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偽乙女遊戯転生処罰記  作者: 織宮綾
蜜月は吸血鬼と踊る

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4

「一番の対策はリンが審査対象より偉くなることなんだけど、まあこれに関してはちょっと手があるから置いとく」


 指先で審査対象の項目を叩きながら罰様が言う。手があるというのは先ほど言っていた「今回王家はマトモ」と言うことに通じるのだろう。

 王家というものはマトモか腐っているかのどっちかだ。何度か対応の際に王族へ接触したころがあるが、大体は腐っている。それがマトモとなればこちらの勝率は一気に上がる。


「今回はまず立ち振る舞いとかかな? 血筋だけなら十分対抗できるし」

「血筋……光女神様の巫女の血のことですか?」

「それもあるけど……」

「……罰様、それ以上は」

「おっと、まだ言うことじゃなかった。ごめーん」


 罰様がてへ、と笑顔でごまかす。私は眉をしかめたが、リンも少しだけ眉をしかめている。こういう反応のときは絶対に何かを隠している。エディスも止めたということはかなり都合が悪いことがあるのだろう。

 そう思いながらじっと見ていると罰様がリンに気づかれないように資料の端を指さす。それを見てこっそりと同じ場所を見て……思わず息を止めてしまう。確かにこれは今のリンには言えないことだ。そっと目を伏せ、リンに声をかけた。


「リン、私も立ち振る舞いは学びたいと思っていたところです。一緒に学びましょう。」

「……うん! 一緒に頑張ろうね!」


 ああ、なんとできた精神性だろう。すぐに問いただしたいだろうにすべてを飲み込んでこちらに微笑みかける。まさに主人公と言うべき資質。暗い世界における、唯一の光となれるよう育ったもの。聖女という役割があるのであれば、この世に当てはまるのは彼女しかいない。


「うんうん、まさに聖女。■■■と同じ資質で構成されてるだけある」

「……? 今なんて……?」

「おっと、まだそこまでじゃないか。まあ忘れときな、今のリンにはまだ早い」


 罰様がリンの額をこづくと、ぐにゃりと魔力で辺りが歪む。リンは一瞬ぼんやりしたあと、きょとんと不思議そうな目をした。


「……罰様」

「問題ないよ。さ、もう少し詰めてから君たちの家に大事なものを取りに行こうね〜」


 嗜めるように言えばするりと手から流れるように躱される。エディスが少しだけ痛ましげに目を伏せ、リンだけが何もわからないようで首を傾げている。

 ……罰様は、リンだけには何も知らせないつもりらしいことだけ、やっと分かった。


 ◆


 ある程度の打ち合わせが終わり、リンたちの家で持っていくものといらないものの選別をするために二人を中に入れた。私と罰様はなんとなく家の外で他の邪魔が入らないように辺りを歩いていた。


「……本当に、リンには何も知らせないのですか」

「なんだ、わかってたの? 半分そうで、半分そうじゃないかな」


 罰様が踊るようにステップを踏みながら前に出る。軽やかすぎる動きに疑惑が確信へと変わる。罰様は、今この場に神として顕現している訳ではない。


「……魔女として降りてきたのも、そのせいですか?」

「ぴんぽーん。光女神(ははうえ)がそっちの方が汎用性あるし動きやすいって言うもんだからさ」


 光女神様。この世界の最高神の一柱(ひとり)であり、罰様と赦様の御母君にして上司。今いるこの国ではやや肩身が狭いが、本来であれば闇男神様と共に奉られるべき存在。


「本当は母上がこの世界ごと潰すつもりだったらしいけど、リンとエディスから回収できるエネルギーがかなり大きくなってきたから適度にやんなさいって言われてね。ネムの教育にも役に立つから利用することにしたの」


 くるくると、楽しげに魔女(罰様)が笑う。ヒトとしての生が短くても嫌と言うほどわかる。――これは、上位存在の戯れに過ぎないのだ。作り物の肌が震え、底冷えがする。それを見て、朝焼けのような瞳は夕暮れの色に変わり、にんまりと歪む。


「さあ、少しだけ勝手は違うけど乙女ゲームを始めよう!何、すこぉし保護する相手が変わって、立場もちょおっと変わるだけだ!」


他所の神(いのちしらず)がそれを望むなら、こちら側(わたしたち)は盛大にもてなしてあげないとね?」


 ああ、そうだ。どうして忘れていたのだろう。

 罰様にも、いくつかの側面がある。【裁きの天秤】としての姿、魔女としての姿、宇宙(そら)を統べる女帝としての姿。そして、全てを破壊して進む、覇道の媛皇(ひめすめらぎ)の軍神としての姿。それら全てが罰様であり、必要に応じ調整されてその場に降り立つものが決まると、前に聞いた覚えがある。

 ……とんだ、恐ろしい任務だ。赦様、かなり恨みますよ。


 ◼︎


 同時刻、どこかの部屋で二人の男が隠すように話をしていた。


「それで、手筈は?」

「既に魔女殿が御手を差し伸ばしたらしい。こちらは元々受け入れるつもりだったし、何も問題はない。……むしろ、君のところの方が大事じゃないのか?」

「問題ない。あれは彼女のことを死んだと思っているし、その時が来るまで情報を全て遮断する。……何故か彼の方がものすごく機嫌良くてな、あいつらに関しても遮断すると仰せだ」

「それは……遊ばれているのでは……?」

「…………「あれの系譜なら俺の系譜も同然だからな」と……」


 ため息をつく男に、灰色の髪の男が肩を叩く。聞こえてしまうのは、彼にとっては良いことではなかったらしい。


「それにしても、本当に良かったのか?」

「いいんだ。そもそも、この件を伝えたのは自分だ。……身内の皮をかぶった恥知らずはちゃんと身内で処理する」


「……俺の可愛い妹は、もう、10年前に死んだのだから」

季節の変わり目と気温の変化でぐちゃぐちゃになっておりました。ゆっくりと更新していきます。

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