01.迷いの欠片
深夜、2人の男性がとある家へ侵入して女性を囲っていた。
すでに喉が切り付けられ、大量の血を流しながらピクピクと痙攣をしている。
「それ、何ですか?」
「ああ、持っていたのが目に入ったからつい」
少年の悪魔が、青年の悪魔に話しかける。
青年が持っていたのは【英雄物語】とタイトルが書かれた本だった。
興味本位で目を通していたところを見られてしまったようだ。
気を取り直し、倒れている女性にまたがる形で仁王立ちをする。
見下げると、もう目に力はなく瀕死であることが分かった。
視線もどこを見ているのかすら分からない。
本を読むために床に刺した短剣を拾い、心臓へ狙いを定めて一気に突き刺す。
少し経つとヒューヒューとしていた呼吸も止まり、うまく仕留めたことを確認する。
先ほどの本が気になり、チラリと横目で表紙を見る。
どうせ人間の考えたしょうもない話なんだろうとは思うが、少々中身が気になっていた。
人間の英雄様とはどのような人なのだろうか。
そんな青年に気づく事なく、少年は生き絶えた女性に近づき先程の短剣を手に取る。
「さすがロデリックさん・・・ど真ん中だ・・・」
女性の胸を切り開いて、見事に心臓を突き刺していたことを褒める。
フフンと得意げに笑うと、すぐに2人は女性の内臓を食し始める。
今日はここがおいしい、ここが微妙だと評価をしながら舌鼓を打つ。
会話だけを聞けば、人間が食事を楽しみながら団欒をする楽しい食卓だろう。
しかし、実際には無残に胸を切り開かれた女性の体内から内臓を引きずり出し、ネチャネチャ、ペチャペチャと気持ちの悪い湿った音を響かせながら食事をしている凄まじい光景だ。
「人間ってこんなに美味しいのに、なんで汚らしく感じちゃうんでしょうね」
「人間だろうが何だろうが見た目に変わりはないだろう?
いつもながら、人間嫌いがすごいな。」
「うーん・・・
よくわからないですけど、人間ってだけで無理みたいです。
中身は大好物ですけど。」
「変わってるな。
俺は食べることにしか興味が無いから何も思わないよ。
今日もうまい食事ができて気分がいい。」
そう会話をしながら、青年が血で汚れた手をサッと洗い流す横で、大量の水を流しながらゴシゴシと手をこする少年。
そういえばと何かを思い出し、ちらっと右上に視線を向ける。
「どうだ?満足したか?」
「ん?・・・あ、そうですね。
今日はお腹も満たされましたし、もういいです。
じゃあ、外で見張りしてきますね!」
そう言い、部屋を出て暗闇に消える。
綺麗に拭き上げ、テーブルに置いていた短剣をしまった時、また先ほどの本が目に入る。
つい手を伸ばしてしまい、ページをめくる。
なるほど、人間と悪魔の戦争の話か。
いつからか、人間は俺たちのことを悪魔と呼ぶようになったらしい。
存在に恐怖を抱き悪の象徴とするのなら、喜んで『悪魔様』になってやろうじゃないかと、自分たちも悪魔と呼ぶようになっただけだ。
事実を元にした物語のようだが、人間も生き物を殺して食べているのは同じだ。
悪魔だけが悪いように描かれて、自分たちは立ち向かう正義のヒーロー気取り。
どっちが悪魔なんだか。
イライラが募りながらもページを捲る手が止まらない。
悪魔の能力に歯向かう?
100人の悪魔を1人で打ち倒す?
そんなことができる訳がないと鼻で笑う。
どこまでも滑稽で呆れてしまう。
そんな素晴らしい功績を残した英雄の名は・・・
更に読み進めようとした時、「ロデリックさん?」と呼ぶ声が聞こえた。
人間が作った面白話の続きが少し気になるも、急いで2階に上がって用を済ませて家を後にした。




