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25.綴り直す無謀の輪郭

あの作戦を決行した日、仲間の1人であるアルマが行方不明になった。





私が軍隊長として指揮を取り、作戦通り1度目の笛の音でその場を離れるよう合図、そして2回目は作戦終了の合図。

何度も何度も確認をして、万全の体制を整えた筈だった。


しかし、いざ敵地に向かうとアルマの顔つきがどんどん変わって行くのが分かった。

あやつの悪魔に対する憎しみは相当で、とにかく先陣を切り捨て身とも言える戦法が危なっかしく何度も叱責しており、今回の作戦には嫌な予感がして配置変更を願い出ようとしていた。


確かにアルマは武闘派で切込隊長としては適任であるが、それが仲間のためではなく自分の憎しみをひたすらにぶつけるだけの物のように思えた。

危険度が桁違いのこの任務でアルマを最前線に投入してしまえばどうなるか分からないと、参加は免れないとしても、少しでも後方に下げられないかと思っていた矢先に決行日が決まってしまった。

こうなればもう配置変更はできず、決行のための準備が一気に進められてしまう。


作戦が決行されると、案の定放火した教会に飛び込んで行き笑いながら逃げ惑う悪魔を切り捨てるアルマの姿が見えた。

それぞれの持ち場で応戦してる中で止められる者はおらず、退避を合図する笛の音が響いてしまう。


「逃げろ!」


そう力の限り叫んだが、逃げ惑う泣き声や悲鳴に混じってアルマの笑い声が絶えなかった。

姿を見せる気配はなく、意を決して私も教会の中へ入ろうと足を踏み出した瞬間に爆音と共に視界が失われた。


突風が身体を浮かせ、地面に叩きつける。

やっと辺りが静かになった時、周囲にはフラフラと立ち上がる悪魔や仲間達がいた。


今目の前にいる悪魔達を逃す訳には行かないと、必死で立ち上がり剣を振るった。

その時だけはアルマの事が頭から忘れ去られていた。






--------------------






アルマは日々の鍛錬を怠らず、実力もある非常に優秀な人材だった。

入隊時、なぜ兵士になったのか聞いた事がある。


「自分は両親を悪魔に殺されました。

両親の仇を取るため、恨みを晴らすために兵士になりました。

仲間達と手を取り合い、悪魔を倒して見せます。」


そう話す目は潤んでおり、今にも涙がこぼれ落ちそうだった事を覚えている。

しかし、涙を見たのはその時が最後だった。


私の部隊に配属され、どんな訓練にも食らいつき決して弱音も吐かない強い心を持っていた。

それでいて普段は明るく仲間と談笑をするような好青年の印象だったが、任務となると人が変わったように誰よりも先に突っ込んでいく。


一度、返り討ちにされ大きめの負傷をした事もあったが、無理矢理にでも立ち上がり仲間を押し退けてまで切り掛かろうとしていた。

隊を乱す行動を咎め強く叱責したが、一切目を逸らさずに真っ直ぐと私の目を見ていた。

反省なのか、反抗なのか、感情の読み取れない不思議な眼差しだった事が強く記憶に残っている。


だが、どんなに強く伝えても戦い方が改善する事はなかった。

今は自分自身の実力で押し勝つ事ができているが、あまりにも自分の命を顧みない戦法は士気を乱す。


「アルマ。

君は自分が普段からどのような戦い方をしているか自覚はあるのか。」


「あります。

誰かが先陣を切らなくてはならない。

だから俺が先頭に立って切り口を開いています。」


「確かに、誰かが先陣を切ることは大切だ。

しかし、お前は自分の命を顧みる事なく自分の目に入った全ての悪魔へがむしゃらに切り掛かっている。

仲間へ託す事もせず、むしろ自分以外が悪魔を切ることを不快に思っているのではないか?」


「っ…そんな事ありません。

俺は強い。

だから1番近くにいた自分がそこにいる悪魔を殺せば早いも思っただけです。」


「そうか。

仲間のことは信頼していると捉えて良いんだな?」


「仲間が傷つくのなら1番強い自分が殺した方が早いので。」


「答えになっていないな。

お前は仲間たちを弱いと?」


「俺より弱いことは確かです。

じゃあ俺が皆んなを守ればいいかなと。」


「そうか。

もう下がっていい。

次回以降からの任務については少し配置を考えなければならないな。」


「俺より弱いのはサリ軍隊長もですよ。

あなたは優しすぎる。」


この短時間でアルマの口から出てきた言葉に心底驚いた。

会話をしなくてはいけないのに、このまま続ける事が嫌だと感じてしまうくらい。


仲間たちと仲良く談笑しているように見えて、腹の内では弱いと思っていたのかと。

仲間に背を預けようとも思っていなかったのだろうか。


下がれと指示した時、拳を握り締めて悔しそうに去って行ったが、何を思いながら部屋を後にしたのだろう。

部下をまとめるのが自分の仕事であると言うのに、何もできていない事が身に染みて分かる。



あなたは優しすぎる。

この言葉は自分の上官や同僚からも言われた事がある。

しかし、アルマは私の何をみて何に対して言っているのだろうか。


両親を思い涙を溢れさせ、仲間と手を取り合うと言っていたアルマはどこへ行った。

最初からそんな思いなど微塵もなく、ただの建前だったのか。


結局、最後までアルマの本心を知る事ができないまま1人行方不明となってしまった。

力づくでも配置変更を願い出ていれば…

そんな後悔が今でも心を苦しめる。


いつまでもこんな戦い方が出来るわけがないと分かっていたのに。

つい、軍隊長など自分には務まらないと思ってしまう。


一度、階級なんぞ忘れてアルマと酒を飲んでみたい。

あまり好かれていない事は察しているが、こんな私とでも腹を割って話しをしてくれるだろうか…

どうか生き延びていて欲しいと願わずにはいられない。

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