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偽乙女遊戯転生処罰記  作者: 織宮綾
蜜月は吸血鬼と踊る
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 私ネム! 神様から頼まれて、よくない転生者をぶん殴るお仕事をしているの! もちろんちゃんと普通に過ごして世界に適応してる転生者もいるんだけど、、、そうじゃない人もたーっくさんいるの! もう毎日毎日大変っ! でもでも、神様から頼まれちゃったことだし、頑張ってお仕事するよっ☆


 ――などとふざけていても、反応は返ってこない。


『ネム、今回は"主人公"の側についてくれ』

『いつも通り回せる手は全部やっとくからね。頑張っておいで』


 そう言われて送り出されたのが、この世界に来てから7日前のこと。7日もあれば調査は進み、どんな世界かも把握はできた。できた、のだが。


「ここは、終わってる。」


 おふたりの口調を真似して呟けばため息が出そうになる。

 私腹を肥やす貴族たちが暮らし高い壁にやって守られた貴族街、その貴族に搾り取られて治安が最悪の平民街。そういう世界とはいえ、こんなことがあってたまるかと言う気分だ。


 深く息を吸って吐いて、もう一度意識を集中させる。

 ……目標人物はストーリー通り動いている、審査対象は動いていない。やっぱりダメかもしれないと思いながら目標人物の自宅近くまで急ぎながらも通信を繋げる。


「罰様、赦様、審査対象はやはりダメです。目標人物の周辺人物はどうなされますか。」

『気になることがあるから保護でよろしく』

『目標人物の方もなるべく保護で頼む』

「了解しました。」

『早めに行ってあげてね』


 その言葉と共に魔力の出力が上がり、進むスピードが上がる。赦様が言っておられた「気になること」は余程のことなのだろうと判断してトップスピードで向かう。


 体感時間5分で目的の場所付近に降り立つ。警戒していた通りの展開がそこにはあった。


「ほんとにやるんですかー?ババアの、それも死にかけですよー?」

「ババアってお前、あんな綺麗なババアがいてたまるかよ!熟女好きにぶっ殺されるぞ」

「こいつはダメだ殺して埋めよう」

「ギャー!」


 キッショ。下卑た思想に思わず顔を顰めて見てしまう。私情で殺すのは非常に良くないが殺してしまってもいいかな。誰も困らないだろうし。


『救出作戦に変更。殺せ、ゴーゴー』

 私の反応にすぐ気がついたのか罰様から許可が降りる。よし。



 意識するのは、刃だけ。剣の柄をしかと握りしめ、踏み込んで――思いのままに振り抜く。ひとつ首が飛んで、静寂。


 そして、混沌に包まれる。


 そのまま後ろに薙いで首をまた落とす。降りかかる赤は風を操って下劣な者たちに降りかかるようにし、踊るように首を落としていく。最後の男の首を落としてやっと思考が戻ってくる。

 しまった、剣が血まみれだ。こいつらの服の綺麗なところで一旦拭いて洗浄の魔術を唱える。髪も服も剣もぴかぴかになったところでとある家に向き直る。優しくノックすれば、何かにぶつかる音がしてからゆっくり扉が開かれた。


「……あら?お嬢さん、だけ?」

「はい。貴女はエディス・ブラウンですね。」


 ぴくりと反応がある。目には警戒の色が滲んでいるが、よほど体調が悪いのだろう。それ以上は何もしてこない。


「……わたくしに、何のご用ですか」

「いいえ、厳密には用事があるわけではありません。リル・ブラウンと周辺人物を保護せよとのご命令ですので、失礼します。」

「きゃあっ!?」


 扉の横にこっそりと守護魔術の陣を貼り、エディスを抱き上げる。ここをすぐ離れなければ追っ手が寄ってくると判断し、扉を尻尾で閉めて脱兎の如くその場を離れる。


「待って!家には大事なものが――」

「問題ありません。専門家にお任せを。」

「専門家って――」


 その時、ぐるりと影が彼女の家を蔽う。かすかに家を探す声がしたので自分の意思で家に戻る時まで安全だ。エディス目を丸くした後、くしゃりと顔を歪めた。


「光女神様、闇男神様……生家を裏切り、離れた私を、何故……」

 ……あれを一目で何なのか、わかるのかと、感心する。だがその問いには答えず、私は隠れ家まで走った。


 エディスを有無を言わさず隠れ家のベッドに放り込み、すぐさま別の場所に向かう。一歩間違えれば目標人物が死ぬので静かに、されど早く走って向かう。


魔力充填(マナチャージ):100% 実行可能】

「魔術回路起動。風女神よ、願わくば我を疾く静かに運びたまえ――」


 呪文を口にすれば瞬きの間に場所を移動する。この時ばかりは本当に己の体がこれでよかったと思う。前方100メートル先に、目標人物の最初の運命の場所が見えた。


「どこ行ったんだ〜? かくれんぼか? 早く出てこないと、お前の母親を売っちゃおうかな〜」

「家、把握してたよな。ちょっくら言って引き摺り出してくっか!」

「ぎゃははは! サイコーじゃねえの!」

 最低な言葉にまた顔を顰める。剣を握る手に力がこもり、そして、また首を刎ねた。 


長くなってしまったので分けています。

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