第14章 『終焉と逆転』
黒が世界を覆っていた。
神殿の天井は溶け、地の果てまで続く闇が波打っている。
風は止み、光は閉ざされ、音までもが“存在を忘れた”。
勇者マダマは剣を杖に、膝をついていた。
イノリも、オモイも、オレガも動けない。
彼らの影の先で――ただ一人、立つ者がいた。
キルス・ライム。
⸻
魔王が低く呻いた。
『……なぜだ……なぜ貴様だけが倒れておらぬ……!』
その声には、怒りよりも“恐怖”があった。
キルスはゆっくりと顔を上げる。
衣は焼け、髪は乱れている。
だが肌に傷一つない。
黒い奔流が走る。
数千の槍、数百の刃、黒炎と雷。
天地を呑み込む闇の暴風が、キルスを中心に爆ぜた。
だが――すべてが彼の前で止まった。
届く前に、空気に溶けて消えた。
⸻
『……貴様……何者だ……』
魔王の声が震えていた。
キルスは静かに答えた。
「――それはな。」
折れた剣を持ち上げ、ゆっくりと歩み出す。
足元の瓦礫が粉塵を舞わせる。
「お前が、“俺の天敵”だからだ。」
『……何?』
魔王の瞳が細くなる。
キルスは片口で笑った。
「嘘をついてたんだ。
“聖剣士”なんて立派なもんじゃない。
本当の俺は――」
風が止まる。
彼の足元に、淡い光が集まっていく。
「――《スライムハンターEX》だ。」




