後の場所だよね。」
アルマ捜索のために3人で街を出発した。
しばらく歩いていると、見覚えのある場所へ辿り着いた。
数日間3人で必死に歩みを進め、最後の夜を過ごした場所だった。
ここから街の門が見えるまでも相当な時間を歩いたと思ったが、今の状態だとあっという間に感じる。
もう少し、もう少しとお互いに励まし合い着実に進んできた最後の証。
燃え尽きた焚き火の焦げ跡だけが残り、寝床を確保するために刈った筈の草は、周りより少々背が低いものの着実に成長して青々としていた。
せっかくだからとここで一旦休憩を挟み、任務について確認をする。
サリに何度も釘を刺されているため、忘れないようにするためだ。
今の自分たちならあの教会まで2日程度で行く事ができる。
各々やるべき事を改めて頭に叩き込み、一歩一歩しっかりとした足取りで進んで行った。
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街を出て2日ほど経つと、ついに崩壊した教会は辿り着く事ができた。
しかし、そこはただの瓦礫の山になっており人がいた気配などまるで感じられなかった。
あまりの光景に思わず呆然と立ち尽くしてしまう。
自分は爆破と共に吹き飛ばされていて、どんな状態になっていたのかをこの目で見るのは初めてだった。
崩壊したとは聞いていたが、本当に教会の姿なんて何もない。
そして、瓦礫の中で舞う埃っぽいような匂いと、日が経っているのに何故か血のような気持ちの悪い匂いが残っていた。
「これほどまですごい爆破だったんだな…」
「だな。
俺もちゃんと見たのは初めてだ。」
「確かに僕もそうだよ。
よくニール無事だったよね。」
「それは…俺も自分でそう思った。」
「はははっ
不死身の男だな。」
「見た目だけで言えば死ななそうなのはヴァロンだけど。」
「ふっ」
「笑うなニール。
本当にお前は余計な事ばかり言いやがって。」
「だって、口が言う事聞いてくれないんだよ。」
瓦礫しかない異様な空間でも通常運転である事がとても心強い。
しかし、しっかりと任務へ頭を切り替えなくてはサラからのお叱りが待っているだろう。
瓦礫を避けたり辺りの捜索を行なっていくと、仲間のものが悪魔の物かも分からない焦げた防具、元は洋服だったのか教会の装飾なのかも分からないボロボロの布切ればかりが出てくる。
すでに何度か捜索は行っていると聞いていたため、簡単に目につくものはもう他の兵士も見ているものだろう。
流石に崩壊した大きな壁を動かす事はできず、手が届く範囲で目新しいものはないか探す。
「どうだ?
何かあるか?」
「いや、収穫なしだ。」
「こっちも特にって感じかな。」
「そうか…
後はもう俺たちだけじゃ動かせない大きな瓦礫ばかりなんだよな…」
「ああ。
これ以上は難しいだろう。
どうしようか。」
「ねえ、爆破されてるんだしもっと広範囲で探してみようよ。
ニールだった吹き飛ばされてるんだから、もっと遠くの方見てみようよ。」
ジェムの一声で移動を始める。
歩きながら草をかき分け、落とし物を探して行く。
言った通り、いろいろな物が吹き飛ばされて散らばっていた。
教会のものであろう壊れた椅子、テーブル、装飾品など、形が分かるものだけでもかなりの数がある。
しかし、アルマの手がかりとなりそうな物は見つからない。
どんどん前に進んでいくと、水の流れる音が聞こえ始めた。
視界の先では森が途切れ、光が差し込んでいる。
その光へ向かって進んでいくと、川辺に辿り着いた。
川の水が太陽の光に反射して、キラキラと輝いている。
思わず景色を眺めていると、ボロボロの布切れが石に挟まってパタパタと風に靡いている所が見えた。
赤黒く汚れ、血である事が分かると同時に、この場所に見覚えを感じた。
辺りを大きく見渡して思い出した。
ここは自分が吹き飛ばされて倒れていた場所だ。
この布切れは自分が破いて包帯代わりにした服の切れ端だ。
「ニール、どうした?」
「ニール!ニール!聞いてる?」
2人の呼ぶ声でハッとする。
顔をパンッと叩き、気合を入れ直す。
「…ここまで吹き飛ばされたんだよ俺。
あそこで目が覚めたんだ。」
「こ、ここか!?」
「教会から結構離れてない?
こんな所まで飛ばされたの!?」
驚く2人だが、自分でもかなり驚いている。
まさか自分がここまで吹き飛ばされていたとは思わなかった。
そして、改めて無事でいられた事に感謝をする。
だが感傷に浸っている時間はない。
この川辺も隈なく捜索を行う。
「ここまで来たけど何もないか…」
「残念だが、収穫なしだな。」
「だね…
アルマはどこ行ったんだよ!」
川辺からだいぶ離れた場所まで来たが、特に何も見当たらなかった。
先に来ていた部隊もそうだし、悪魔も隙を見て来ているのでは無いだろうか。
あれから日も経っていて、新しい物を見つけられる確率は低いだろう。
少し無理をしてでも大きな瓦礫を避けられないだろうか…
何の情報も持ち帰る事ができないのは悔しく、何とか1つでもと色々と考える。
風に吹かれながら考え込み、ゆっくりと時間が過ぎて行く。
風が森の草木を揺らす。
その後に紛れてどこか遠くから声がしていた事に気づかなかった。




