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19.眩しい正義の場所

街の門に訪れると、帰還時に出迎えてくれた兵士が手を振っていた。

近づいて行くと3人の服装を見て心配そうな顔をする。


「ヴァロン!おまえたちも!

もう任務に出るのか?

まだ休んだ方がいいんじゃ…」


「いやいや、任務じゃなくてリハビリがてら狩りに出ようと思ってな」


「狩り?

なんだ、ってきりもう復帰させられたのかと思ったよ。」


「はははっ

サリ軍隊長もそこまで鬼じゃないだろ。

ちょいと肩慣らしだ。」


「でも、無理はしてくれるなよ?

もうボロボロな姿を出迎えるのはゴメンだからな。

心臓に悪すぎる。」


「当たり前だ。

土産のひとつでも持って帰ってきてやろう。」


「おう、期待してる。」


楽しそうに話す姿から、仲の良さが伺える。

適当な所で切り上げると、門の外に出て辺りを眺める。


「よし、ニール。

どっちに行こうか?」


「僕は左希望。」


「だそうだ、ヴァロン。」


「俺に聞かれてもな…

まあ、左でいいんじゃないか?」


「よし、それじゃあ出発!」


「早いよジェム。

ほらヴァロン、行くよ。」


「ああ、大物を仕留めて帰らなくては。」


「鹿とか猪がいたらいいね。」


「…俺は鹿はちょっと。」


「1人の時に反撃食らったやつか。」


「頭から血出てたよね。」


「やめろ、記憶を抉るな…

こめかみが痛むような気がする…」


雑談をしながら進む足取りはとても軽い。

爽やかな風に吹かれ、青々と茂る森の中へ入って行く。


日差しが遮られ、気持ち涼しさを感じる事ができて心地いい。

良さようなポジションを下がって拠点となる場所を決めると、すぐにトラバサミの設置をするために動き出す。


しかし、3人は思わぬ獲物と遭遇してしまう事になる。

拠点を決めて動き出した時、その獲物が姿を現した。


大きく荒い鼻息を鳴らし、太く鋭い爪を携えてこちらを睨みつけている。

真っ黒な毛に覆われた巨体…

まさかの熊と遭遇をしてしまった。


鹿、猪などと考えていた己の甘さを反省するが、そんな後悔はもう遅い。

目の前では熊がこちらに狙いを定めている。


体制を整えると、お互いに探り合う静かな時間が訪れる。

風が葉を揺らし、髪を靡かせ、流れる汗を冷やす。


ニールの頭から滴る汗が顎に伝い、ぽたりと一滴落とす。

その瞬間、クマがニールとヴァロン目掛けて力強く地面を蹴って飛びかかる。

土が抉れて深い爪痕を刻み、低い咆哮が一気に迫った。


湿り気を帯びた手を固く握り剣を振りかぶった瞬間、熊が巨体で遮っていた陽の光が目を刺して、視界を一面真っ白に覆う。

思わず目を固く瞑りバランスを崩した体を、一歩後ろに下がって立て直す。


「ニール!!!」


ヴァロンが呼ぶ声に目を開くが、視界はハッキリとせずぼやけている。

足の裏から伝わる振動が熊の接近を感じさせ、視界が白から黒に変わった。

やっと焦点が合ったと思った時、強い衝撃と共に乗り掛かり、背中から倒れて地面に叩きつけられる。


そして、倒れる瞬間に真っ黒な熊の腕が降りかかり腕を掠めた。

押し潰され、身動きの取れない重さにもう駄目だとの思いが一瞬よぎるが、何も起こらない。


「ニール!!ヴァロン!!仕留めろ!!」


ジェムが叫ぶ声にハッとすると、目の前にはヴァロンの顔があった。

熊の攻撃を受ける寸前にヴァロンが飛び込んでくれていたのだ。


2人が立ち上がると、熊の身体には複数の矢が突き刺さっており、動きが鈍っている。

仕留めろと叫んでいた意味を理解し、剣を強く握りしめて切り掛かった。






----------------






「2人ともありがとう、助かった。」


「これくらい何でもない。」


「皆んな無事で良かったよ。」


2人に向き合って礼を述べるが、気持ちは悔しさでいっぱいだった。

久々に剣を握る事ができたは良いものの、出番は仲間に弱らせてもらった後のトドメのみ。


ただの肉となった熊を前にするが、食欲も湧かず気持ちも晴れない。

日が暮れる前に帰らなくてはならないと、剣を装着するために持ち上げる。


しかし、少し持ち上げた後に手の力が抜け、ガシャンと音を立てて落ちてしまった。

その手は小刻みに震えており、お前は弱いと言われているような気がした。


こんな筈じゃなかったと、歯を食いしばり手を強く握る。

空がオレンジ色になる頃、街の門へ向かって歩く背中はとても小さく、悲しみに滲んでいた。







家に着くと、不貞腐れるように布団を被ってうずくまっていた。

今は優しく語りかける2人の声すら素直に受け取る事ができず、それを察してか家の中は静寂に包まれる。


いつの間にか眠っており、気づけば朝を迎えていた。

椅子に腰掛けてぼーっと外を眺めていると、コンコンとドアを叩く音が鳴り響いた。


「朝早くにすまない、相談があるんだ。」


その訪問者はサリだった。

何やら相談があるとの事で、わざわざ来たらしい。

軍隊長ともあらば、部下を使って書面で伝えたり本部へ呼び出せるだろうに…と、手間をかけさせて申し訳ない気持ちになる。


「お前達が良ければだが、捜索任務を任されてはくれないだろうか?」


「捜索…ですか?」


「ああ、そうだ。

アルマの捜索に協力してもらえたらと。

あれからも何度か部隊を出しているのだが、未だに見つからず、人手も足りていなくてな。

ニールが吹き飛ばされて川辺で目覚めたのならば、アルマは川の中に入ってしまって流されている可能性もあるだろう。」


「そっか…まだ見つかってないんですね…」


「残念ながら、未だに見つかっていない。

教会付近やニールが目覚めたと言う辺りも探したのだが、身につけていた物すら何一つ…」


「行きます。

アルマを探しに行かせてください。」


「ああ、お前達に任せよう。

だが、その前に…」


次の言葉を渋り、ニールの身体を頭から足先まで見回す。

何を言われるのだろうと、緊張で背筋が伸び無意識に姿勢を正していた。


「…剣の使い心地はどうだったかな?」


「えっ…」


「無理はしないと約束をしたと思ったんだがな。

詳細については追って連絡をしよう。

まずはその腕、早く治しなさい。」


そう言い残し、扉を開けて出ていってしまった。

呆れられてしまったのだろうか。

昨日の失態を思い出し、また気持ちが沈んでしまう。


こんな怪我を負わなければ、すぐにでも出発ができたのでは…

焦る気持ちが募って行く。


大人しく待とう。

1人で焦って行動を起こせば、また何か失敗をしてしまいそうで怖い。


その後サリからの連絡があったのは、あれから1週間が経った頃だった。

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