第4章 『旅立ち ― 信頼のはじまり ―』
王城の門前。
朝靄の中、五人が並んで立っていた。
勇者マダマ。
僧侶イノリ。
スライムハンターEXキルス。
元騎士団長オレガ。
そして黒衣の魔法使いオモイ。
これが、王国が誇る――いや、王国が半ば勢いで送り出した勇者パーティである。
> ナレーション:
> 「世界を救う五人が今、歩み出そうとしていた。
> だが、全員の心が一つになるまでには、あとだいたい三章くらいかかる。」
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「さてと……」
マダマが地図を広げる。
「まずは北の関所を抜けて、ルガンの丘を越える。魔物が出るらしい。」
オレガが唸る。
「ふん、勇者が地図読めるとはな。偉いじゃねぇか。」
「いや普通に読めますから!」
キルスが笑いをこらえながら言う。
「おっさん、子供扱いしすぎ。」
イノリは後ろで欠伸をしていた。
「私は同行するだけよ。戦うかどうかは気分次第。」
「気分で世界救うな!」とイノリがツッコむ。
> ナレーション:
> 「こうして彼らの初めての旅は、“全員ボケ”状態で始まった。
> このチームにはまだ“ツッコミの勇者”が必要である。」
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昼過ぎ。
一行は森を抜け、開けた丘へと出た。
空は青く、草の香りが風に乗る。
だが――その平和な光景の中で、異変は起きた。
「……止まれ。」
オレガの低い声が響く。
地面の下、微かな振動。
キルスがすぐに気づく。
「……来る!」
土を割って、巨大な影が現れた。
全身に岩をまとったイノシシのような魔獣。
鼻息ひとつで草が舞い上がる。
「なんだこのデカさ!」
「スライムよりちょっと強そうだな!」
「いや比べる基準おかしいだろ!!」
イノリが詠唱を始める。
「《フレイムランス》!」
火の槍が放たれ、獣の肩を焼く。
しかし傷は浅い。
「勇者! 前へ出ろ!」
オレガが吠え、盾を構えて突撃。
マダマが続く。
「よし、合わせるぞ!」
後方でイノリが支援の祈りを捧げ、キルスは剣を構えた。
心臓がうるさいほど鳴る。
(スライムすらまだ狩ったことねぇのに……!)
獣が突進。
オレガが受け止める。盾が軋む音が響く。
「ぐっ……来るぞ、今だ勇者ぁ!」
マダマが叫び、跳び上がる。
剣に光を宿し――一閃。
眩い閃光が獣の首を裂き、巨体が地に崩れ落ちた。
静寂。
風が通り抜ける。
「……勝った……?」
イノリが呟く。
マダマが笑った。
「大丈夫だ! みんなで勝利だ!」
> ナレーション:
> 「記念すべき初勝利である。
> だが、このあと勇者は筋肉痛で動けなくなる。
> ……努力は裏切らないが、筋肉はすぐ裏切る。」
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その夜、焚き火を囲んでいた。
オレガがぶっきらぼうに言う。
「悪くなかったな、勇者。」
イノリが微笑む。
「ふふ、カンで選んだにしては、なかなかいいじゃない。」
イノリが笑う。
「最初にしては上出来よ。」
キルスが木の枝で火をつつきながら呟く。
「……おれ、何もしてねぇけどな。」
マダマは即答した。
「そんなことない。お前がいたから、俺は怖くなかった。」
キルスは少し驚き、そして微笑んだ。
> ナレーション:
> 「こうして、“勇者マダマ達”は最初の戦いを越えた。
> この時、誰も知らなかった。
> この小さな勝利が、後に世界を左右する“最初で最後の完全勝利”になることを――。」




